伯耆大山:三ノ沢〜槍ヶ峰〜東尾根 【2004.03.21】

★東尾根?:
仮称です。天狗ヶ峰からユートピア方面にしばらく下降すると、地形図に記された1636mのピーク。ここから振子沢を左に分けて東に派生している尾根。標高1400m位で方向を東南に転じ、振子沢の出合いまで下っている。東壁の絶好の展望ルート。


■先週で、雪の大山は終了!のつもりであったが、・・・3月度の例会で3/20-21大山山行を計画にあげていたので、予定している会員がいるかも・・・と思い案内した所、常連含め6名希望が出た。天候も何とかもちそうなので、計画していた三ノ沢にはいることとする。目標は、三ノ沢登行と振子沢シリセード!、そして東尾根下降。


■三ノ沢の大堰堤より上部は、剣ヶ峰〜天狗ヶ峰の主稜、槍尾根及び剣ヶ峰南稜に囲まれたカール状の地形で、岩稜と雪のルンゼは次第に傾斜を強め最後は一気に稜線まで立ち上がっている。雪融けが進んでいる今の時期は、当然のことながら主稜線南側に張り出した雪庇や、ブロックの崩壊、緩んだ岩場からの落石の危険があるので、早朝行動し遅くとも9時前には稜線に出る計画とした。


■3/20(土)16時前に小倉出発、久しぶりに昼間に高速を走る。今日の泊まりは奥大山スキー場駐車場の予定。夕食は、いつもの『ふる里』(江府町)のラストオーダーに間に合った(閉店は、20:00)。

 満天の星空のもとスキー場に行けば、なんと環状道路のゲートがオープンになっている。ラッキー!これで車道歩きの時間が少なくて済む。しかし全線開通ではなく、鍵掛峠駐車場のゲートまでであったが、それでも予定の半分以上歩かないで済む。開通は3/28以降と思い込んでいただけになんか得したような感じ!

駐車場で幕営。ここの駐車場はほぼ水平で快適。
明日は早立ちなので、1時間ほど歓談の後早めに就寝。車も通らず静寂の夜で快眠する。3/21、予定より遅めの4時半起床、食事無しでテント撤収、支度をしてキャップランプつけて5:10出発。5時半過ぎには三ノ沢出合いに到着。陽はまだ昇らないが、衝立のような南壁が望まれる。ここで朝食と用足し。冷え込みがきつく結構寒い。


6:10三ノ沢にはいる。雪はザラメ状でよく締まっており殆どもぐらない。左岸よりを進む。下部は緩傾斜、しかも軽装なので少々オーバーペース気味!やがて日が昇り剣ヶ峰が薄いピンク色に染まる。

登行ルート概念図
(1/25,000の地形図ベース。相対的な距離はOK)
三ノ沢出合は標高およそ970mだから剣ヶ峰まで標高差750mである

モルゲンロートに輝く弥山 三ノ沢の堰堤群。写真最上部が大堰堤

歩くほどに岩肌が荒々しい南壁が大きくなってくる。やがて、大堰堤に到着。ここで一息入れる。堰堤はすっかり露出しており左からしか越せそうにない。傾斜がきついので堰堤の下でアイゼンを履く。ついでにハーネス、等準備する。


大堰堤を越える・・・・と、ド〜ン!とまるで突然北アルプスにワープしたようなパノラマが飛び込んでくる。ワ〜オッ!と感嘆の声。堰堤に着くまで見えていた景色と同じ筈なのに・・・映像からライブショウに突然切り替わった感じかな・・・こういう思いがけない展開が起こるからヤマはヤメラレナイ!

残雪の北アルプス!・・・ではなくここは大山:三ノ沢の真っ只中!なのです

行く手に広がる緩傾斜の広大な雪原に左右から幾筋もの岩稜が刺さりこみ、その左右の岩稜を縫う様に雪のルンゼが伸び最後は扇状に分散して急角度で稜線まで一気に突き上げている。大堰堤の標高がおよそ1220mだから標高差500mの壁が立ちはだかっていることになる。

よく見るとルンゼ出口の傾斜の落ちる辺りや、右手槍尾根の沢出合いあたりに落石がごろごろしている。雪面を進む間にルンゼ付近からの落石がいくつもあり、かなりな速度で通り過ぎる。結構冷え込んだ朝でまだ7時だというのに・・・・今日はルンゼを詰めダイレクトに剣ヶ峰の主稜にあがる予定であったが危険なようなので登行ルートを変更する。雪面を右斜上し、槍ヶ峰に突き上げる尾根の末端を巻くように進む。できるだけ尾根に沿うように登行、途中から急な雪壁をこえて尾根上に出る.。

槍ヶ峰に突き上げる尾根の末端をまわりこんで途中から尾根上にあがる。眺望抜群で快適!

ここからみる剣ヶ峰は、残雪期の剣岳の雰囲気十分だ。北アルプスの春山にいるようで気分がいい!。雪尾根上は落石の危険はなく、雪壁は槍ヶ峰直下まで続いている。斜度にあわせてジグザグ登行やアイゼンのフロントでの直登やら愉しみながら直下まで登る。最後は雪の消えた草付を越え夏道に出た。時刻は7:50である。予想より若干早めの到着である。

着いた所は、槍ヶ峰の前衛である小ピナクル直下である。アイゼンを外し小休止。東壁側を覗きこむと残雪豊富な急峻な尾根が這い上がってきている。まだまだいけそうである。ピナクルを巻いていくと槍ヶ峰とのコル、ここから槍ヶ峰を巻くように斜上すれば、槍ヶ峰の向こう側尾根筋に出る。出たところからは槍ヶ峰に簡単にいける。昨年の1月は巻かずに直登したが、雪と氷がつくと様相が一変するからルート選定はケースバイケースだろう。


大山の主峰:剣ヶ峰。残雪期の剣岳の雰囲気十分!

急だがアイゼンがしっかり効き
快適な登行
夏道を辿って槍ヶ峰へ! 槍ヶ峰ピーク。展望抜群

槍ヶ峰のピークに立つ。東壁を俯瞰すれば、刻まれた尾根とルンゼが槍尾根の稜線めがけて突き上げている。ここは尾根上の展望台、弥山〜剣ヶ峰の主稜、南壁から広大な裾野に白い帯のようにのびているニノ沢、三ノ沢、東方に目を移せば、烏ヶ山の鋭鋒、そしてお馴染の矢筈ヶ山〜甲ヶ山、久しぶりの大展望を愉しむ。
小休止の後、天狗ヶ峰ヘ向けて出発。槍ヶ峰北峰?を越えれば一登りで天狗ヶ峰である。


【写真左:槍ヶ峰から槍尾根と烏ヶ山をのぞむ】
【写真右:槍ヶ峰から東壁を俯瞰する。右が壁沢、左が本沢。なかほどの緩やかな尾根が東尾根】


主稜に出るとさすがに登山者が多い。折角だから我々も剣ヶ峰をピストンする。北壁側は残雪豊富だが南壁側は一部夏道が露出している。しっかりしたトレースがあり雪も締まっているので全く問題ない。山頂着8:50。

山頂で特にやることないが、360°くるりと廻って少し見慣れた景色を愉しむ。そして記念撮影。

小休止して天狗に引き返し荷を回収、ユートピア小屋へ向かって下山開始。しばらくは夏道が出ているのでアイゼンはつけずに下降する。ここの下りが以前よりかなり荒れているようである。1,2ヶ所、ラクダの背ほどじゃないが際どいところもある。慎重に足を運び、雪が出てきたところでアイゼンを履く。地形図の1636mを越えると振子沢の源頭である。


【写真左:剣ヶ峰山頂】

槍ヶ峰〜天狗ヶ峰の稜線 天狗ヶ峰に荷をデポ、剣ヶ峰をピストンする。上が往路、下は復路

 スプーンでえぐったような凹凸のない見事な雪面がはるか下方まで続いている。取付の傾斜は急だがあとはさほどでなさそうだ。5mほど下降し、沢筋の中央に出てシリセード!快速下降で気分爽快!緩傾斜帯で一旦停止、後続が着いたところでもう一滑り、1400m付近で停止し右手尾根に上がる。この尾根は1636mから振子沢に沿って沢出合まで降りている東尾根(仮称)である。

 尾根筋は一部ブッシュが出ているが概ねまだ残雪で覆われており、気持ちよく歩ける。数ヶ所急坂があるが、全体的に傾斜は緩い。天狗ヶ峰を頂点とする東壁は、槍尾根と東尾根で包まれた形になっており、東尾根は東壁の北半分を包むように伸びているので、たえず右手に壁を望みながら下降することになる。


天狗ヶ峰から下降。崩壊の進んだ個所有り。慎重に! 振子沢をシリセードで下降。スキー、うまけりゃねえ・・・

東壁は、槍ヶ峰〜天狗ヶ峰の稜線を上辺にしていくつかの急峻な岩稜を本谷に向けおとしている。下部は比較的傾斜は緩いが上部は急激に稜線へ立ち上がる。東尾根は東壁の絶好の展望台となっている。本年はアタックのチャンスを逸したが来季は是非!・・・・アクセス、ルート、グレード、等々しゃべりしながら下降すれば、駒鳥小屋が目にはいる。最後、一滑りして本谷に降り立つ。


東尾根を下降。東壁が気になる尾根です 東壁。中央が本沢で、
その源頭は天狗ヶ峰になる

 振子沢の出合い、10:50着。今日は早出だったので時間はタップリあるが、下山後ゆっくりしよう、ということで休憩なしでそのまま鳥越峠への登りにつく。
駒鳥小屋の少し上流の雪壁を登り、小屋からのトレースに合流、鳥越峠にあがる。峠からシリセードで下降、後はできるだけ等高線沿いに行けば、鍵掛峠〜宝珠越〜槍尾根キリンの鉄柱に伸びている尾根が見えてくる。ここからその尾根に沿って沢沿いに下降すれば車道のヘヤピンカーブの『健康の森登山口』に出る。

 12:10着。後は車道を10分ほどで鍵掛峠駐車場に12:20到着。


 本日の行動時間は約7時間、長すぎず短すぎず心地よい疲れに大満足の1日でした。
今回で本年の雪山は終わりにするが、行く度に新たな楽しみと課題を与えてくれる大山に感謝!参加者の皆さん、お疲れ様でした。
来季も多数の参加をお待ちしています。よろしく!



◆参加者:鉄井、速水、原田、高木、赤澤、久保、以上6名

◆温泉:早い時刻に下山したので、湯原温泉の露天風呂を愉しむ。奥大山スキー場からさほど遠くないので東大山に入った時は、神郷温泉経由と時間的には大差ありません。入湯料は無料ですから、遠回り分の高速代はでますヨ。

(Reported by Y.Kubo  Photo presented by K.Akazawa & Y.Takaki)

鍵掛峠からの大山南壁