伯耆大山:矢筈ヶ山〜甲ヶ山 【2004.02.14-15】


■2月14日は低気圧が列島を横断、南から暖かい風をよびこみ関東から近畿、九州・山口にかけて『春一番』になりそう・・・・夜には太平洋上に抜け西高東低の冬型気圧配置となり15日、山岳は荒れ模様?・・・・あまりいいコンディションではないなあ、と思いつつ大山に出かけた。
 当初は、雪稜目標であったが天候を考慮、尾根縦走とする。目的地は、昨年敗退した『甲ヶ山〜矢筈ヶ山』に決め、今回は大休峠から甲ヶ山へ縦走、甲ヶ山からの下山は船上山を経由せず甲川にかかる鶯橋にダイレクトに下降することにする。これで退屈な車道歩きが相当短縮できる!・・・ハズでしたが・・・


香取方面から望む大山。中央雪面が国際スキー場

■2/13、21時北九州出発。宿泊予定の香取駐車場(トイレ付き)に、2:35着、テント設営し3:00には就寝する。

 風が強いうえにコンテナトレーラーがエンジンをかけたまま仮眠しており少々うるさいが・・・何とか眠りにつく。

■2/14、6:30起床。快晴だが風が強い。この時間、この地点ででこの強さだから前線の通過が予想される午後の稜線での幕営はとても無理!ということで本日は大休峠泊まりに決定。

 完璧に除雪された車道を走り川床の冬季ゲートまで移動する。香取からは大山の全容が望まれ、いきなり屹立する白い山塊はのどかな気分にさせるなだらかな丘状の高原とは対照的だ。とりわけピラミダルな三鈷峰は登行意欲をそそる
【写真上:今回のメンバーは5名】

 身支度を調え8:30ゲート出発。今回はショートスキーを携行する。9:00、川床到着。道標に従い夏道にはいるがトレース無し。大休くらいまでは、と思っていたが・・・この時期北面からの入山者は少ないのだろう。

阿弥陀川を渡る。急登ひとのぼりで小さな尾根を巻くように越えると傾斜が落ちる。ここからスキーを履く。
ここから大休峠までは緩傾斜帯であり、登行にはスキーの方が面白そうである。今年はじめたスキーではあるがシールつけての登りだけは何とか様になってきた。
トレースも無し、赤布も見当たらないので気ままに歩を進める。野田ヶ山に続く尾根伝いに行けば三鈷峰や矢筈ヶ山〜甲ヶ山が視界にはいる。風はますます強くなり、樹林帯にいるためまるでジェット戦闘機が低空飛行の訓練をしているような轟音を立てる。12時ごろから雪が舞い始める。大休小屋は夏季入り口が積雪で埋まっていたが、施錠されていない窓がありそこから中にはいる。12:20全員が入った途端、猛烈な吹雪になる。今回はツイてる!明日もこの調子でタノミマス。

今日は半日休養になるがたまにはのんびりもいいネ!持参した焼酎とビールで夕方まで歓談。最近、個性的な会員が増えた為話題には事欠きません!
日が落ちたあとはカレーを食べ早めに就寝。風は夜半過ぎおさまったようだが、明け方には又強くなりだした。


阿弥陀川を渡る 快適なスキー登行 大休峠避難小屋

甲ヶ山〜矢筈ヶ山の稜線

■2/15、5:30起床、6:40出発。強風で小雪、視界は40-50mくらいか。この程度視界あれば大丈夫。昨夜は新雪があったが脛から膝下くらいまでだ。矢筈ヶ山までは樹林帯の急登、1時間ほどで稜線に出る。東面は切れ落ちており雪庇が大きい。

相変わらずガスが深く視界はよくないが雪はやみ時折天空がぽっかり空いて青空がちらつき日が射す。う〜ん、いい具合になってきた。今日は行けそうだ!みんなニンマリ!8:00矢筈ヶ山山頂着
出発時は降雪中 矢筈ヶ山への急登 稜線に出る。右手は雪庇が張り出す
矢筈ヶ山山頂直下 矢筈ヶ山山頂

小休止の後、小矢筈へ向かう。山頂から左より(北東)の尾根にはいる。上部は三面ぐるりと急傾斜なのでガスれば下降取付きがわかりにくい。標高差で50-60mほど下降、すぐ小矢筈のナイフエッジにかかる。ブッシュに覆われた尾根には雪がタップリ!ブッシュを踏み抜くとアウトなので慎重に、そして丁寧に足を運ぶ。最期は腕力一発で狭いピークに出る。さらに注意して少し行けばナイフエッジは終了する。

一息入れて甲ヶ山とのコルへ下降にうつる。尾根は広いが東面には雪庇が大きく張り出している。純白の絨毯を気持ちよく駆け下れば、サーッとガスが取れ眼前に甲ヶ山の岩峰がいきなり現れた!

慎重に小矢筈を通過する。ブッシュの踏み抜きに注意!

本山行の核心部、甲ヶ山に迫る。ルートは正面岩峰右の雪壁

さほど大きな岩峰じゃないが、雪尾根とガスにうまくカムフラージュされ実力不相応の迫力で迫る。しかし見ればルートは明白だ。右手岩峰直下まで直登する。上部はバーンしており慎重にキックして登行、直下でアイゼンを履く。ルートは岩峰右手を巻くが、念のためザイルを出す。新雪が15cmほどあるが下は堅雪である。40m一杯の快適な登行で甲ヶ山ピークから派生した枝尾根上に出る。更に一投足で山頂である。9:50到着。

昨年は、ピークから東面に下降、トラバースしてアイゼンをはいた岩峰のすぐ下方まで到達していたようだ。ホワイトアウトで先が見えず撤退したが、ルート選定は間違いではなかった。

ピークから派生する枝尾根に出、最期の雪壁を登る

矢筈ヶ山〜小矢筈〜甲ヶ山の稜線(甲ヶ山より)

小休止して本日の後半戦スタート。やせた稜線をしばらく行くと岩稜(通称:ゴジラの背)に出る。ここも雪がべっとり岩につき昨年よりは通過しやすいが油断は禁物、慎重に通過する。これで危険箇所は終了、重い足かせのアイゼンをはずす。ここから勝田ヶ山までは緩い下りの稜線漫歩である。

折角だからスキーを履く。昨日シールにワックスをかけたため板のすべりは非常に良いのだが・・・・うまく滑れない!冬装備一式詰まったザック背負っているとはいえ面白いほどよく転ぶ。前につんのめったり後にひっくり返ったりで様にならない。それでもやらなきゃうまくならないので、船上山分岐辺りまで悪戦苦闘した。
しかし疲れる一方なのでついにあきらめ分岐から歩くことにする。(勿論、スキーのうまい高木さんはスイスイでしたが)



日本海を望む稜線漫歩 岩稜帯を越える。踏み抜き注意!
正面は勝田ヶ山。
左手奥が下降予定の尾根
勝田ヶ山方面より甲ヶ山をのぞむ

昨日の登りでは、スキーを忘れた新さんをぐいぐいと引き離したのに、今日の下りではぐいぐいと離される始末、登りしかダメなスキー?・・・みんなで大笑い。

船上山への分岐を過ぎ、北北西方向に広い尾根を行く。尾根が標高を急激に下げる所で西よりの尾根筋に入ってしまった。マップで確認すればよかったが・・・途中から一つ右の尾根に移ろうと沢にはいるが尾根に上がるのも面倒なので、沢筋をそのまま駆け下る。甲川近くなった所で右手尾根に上がりトラバースする。このトラバースに少し手間どる。

この辺りは標高が低く日当たりがいいので残雪は僅か、そのため沢登りの高巻きみたいに泥で汚れてしまう。おまけにザックにつけたスキー板がヤブコギで邪魔になってしようがない。

気温も上がり気分も
よいので大休止
船上への分岐から
北北西に進む
近くなった車道を
目標に下降

我慢のトラバースを終え予定していた尾根に出る。一息入れて下降、僅か数分で目標の鶯橋に出た。時刻は14:30。やっと山は終了だが、川床まで車取りに行かねばならない。とりあえず全員、除雪された県道のT差路まで出る。勿論、スキーでスイスイ!登りと平坦部は得意ですから。

T差路〜川床ゲート間はおよそ6km。原田、久保2名で車回収に行く。T差路発15:15、ゲート着16:30、引き返して16:45には全員ピックアップする。

今日はまともに食べていないのでいつもの食堂で腹ごしらえし、神郷温泉で汗を流し帰途に着いた。
本年はこれで2回目、前回に引き続き今回もおおむね満足の山行となりました。
参加者の皆さん、お疲れ様でした。(Reported by Y.KUBO)



【写真左:目標の鶯橋に到着】

■参加者:新、原田、高木、赤澤、久保、以上5名 
■装備:冬山標準装備一式(幕営用具一式含む)+ショートスキー

■帰路:神郷温泉20:00発、小倉着24:00

2004年2月15日夕方の大山(大山広域農道から)