伯耆大山:烏ヶ山〜槍尾根〜弥山(2002.03.31)

 本冬最後の伯耆大山、白銀の雪稜とナイフエッジを華麗に!と思ってウキウキして出かけました。
しかし、ああしかしながら、1週間前の雪ははかなく消え、楽しみにしていた槍尾根と天狗峰〜弥山の核心部は、砕石もどきの岩と泥壁がむき出しになり、ガラガラ岩屑を落としながらの登行となりました。

 14:48赤澤宅出発、途中七塚原SAで夕食(注意! ここはナイフとフォークの表示ありますが、メニューは御箸をつかうラーメンだけです。)、新見ICー180号線経由で桝水原へ。先週はあいていなかった大山環状道路のゲートが開いており、ラッキー!とそのまま文殊堂へ直行する。到着19:47。いつもの駐車場は残雪のため使用不可なので道路わきの駐車場に幕営する。夜はよく晴れていて遠くに槍尾根が見える。がっくり、白くない!ここ一週間は気温の高い日が続いたので尾根筋はすっかりとけてしまったようである。

 31日、今日は長丁場になるので早起きして4:42出発。天候、曇天。昨日が快晴だったから今日は下り坂か。「明日は晴れの予報ですからそう大きくは崩れませんよ」と誰かが言ったもののなんとなくいやな予感。

 駒鳥小屋へ行く登山道に入る。トレールのない、低いブッシュやササが全て雪で覆われ木立だけが残るルンゼをつめていくとなんとも新鮮である。いつもは何の注意も払わず通っているせいもあり、文殊越の直下の二股は道なりに左俣に入ってしまった。すぐ間違いに気付きちょっと遠回りをして文殊越に到着。5:20。ここから鳥越峠まではこまかい登下降はあるものの全体的にはなだらかな傾斜のぶな林を裾野を回り込むようにしていく。今は烏ヶ山に続く尾根が明瞭に確認できるのでそれを目指して進む。尾根近くまで来たが、どうも上りすぎたように感じたので少し下降する。そして適当なところから尾根をめざして這い上がる。尾根上に出たのが6:30。.雪壁とブッシュの急登、準備運動にしては少しばかりきつ過ぎた。



文殊越へのステップ 烏ヶ山に続く尾根 遠く東壁〜振子山を望む

 かなり烏ヶ山よりにきてしまったようだ。鳥越峠が下方に見える。最初のところが合っていたかもしれない。いずれにしても雪原の歩行は難しい。目印のテープがなく、視界なければなおさらである。地獄谷側にはべっとり雪がついている。残雪上を歩いたり尾根上の踏跡をあるいたりして1時間も行けば山頂直下に達する。ここまでは地獄谷側はばっさり切れており尾根筋は年々南側に後退しているようだ。直下から30mほどトラバース(フィックスドロープあり)、南側に回りこんでひと登りで山頂。7:45着。

 ほぼ予定通り3時間かかった。360°の展望がえられる。圧巻はやはり大山東壁。先が長いのですぐ下山にかかる。8:00出発、雲行きがあやしい。風が強くなりガスが出てきた。やっぱり悪くなりそう。今日もまたガスの中かもしれない、来た道を戻り鳥越峠を9:00通過、槍尾根取り付きへ向かう。


烏ヶ山遠望 烏ヶ山本峰 烏ヶ山山頂

 槍尾根は雪壁からはじまる。あたりはすっかりガスに包まれ、風も一段と強くなったようである。夏のうるさいブッシュはすっかり雪の下。一定のリズムで登行すれば向こう側が切れた尾根に出る。ここがキリン峠。峠よりだんだん細くなる尾根筋をたどるとこの尾根は裾が広い尾根に吸収される。そこで一服、ついでに登攀具をつける。9:45、気合を入れ出発。

 最初は幅広い尾根も次第に狭くなり、やがて細く頼りないボロボロの尾根になる。夏道は主として南側に付けられている。東壁側は泥壁に砕石を突き刺したような垂壁。ここも尾根筋が南側に後退しているようである。それに対応するかのごとく踏み跡もじわりじわり左側に逃げてつけられている。「危険」だから行きたがる病気持ちが結構いるんだとあらためて感心?する。我々も少しばかりおかしい、のかもしれない。小雨がぱらつきだした。風は相変わらずごうごうと音を立てている。ガレ場をだましだまし登る。ホールドはひいてはだめだ。押し付けるようにして落ち着いて登れば何とかなる。

 やがてキリン峠の方向を示す標柱を10:10通過。このころから小雨が雹に変わる。どうやら寒冷前線通過中らしい。相変わらずガレた細い尾根をいけば前方にぼんやり槍ヶ峰の尖塔が見える。ここは左を巻く。踏み跡が切れ切れに続いている。雪があればザイル出すべきところだろう。やがて小ピークにつく。10:40。ピークから西方と北方に尾根が下っている。視界がないのでマップ、コンパス、高度計で確認するが、天狗ヶ峰そっくり。天狗であれば北方へ下るとユートピアに行くが、記憶にある下りとどうも違う。ふと見るとピークの露岩に「槍ヶ峰」と落書きがあった。やはり天狗じゃなさそう。迷わず北方に延びてる稜線を行く。ガスで見えなかったがこの尾根はすぐ登りになってしばらくでピークに出た。


槍尾根取付の雪壁登行 天狗ヶ峰から弥山へ 剣ヶ峰山頂

 天狗ヶ峰着11:00。やっと稜線に出た。うれしいね、ようやく雪を踏める。アイゼンを装着、視界が20m強しかないので念のためアンザイレンする。北壁側は残雪豊富であるが南壁側は泥壁剥き出しのところが結構ある。主に北壁側を通過、難なく最高峰の剣ヶ峰に到着。頭を出していた方向指示盤を足下に記念撮影をする。ここから弥山までが核心部。

 雪がついておれば、と僅かな期待をもって進んだがやっぱりダメ!昨年の3月、「田村さんの究極のトラバース」を撮った白いナイフエッジは泥と砕石!稜線をあるけるところは風のやむ合間を縫ってそっと行くが岩屑が左右にボロボロ落ちる。幅20cmにも満たない文字通りナイフ状の板壁は南壁側にスタンスがある。できるだけ落石させないように、勿論自分も落ちないように慎重に通過する。ナイフを通過すれば次は幅20cmくらいのリッジ。こちらから行けば登りだが逆はいかにもいや〜な所!ここを抜けた小ピークでビレイ。危険個所はもう1ピッチ続く。ここは岩屑のコブを越えるだけであるが、コブの下りがいやらしい。45mいっぱいでビレーポイントのブッシュ。やっと核心部は越えた。


核心部を行く ガスに包まれた弥山 春はそこまで。

 12:30弥山着。相変わらずガスと風、何も見えない。山頂小屋も確認できない。ここでも頭出している方向指示盤で記念撮影。と、さっと一瞬ガスが取れ小屋が見えた、がそれもつかの間すぐガスに覆われてしまった。今日は少々待ってもガス取れそうにないのであきらめてさっさと下山にかかる。最近通っていない夏道を下ることにする。元谷分岐くらいまではシリセードも可能だったがそれ以下は残雪もグンと減り登山口ではゼロ。

 バードウォッチングロード入り口着13:50、小休止して14:05駐車場に向かって出発。今日は疲れた。僅かでも晴れれば気分も変わるんだが、とかぼやきながら小鳥の道から横手道へ。ぶな林の散策路は気分がいい。新芽も出てすっかり春である。春めく景色に背中押されるようにして駐車場に15:30到着。今日は11時間近い長い行程であった。皆さん!御疲れ様でした。(Y。Kubo記)


ブナ林も春の気配 環状道路より望む烏ヶ山

■参加者:原田、赤澤、久保の3名。
■装備:ピッケル、アイゼン等冬装備一式、ザイル:40m×1+15m×1、スノーバー2本、ヘルメットは持参せず。
■帰北:駐車場発15:47、神郷温泉で汗を流し、182号線出合いのレストラン神郷で夕食、18:52東条ICより高速へのる。途中30分ほど仮眠して門司着が23:05でした。

★天候:天気図参照。30日は快晴であったが、夕方日本海に寒冷前線が発生、31日の午前中日本を通過したことがわかる。弱い気圧の谷程度なら曇天だったかもしれない。しかし、雷雨にならなかったことは幸いであった。金具や尖り物いっぱい持って雷雲の中、ウロウロなんて考えただけでも、あなオソロシヤ!。そういう点ではツイてたんでしょう?。(なんでもいい方に解釈した方がトクです!)


槍尾根をはさんで南壁と東壁を望む



参考:03.30-31の天気概況(朝日新聞より)


登行ルート概念図


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