霧島山系:高千穂川〜高千穂ノ峰 【2004.04.04】

 
■シャワーを浴びるのには、ちょっとねえ・・という新緑や紅葉の時期は、水流のない谷(沢)もいいのではないか・・・ということで、かねてから気になっていた『霧島山系:高千穂川』に出かけることにした。

 『九州の沢と源流』の遡行図では、滝が多く、水はなくとも楽しめそうな明るく開けた谷として紹介されている。最後に高千穂ノ峰のピークを踏む、というのも気分がよさそうだ。


■4/3、19:40北九州出発。宮崎自動車道高原ICまではおよそ300km、23時過ぎには皇子原に到着。皇子原公園の駐車場に幕営する。夜は通行する車も少なく快適なサイトである。

ピンポイント予報では、明け方から9時くらいまで小雨だが12時には晴れマーク、うまくいけば快晴のもと山頂を踏めそう!。


高千穂川〜高千穂ノ峰登行概念図
(25,000分の1地形図より作成)

入渓地点。橋を渡ったところに駐車 入渓するとすぐ前方に堰堤1 出発式!本日はこの4名です。

 予報通り明け方からポツリ!入渓地に移動、朝食を摂り準備していると小雨に変わる。かまわず8:15出発。
小滝を越えると早速堰堤1登場。梯子を伝い難なく越える。

 遡行図では、コンクリート堰堤は1ヶ所であるが、実際には5ヶ所ほど設置されている。測量の都合?(まだ堰堤造るつもりかもしれん!)もあって全てにしっかりした作業梯子が設置されている為、堰堤越えは全く問題なし。
堰堤は興ざめして好きじゃないが・・・滝は数が多いうえ、姿、形もにているので混乱するが、数が少ない堰堤に従うと整理がしやすい。

【注】堰堤の数:25000分の1地形図には3ヶ所記載。写真記録では4ヶ所だが、1ヶ所撮影していない?ので多分5ヶ所、のはずです。


【堰堤1〜堰堤2】

残置ロープあり。
上部はロープなしにはあがれない
水無し沢なのにこの釜には水がある。
感激のあまり右の1名がドボン!
危うく溺れるところでした。
メタリックな岩、ツルツルです。
滝を越えると平坦な砂礫の河原のパターンが続く。
従って、標高がなかなかあがらない
インゼルを越えるとやがて堰堤2登場。
溢流部には土石流検地センサーが張られている


【堰堤2〜堰堤4】

★堰堤を越えると、25mのハング滝がある。左を巻いていくと、12mのハング滝。左も巻けそうだが右を巻くと沢沿いに延びてきている登山道に出る。登山道はすぐ沢を左岸から右岸(→高千穂ノ峰)に横切る。
椿の花弁が、磨かれた岩に似合う この12mハング滝を右に巻くとたつこま道に出る。 小滝を越えていく
落差のある滝以外は淡々と越えていく。堰堤4に到着。堰堤設置前は多分このような斜滝が連続していたと思われる

【堰堤4〜堰堤5】

★堰堤4を越えると、林道経由空の登山道が左岸から右岸(→高千穂ノ峰)へ横切る。この登山道は、先ほどの道と上部で合流する。
  この辺りから小雨もやんで天候は回復に向かう


堰堤4を越えると、登山道が横切る。泥壁に岩が刺さりこんだようなハング滝は巻いていく。
満開の沢中の山桜、沢も春です! やがて堰堤5に到着。これが最後の堰堤


【堰堤5〜終了点】

★堰堤5を越える頃から青空が広がり、日が射してくる。高千穂ノ峰から二子石の稜線が望まれるが、はるか彼方!
  岩は乾き快適な遡行が続く。上流に行くほどに明るく開放的になる遡行は実に気分がいい!


高千穂ノ峰の稜線が望まれる すっかり明るくなり、気分は爽快、足取も軽い!
明るく春風が心地いい源流域。苔むした岩もさっぱりした踏み心地。流倒木がうるさくなる1040m位で沢終了、尾根にあがる

★樹海から円錐形に競りあがるコニーデ型火山の典型といえば富士山だが、ここ高千穂ノ峰もミニ富士そのものである。標高1100m位間では緩傾斜の樹海、それ以上は、急傾斜の砂礫と草付きである。概算だが今回の遡行の場合、入渓地点は標高425m、終了地点は1040mで標高差の割に流程が長く平均傾斜はおよそ12/100-13/100、終了点から山頂までは51/100-52/100。のんびり遡行から、急登一発のピークハント!天気さえ良ければ気分のいい山行ができます。

★雨季や降雨時のみ水流のある乾燥地帯のワジのような谷(沢)で、メタリックで人工的な造形物のような輝きの小滝は、砂礫の沢を引き立てるモニュメントになっている。観賞用としてはいいが、ホールド、スタンスに乏しいので滝心の直登は困難なものが多い。

★落差の大きい滝は、落ち口が岩盤で、下部は火山歴の詰まった泥壁状の滝が多い。そのため下部がえぐれてハング滝になっている。高巻くしかないが、全て左、もしくは右を小さめに巻ける。ヤブは薄いので巻くのも苦にはならない。

★下流部は樹林帯で周辺の樹木が大きいが沢幅が広いため覆われるような圧迫感はない。一方、上流部は、沢幅はせまくなるがブッシュが小さくなり全体として開放的で明るいの
で、終始爽やかな遡行ができる。テクニカルな困難さを求める方は別ですが・・・・・


【終了点〜山頂】

終了点から左の尾根に上がる。茨まじりのブッシュを漕げばしばらくで砂礫帯に出る。視界は急に開け、足許に中岳〜大播岳〜矢岳広大な樹海が広がる。今はまだ冬枯れだが、新緑や紅葉の頃はさぞかし鮮やかな色彩に飾られるのだろう・・・・


本ルート:『高千穂川〜高千穂ノ峰』の真価は、意外とこの斜面の登行なのかもしれない。


砂礫帯にはいると傾斜がきつくなり、ザラザラとよく滑る。キックステップの要領でいけば案外うまくいく。砂礫に埋もれた岩・石伝いに行くとやがて草付き出る。ここまでくると傾斜は強いが滑らないのでゆっくり歩を進める。


標高差450mを登りきれば山頂から派生する小さな稜に出る。左へ僅かで『天ノ逆鉾』のある山頂である。


ラストが到着したのが14:45、入渓からおよそ6.5時間かかった。4人でザイルを出してきたから程よいペースかな。


広大な冬枯れの樹海を足許に、標高差450mのよく滑る砂礫の斜面を登る。
矢岳と樹海を背に砂走りのような沢の淵を登る 中岳〜新燃岳〜韓国岳の稜線と樹海
噴煙を上げる御鉢


山頂からは360°の眺望がえられる。
桜島の浮かぶ錦江湾、高隈山系、大隈半島南端の山々、市房山〜石堂山、等全て一望のもとである。

このような広大なパノラマの得られる山頂はそう多くない。

ゆっくりしたいがすでに15時を廻っているので早々に下山にかかる。標高差1150m、2時間以上かかる。できるだけ明るいうちに入渓地点まで帰りたいからネ!。

■下山:15:10山頂出発。霧島東神社方面へ九州自然歩道を下降する。
二子石の登り手前のコルから『皇子原』への分岐を左にとる。明瞭でゆったり傾斜の歩き易い道を辿れば、分岐に出る。
左にとれば堰堤4を通り林道経由で皇子原、勿論右(従来ルート)が近いので右を下る。


やがて、沢を横切るとひろい歩道、木段を下れば林道である。ここは、数台駐車可能。後はひたすら下れば舗装道路に出る。右に取れば一曲がりで入渓地に17:40到着。2.5時間かかったが概ね標準タイムである。


水流がなくてちょっと物足りない所もあったが、上流に行けば行くほど明るく開け、最後はさえぎる何ものもない大斜面の直登で山頂に達し、概ね満足!の一日となった。

本日の行動時間は、9.5時間!参加者の皆さん、お疲れ様でした。


(Reported by Y.Kubo & Photo by K.Akazawa)

■参加者:日高、高木、赤澤、久保、以上4名

■装備:
 沢装備+登山靴、ザイルは、30m×1、15m×1、お助けロープ×1を持参したが30mは使用せず。
 ロープ残置されていた滝は、いつロープが消失するかわからない。
 直登したければボルト持参したほうがいい。

■温泉 【写真左:露天風呂からは高千穂ノ峰を遠望できる

 時間あれば、新湯再訪と思っていたが、遅くなったのですぐ近くの『サンヨーフラワー温泉』にはいる。
 入湯料:300円!(但し、17時以降) 
 名称からは温泉もどきの銭湯?と思われそうだが炭酸泉で本物。
 休憩及び飲食OK。混んでいないのでゆったりできる。
 東霧島訪問の折は是非どうぞ!