アラスカ:デナリ(マッキンリー)遠征 No.1

★アンカレッジ〜タルキートナ〜LP(Landing Point)〜C3(通称Camp 11:3350m):【6.05〜6.14】

活動報告

6.05 余裕を見て6時前に北九州を出発。7時過ぎには福岡空港国際線ターミナル着。8時には4名全員そして見送りにかけつけてくれた会員、友人がそろう。8:30よりてチェックイン。各人荷物バッグ2ヶ(総重量:50kg以下)で超過料金は取られずにすむ。3階のレストランで気分よくビールをいただき歓談・・・・9時半過ぎにはImmigration(出国審査)、10:30、大韓航空:KE−788便は離陸した。

トランジットする仁川国際空港までは、僅か1時間半足らずである。ここで6時間強時間を潰さねばならない。飲んだり食ったり寝たりしているうちに時間は経ち、18:55再び機上(KEー085)の人となる。

アンカレッジと日本(韓国)の時差は、サマータイムの今は17時間である。従って、アンカレッジ時間の6/05、1:55に仁川空港出発したことになる。アンカレッジ到着は9:35、およそ8時間弱のフライトであった。
9.11テロ以来、入国審査は厳しく時間がかかる。人によっては指紋をとられている。我々は、わりと簡単にImmigration通過、税関では、肉もってるか?と聞かれたがきっぱりNo!でここもすんなりパス。到着ロビーで旅行社の現地窓口:加藤さんの出迎えを受ける。

長野から同じ便で来られた荒木さんとともに加藤さん宅に向かう。以降、荒木さんとは多少の前後はあったが概ね最終日まで同行することになった。
アンカレッジのダウンタウンに近い海岸近くにある加藤宅は、瀟洒なつくりでオープンな感じの宿である。我々は、居間付の部屋を割り当ててもらう。

シャワーを浴び午後からダウンタウンの散策に出かける。町は北海道の町に似てオープンでゆったりとしている。一流ホテルもあるが、観光客もさほど多くなく、アジアの熱気ムンムン!とは対極にありそうなさらっと乾いた感じ?で少し淋しげであった。しかし治安はよさそうで裏通りを歩いても不安は感じない。今日は、土曜日なので中心部ではサタデーマーケットが開かれていた。多くの人でごった返していたが、ちょいと覗いてみる。ブラブラするだけでも愉しいマーケットでウエア、民芸具、食べ物、写真、等なんでもある。

夕食は、適当なレストランで摂る。勿論、アラスカビールを腹いっぱいいただく。


皆さん、御見送り有り難う御座いました アンカレッジダウンタウンで夕食 そり牽引ロープの調整

6.06 朝は、加藤さん宅手作りの日本食をいただく。御飯が美味しい。連絡の為、本隊より一足先に下山された富山県山岳連盟隊(本隊6名+報道3名、計9名)の小島さんと同席する。デナリの詳細情報を得る。今日は、現地調達予定の装備・食料の買出しである。
小島さんのアドバイスに基づきそりの牽引ロープは、身長より少し短くし塩ビパイプを介する事にする。氷河の下部は細かい登下降がありそりとの間隔を一定にしたほうが歩きやすいとのこと。下りでそりから追っかけられたらかなわない!傘も購入する。LPとMC(メディカルキャンプ)はトイレが設置されているが勿論屋根はない。雪が降るとペーパーが濡れる・・・・傘があれば・・・・で納得!

スポーツ用品店を2軒ほど廻るが、すでに冬季シーズンは過ぎており品薄のアイテムも多い。五万分の一のマップ、プリムスのガスカートリッジや手袋などを購入する。できるだけ国内で揃えてきた方が安心、との印象。食料品:販売単位が大きい!当然のことで何もかも国内よりデカイ!行動食、肉、ハム、ウインナー、を適当に購入する。

午後から荷物の整理、夕方から散歩+ディナー。9時ごろ帰宅の途につくがまだ燦々と日が射し昼間と変わらない。今の時期は『白夜』!太陽を見て暮らすと大変なことになる。夜中過ぎると少し日は落ちるが暗くはならない。時刻で自己管理するしかないのだ。飲兵衛は精神力が必要な季節である!

6.07 美味しい朝食、しかし残念ながら今日限り!小島さんによれば、本隊は昨日登頂されたとのこと。快晴・無風だったそうだ。HC(ハイキャンプ)で数日粘った後の登頂だけに感激ひとしおだっただろうと思う・・・・オメデトウ御座います!行程を聞いたところ、LPに着いてから登頂まで17日かかっている・・・かなり厳しい!我々もそんなに余裕はなさそうだ。9:00、装備をまとめ加藤さんの車で登山基地であるタルキートナへ向かう。

町を出るとアラスカの広大な原生林を縫ってハイウエーが延びる。遠くに残雪の山脈が望まれる。車窓を流れる風景は単調だが退屈はしない。2時間ほどのドライブで、昔は鉱山の町として栄えたタルキートナに到着。早速、レンジャーステーションでチェックインする。2月に郵送した登録申請書(Registration Form)はちゃんと受理されていた。発行されたPermission No.は386。

個室にとおされ、装備(テントの数、カラー、コンロの種類、燃料の量、スキーかスノーシューか、等)、食料(何日分か)及び下山予定日についてのヒヤリングが行なわれる。下山予定日を過ぎて連絡ない場合、捜索開始ということのようだ。更にビデオを使って、登行ルートや排泄物の処理、等の簡単なレクチャーを受け排泄物用袋とゴミ袋を支給される。

デナリ登山活動中の大事な観天望気としてレンジャーの重要なコメント:フォーレーカーにレンズ雲がかかると、数時間後荒れる!十分注意せよ!

この時点で、本年の申請者数は、1249名で入山済が493名、登頂率が35%であった。5月は天候不順だったようだ。レンジャーステーションの手続きを終えすぐ空港にある航空会社:TAT(Talkeetna Air Taxi)に向かう。タルキートナ空港から実質的な入山地点のLPまでおよそ60マイル、軽飛行機での入山になる。TATの他に数社あるが登山客の輸送の大半はTATがやっているとのことである。

手続きを済ませスノーシューズ、ショベルをレンタルする。旗竿は25本購入になる。白ガソリンはLPで渡すとのことである。今日にもフライトできそうな情報であったが、LPの天候不順!ということでフライトは中止となった。


タルキートナはピザ屋、ハンバーガー屋、酒屋、レストラン、御土産屋、など一通りそろっている小さなせまい観光地である。全てTATからせいぜい1kmの範囲内だ。夕食は町に出てピザ、ビール、サラダ、ワイン、黒霧島(焼酎、勿論持ち込み)をいただく。宿泊はTATオフィス横のロッジ(フライトウエイティング客用で無料)。

レンジャーに簡単なレクチャーを受ける レンジャーステーション。チェックイン完了 加藤さんと乾杯!

6.08 今日飛べれば予定通りだが・・・・・残念ながら朝から曇天!しかも時々小雨あり。昨日の予報では本日天候良好のはずだったのに。しかし何時GO!が出るかわからないので8:00から待機する、がLP付近が視界不良でダメ模様。昼頃、ショッピングに出かけ、写真屋で登行ルート:West Butressが明確にわかるモノクロ写真を見つけた。早速購入。夕方近く出発か!ということでウェイティングしているクライマーがどっと集合したが・・・・・結局、飛ばずじまい。

ウェイティングしているパーティの中に、12名のガイド登山グループがいた。インターネットで世界から募集したとのこと。そのグループに日本人1名が参加されていた。我々の日本語のグチを聞きつけ訪ねてこられた。四国松山在住の松本さん!この人がすごい!写真家で1年のうち半分はアラスカで撮影、だという。マッキンリー山にかかるオーロラ!(厳冬期、カヒrトナ氷河で1ヶ月以上キャンプしてチャンスを狙う)、南アラスカの鯨!(無人島でキャンプ、ボートで接近!)・・・・世の中にはスゴイ人がいるものである。こういう方とめぐり会えることができるのもマッキンリーに来ているからこそできることだと思う。

少しイライラするがまだまだ予定の範囲内だ。気を取り直し夕方からLP到着時に食べる予定だったベーコン、ウインナー、黒キリ、ビールで小宴会を催す。参加者は、我々4名+荒木さん+小島さんの6名。松本さんもちょくちょく顔を出す。小島さんは本隊を出迎える為に空港で待機中である。


タルキートナのピザ屋さんで夕食
(手前は荒木さん」)
フライト待ち(手前は小島さん)の宴会 暇つぶしに自転車で遊ぶ

6.09 曇天の朝を迎える。ようやく時差ボケもとれ全員快調!、だが今日は飛ぶのか?観光用は時たま飛んでいるがLP行きには無関心のように見える。聞くとLP付近の天候がよくない・・・・。今日はブランチとし11:00からお洒落なレストランでフレッシュサーモンをいただく。美味しい!
昼過ぎにTATに戻るとスタンバイせよ!との指示。ようやくお呼びがかかった。よし!行くぞ〜。
我々の期待をのせて2機テイクオフ・・・・・しばらくで2機帰還・・・残念ながら降りてきたのは、先程乗り込んだクライマーでした。
マッキンリーはガスに包まれアクセス不能、とのこと。有視界飛行の軽飛行機だから仕方ない。しばらくはダメそう、だが念のため19:00まで待機・・・・待機3日目が空しく過ぎる。
←荷物を積んだり、おろしたり・・・その度に喜んだりがっかりして4日過ぎる

6.10 曇天。昨日より雲底は高いが・・・大差ないか・・・8:00頃から観光用が飛び立つ。あきらめかけていたがガイド登山グループ:12名は午前中出発し、無事LPに降り立ったようである。我々のオーダーはもうすぐのはず!いよいよだな・・・と思うがお呼びがかからない。しばらくして更に2機トライ、1機はランディング、1機は戻ってきた。パイロットによっても成否が分かれるようである。イライラしながら待つ、待つしかないのである・・・・18:00、4日目の宿泊の準備をするが、19:00までは現場で待機。しかしやはりダメ、待機4日目でイライラが更につのるが、自然が相手、為す術無し。

6.11  形のない雲に覆われた曇天の朝を迎える。7:30に偵察機が出発・・・今日もダメかと思っていたら偵察機で2名帰着した。今日はいけそう?
9:00、3名出発。これも無事LP着、帰り便で3名帰着する。ウェイティング組はにわかに色めき立つ!

10:30よりスタンバイ!・・・・・しかし・・・またもや天候悪化!・・イジイジ・・・GOサインはまだか?・・・・時間は過ぎていく・・・ついに夕方!・・・・Are you ready ?・・・モチ、OK!・・・すぐ持参しない荷物はTATの倉庫にデポする。
19:00近くになりGOサイン!1番機、2番機がテイクオフ、我々は3番機だ。19:15、タルキートナ飛行場を離陸、一路LPへ向かう。

平坦な緑の絨毯のような原生林帯を眼下に次第に高度を上げながらデナリ山群に近づく・・・飛行高度、およそ2800m・・・軽飛行機は谷(氷河)の入り口らしき2つの急峻な山岳の間に突入、両翼にグ〜ンと岩稜の走る雪壁が迫る・・・不規則な気流にグラリ!・・・まるで映画のワンシーンのようだ。

気流にもまれながらも氷河へのゲートを通過、穏やかな飛行に移る。眼下には純白に氷河、宝石のようにブルーに輝くクレパスが美しい。

Mt.Foraker(フォーレーカー:5305 m)の前で旋回し、20:00、のぼり勾配のサウスイーストフォークカヒルトナ氷河にランディングした。LPの標高は、2134m。

着陸と同時に声が飛ぶ!・・Hurry up !・・・すぐさま荷物を運び出す。いつ空間のゲートが閉ざされるかわからない。次のオーダーのパーティが乗り込むとすぐ離陸する・・・しかし飛来したうち2機がタイムアウト!LPに駐機せざるを得なくなった。

富山隊は残念ながらタッチの差で帰還できず。小島さんから依頼されたタバコを手渡すと、顔がグシャグシャにほころんだ。もう4日も待ってんだもの・・・。

レンジャーとLPのマネジメントをしている係員から、白ガソリン(5ガロン)、そり4台、HP(ハイキャンプ)以上で使用する排泄物用ボックス(CMC:Clean Mountain Can) 2ヶを受け取る。

近くにテント設営し一息つく。やっとタルキートナから脱出できた、が今日は11日。富山隊実績の17日を加えると28日!・・・我々の予定では29日深夜アンカレッジ発!・・・行く先多難!

                                    LPのトイレ。快適です!⇒


両翼に迫る岩壁。迫力満点の飛行だ。 LP:ランディングポイントに到着

6.12 遅めに起床。天気、晴れで好!好!。眼前にはハンター北壁(4444 m)が標高差:2000mの壁を持って立ちはだかる。昨日までの悪天がウソみたいだ。帰りのためにベーコン、ウインナー、黒キリ、玉葱、ガスカートリッジ、等をキャッシュ(デポ)する。

今日は終日氷河登行になる。荷物をそりに固定、60mザイルで4名アンザイレンする。荷物重量のバランスは、緩勾配なのでそりが重め、ザック軽め?・・・このあたりは各自の判断に任せる。


 10:05、スタート!ようやく登山活動家開始である。LPからカルヒトナ氷河本流までは標高差200m弱緩い下りである・・・・帰りは最後の登り!きつそう・・・荒木さんはスキー!スノーシューの我々を軽やかに追い抜いていった。

本流に出ると北上、ゆっくり歩を進めるが日差しと照り返しが強く暑い!格好はよくないが旧日本兵が着用していたような帽子とSPF50+の強力なUVカットの乳液とファンデーションが防御策だ。

 何箇所も凹凸を乗り越えるが、ここはクレパス!注意して進む。小島さんのアドバイスのおかげでそりに追っかけられずにすむ。15:00には、荒木さんの待つテントサイトに到着。標高はおよそ2350m、ここをC1とする。C1は特に決められた場所があるわけではなく、概ね2300-2400mあたりに三々五々設営している。今日の歩行距離は約9km、標高差380mであった。
マッキンリー南峰を仰ぐ。標高差はおよそ4000m

6/12、そりとザックに荷物を分割しC1に向かう

絵葉書のような風景が展開する氷河登行

ヒドンクレパス帯を行くパーティ。ルートは写真右→左。
C1付近を行くパーティ。背景遠くに屹立するのはハンター


嵐+荒木隊のC1。氷河を眺めてくつろぐ 迫力のハンター(4441m)正面が北壁

あきれるほど美しい氷河

6.13  今日も晴れ。めずらしく早起きする。今日は登り勾配がきつくなる。各自、ザック重量を思い思いに調整、6:15出発する。昨日よりは、凹凸は少なく登り一方である。ゆっくり歩を進め10:40にはC2予定地:標高2950mに到着。

今日も荒木さんが先着だった。まだ先に行くことは可能だが、先が長いのだ・・・あわてることはない。もちを持参していたのでランチとして醤油モチにして食べるが、これが美味い!やはり重いものは美味いのだ。

午後からのんびりすごす。ゆったり気分で氷河生活を愉しむ。風景は単調だがなぜか飽きがこない。何も考えずボ〜ッとしているのが心地いいのである。本なんて持ってこなくても時間は過せるものである。上部を見るとカヒルトナパスが見える。パスとは峠だから所謂コル?、カヒルトナ氷河はパスの前で東にターンし明日の予定地:C3に延び上がっていく。

そりを引いてのきつい登行、休み休み行かなきゃもたない! C1からC2へめけて出発。今日は単純なのぼりの連続

今日は距離が短いのでのんびりゆく 標高:2950mにC2設営。

6.14 3:00起床。今日は、ガスが立ち込め小雪が舞っている。晴天が続いたのでそろそろ悪天になるのか?支度をして6:00出発。風はさほど強くないが視界がよくない。30-40m位か。60mザイルの最後尾からは先頭が見えない。ルートに沿って立てられた旗竿を追うが、それも時々見失う。慎重に歩を進め9:00には予定のC3(標高:3350m)に到着する。

1時間半ほどかかってテントサイト整地、設営する。C3は多くのテントが設営され賑やかである。ここで我々より1日早くLPに入ったガイド登山参加の松本さん、LPで会った単独行の女性:岡野さんに再会する。

時折、雪がちらつくもののまずまずの天候。昼はとんこつラーメンをいただく。高度が高いので沸点が低く麺がよく煮えないのであまり美味くない。
体調は良好なので明日、4100mまで荷揚することにし、午後より荷物の整理をする。日程検討の結果、荷揚げする食料は9日分、白ガソリンは2ガロンとし、その他はC3にキャッシュ。

午後は天候持ち直し、ウエストバットレスの末端峰(4886m,16030 ft)がC3との標高差:1500mをもって威圧的に迫る。迫力満点だ!

ウエストバットレスの末端峰(4886m,16030 ft)
手前の斜面がルート
C3は、かなり広いサイトに設営する

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★C3〜MC(Medical Camp):【6.15〜6.18】