祖母奥岳渓谷:イボシ谷  2003.08.10

■台風10号による豪雨が直接的な原因であろうが、滝登りを期待して訪れたイボシ谷は、あふれんばかりの水量の為、多くの滝で高巻きを余儀なくされた。少々がっかりしましたが、源流域は、苔むした小滝と明るく開けた原生林の世界で、下流域での性急な気持ちも和らぎようやくゆったりした気分に浸れました。

■水量は、少なすぎても面白みがないが、ただ単にゴウゴウと流れる沢は,それぞれの滝の表情も個性も押し隠し、ひたひたと歩きたいとか、濡れてみたいとかいった遊び心を奪い去ってしまう。『こんな沢、色気感じませんねえ』、と同行者。やはりいい時期を選んで遡行しなきゃ沢にも谷にも悪い!

★参加者:原田、橋本、赤澤、久保、以上4名



 08/09、16:00車1台で北九州出発。下尾平バス停近くの広場に幕営する。イボシ谷の下流はゴーロで単調、ということなので中流から入渓することにした。
5時起床、車は広場に駐車して5時55分出発。車道から、熊が谷に沿ってのびている急傾斜の舗装された道路を行く。しばらくで犬数匹が警護している人家の前を通り抜け上の林道に出る。

【写真右】:沢好きの常連さんたちです

 昔は、この道が唯一尾平に通じており、今の車道はあとからできたそうである。

 林道を左に取る。途中、下の車道に下る林道を左に見て進む。やがて右から荒れた林道が合流する。(この林道を下山に利用した。)左にとって行く。途中、祖母山や障子の眺めのよい場所がある。主稜から派生する尾根を3つほど巻いて行くとイボシ谷の取り付きである橋に到着。時刻は6:35、およそ40分を要した。標高は740mくらいである。

 ここは既に連漠帯の真っ只中で、橋の下流に20mの滝、2本ある。上から見る限りでは巻くしかなさそう。
こりゃ、この前の尾鈴と同じだわ!水量が多い!。

 身支度を調え、7:00入渓。すぐの滝は右から越え、細長い釜のある滝は左から越える。次の12mは右から突破を試みるがだめ、早速、左から高巻く。高巻きながら覗くと上部は行けそうなので早目に懸垂で沢に下りる。降りた所小滝やナメが続く、が水量が多く沢心は無理なのでできるだけ水際を行く。渡渉の際は水量多く流れが速いので要注意だ。足元を確かめできるだけ流れの幅の広いところを渡らねばならない。


 遭遇する小滝やナメを右に左にシャワー交えて越えていけば、谷は左にカーブ、そこに右から支流が25mの滝を落として出合う。勿論左が本流。
支流の出合までは、連漠帯であるためあっという間に着てしまう。滝が続くといつものことで行け行けドンドンの遡行になってしまう。面白いから仕方ありませんが。



早速、入渓。少し水が冷たい! 左を小さく巻く ここも結局左高巻きとする

懸垂で降り立ったところから支流の出合いまでナメ滝が続く
25mの滝をかけて右から支流が出合う。本流は左 釜をもつ7mの斜滝

この出合からは、ナメ滝や斜滝が続く。いずれも水流沿いに快適に遡行できる。水量がもう少し少なければシャワークライミングが楽しめそうだ。
釜を持つ7mの斜滝、泳げばわけないがまだ冷たそう!右を少しあがり上から垂れ下がってたカズラを頼りに流れを渡り中央の岩に取り付く。結局、渡るところで濡れましたから泳いでもいっしょでしたが。


斜滝のあとはナメが続く 8m斜滝。左水際を登る

斜滝のあとはナメが続く。流れが速いので慎重にいく。次の斜滝8mは、水流の左の壁を登る。ここは水量次第ではシャワーでしょう。
さらに続く8m斜滝、資料では簡単に越える、となっているが簡単ではない。右の水際をトライするが、ふんぎりつかず左から巻く。

斜滝8m。右から試みるがダメ! 斜滝が続く。右の水際を越える。30m?

 続く斜滝は釜があり、右から抜ける。資料では30m?とあるが?・・・、どこで区切るか、で長さというか高さは違うだろうから気にすまい。
やがて、轟々と大量の水を滝壷に落としこんでいる25mの大滝出現。滝壷に近づくと飛沫混じりの冷風が顔を濡らす。じっとしていたら寒い、寒い。

 ここは右を高巻いて越える。高巻きながら滝壷を見ていると、登った高さと同じくらい滝壷は逆に次第に沈んでいき、滝が実際の高さより高く感じられるようになるようだ。目の錯覚なんだろう。見上げる滝もいいが、見下ろす滝はそのスケールが拡大されさらに立派に見える。今は、水流の白と木々の緑のコントラストがまぶしい!


25mの幅広の滝、右を巻けば水流の白と緑のコントラストが眩しい。

 大滝を越えると、明るく開けた中に巨大な白布をくねらせて垂らしたような斜滝が眼前に飛び込んできた。でかい!70-80m」はゆうにありそう。イボシ谷のハイライトは、これだな!

 下部から緩傾斜の部分だけ登り、立ち止まって岩全面を覆い激しく流れている水流を見ながらしばし思いにふける。・・・・『流れは1ヶ所に集まり、あるいは広がり、早く、ゆるく水が流れ背に太陽の光を浴びての遡行は、大人の遊びであり真夏の渓流での水との戯れである』(九州の沢と源流)、う〜ん、わかる、ワカル・・・ここは通常時そうなんでしょう。残念ですねえ、今眼前にあるのは滝というより傾斜した岩の水路だもん。

連漠か、まとめて斜滝とするか?真中でなにやら思案中

今回はこの有様だから仕方ない・・・急な流れの中のスタンスを探して左岸に渡り、右の水際を詰める。最後は小さく巻いて滝頭に出る。
2-3の斜滝が続くが、楽に越せる。やがて顕著な二俣に到着。時刻は、08:45。標高、およそ1050m。ここで大休止とする。


ホールド豊かな斜滝は直登で! 上流の二俣。左に支流。写真は本流10m、6mの滝

 このあたりでようやく沢に日が差してきた。シャワーで濡れているのでお日様が恋しい。
下山の時間に余裕あれば、あと2−3時間ほど遅く取り付いたほうが、いいかもしれない。日が射す方が、濡れても気分よく溯れるだろうから。

 腹ごしらえをし9:00出発。右の本流を行く。出だしは右でも左でも小さく巻ける。
二俣より上流は水量が、2/3位に減ったせいもあろうが急に穏やかになった。岩には苔が目立ち始める。上空を覆う原生林の濃い緑と苔むす岩の間を流れる白い水流、気持ちが落ち着きます。少しのんびり気分で自然林の中を行けば、フィナーレにふさわしい30mの直漠。この滝は釜がないので落下した水は岩に打ち砕かれ、粉々になり辺り一面に散乱させられている。近づくと涼風じゃなく、シャワーを浴びてるようで寒い!

二俣越えると少し穏やかに!周辺も緑が濃い。 フィナーレにふさわしい30m直漠

ここは左のブッシュを巻いて越えると、上流は、小滝の連続する源流の様相。
30mは越すヒメシャラ?の巨木が適度な間隔で立ち並び、岩は緑の苔を厚くまとう、そのなかをゆったり白い帯がくねっている。
今までとは全く違う別世界!溯るにつれてうつりかわる沢の様相の変化に驚く。だから沢登りはやめられない


緑が濃い源流の風景 写真担当、赤澤さん
山では最も多忙です

 標高1310m付近、二俣であるが右は水流は僅か、左を行く。しばらくで水流も細り、流倒木がうるさくなってきたので遡行を打ち切る。標高およそ1370m、時刻は10:28。
ここで靴を履き替える。10:40出発。そのまま尾根筋を行く。藪は薄く、そこかしこに踏み跡(ケモノ道?)が続いている。
適当に歩きやすいところを行けば次第に藪は濃くなる。しかしそれも長く続かず30分ほどで縦走路に出た。(11:07)

 右にとって本谷山越えで下山開始。12:03には水場のあるブナ広場(六角小屋跡)に到着。大休止する。
今回は、下尾平まで車をとりに行かねばならない。いつもの尾平越経由じゃ面白くないので、近道になるかどうかわからないが『新ルート』で下山することにする。



ブナ広場〜下尾平


■12:30、ブナ広場から北面の急斜面を北北西方向に下降開始。藪は殆どない。ブッシュを伝いながら少し左よりに降り易い所を行くと右手から小沢がおりてくる。沢音が聞こえ出すと次第にその沢の左岸の尾根筋を行く格好になる。やがて今度は左からもっと小さい小沢が近づき、下降している尾根は両沢を分かつ尾根筋になる。下降して行くと尾根の末端が沢の二俣。最後だけザイル出して二俣に下降すれば、目前に『尾平〜高千穂』の車道が現れる(概念図※1)。

■車道を右にとる。方向を180度チェンジするヘヤピンカーブまで車道を行く。ここから植林帯にはいる。まっすぐ下降すれば左に涸沢。沢筋伝いに行けば砂防堤、すぐ下に林道がある。10分足らずの下降である。(概念図※2)

■林道(左がどこまであるか未確認)を右に取れば、熊が谷右沢?(右俣+左俣)、ついで本谷と渡り、しばらくで今朝イボシ谷取付に向かった林道に出る。このルートで下尾平駐車地点着が13:45であった。広場から1時間20分弱である。意外と早い!ブナ広場からの下降さえ気をつければ楽勝コースだと思います。尾平越経由よりも間違いなく早いでしょう。



★装備:沢装備一式+30m×1、15m×1持参したが、今回は登りで2回、下降で1回使用。通常時で滝登るのであればもっと出すチャンスありそう。

(Reported by Y.Kubo)