2005年正月合宿 南ア南部:聖岳東尾根 
2004.12.29〜2005.01.02


■今年で4年連続南アルプスに出かけることになった。2002年:弘法小屋尾根〜間ノ岳、2003年:赤石岳〜荒川三山、2004年:塩見岳〜北岳・・・・となれば今年は聖岳。もしかなうなら聖岳〜赤石岳を踏破したいが・・・・残念ながらGive up!しかし新雪の東尾根登高、十分愉しませてもらいました。

【今回の目標】

 本邦最南に位置する3000m峰、聖岳にいたる冬季ルート:東尾根から聖岳登頂を目指す。
昨年並みに条件よければ、兎岳をこえ赤石岳まで縦走し、赤石岳東尾根(大倉尾根)下降する。
もし1日停滞があれば、1/3までの下山が困難になるので縦走中止し、聖平経由で下山することとする。

 上写真は、赤石岳東尾根(大倉尾根赤石小屋付近からの聖岳東尾根:2003年正月撮影)

参考:畑薙第一ダム(沼平登山指導センター)〜聖岳


12/28 
 
各人業務終了後、20:00門司出発。目的地までおよそ1000km、経済速度で走行すれば予定の9時には到着しそうだ。今年も渋滞にも会わず快適なドライブで静岡ICに到着する。

12/29 
 29日は、直前予報によると曇り時々雨!折角なら雪になってほしい!・・・・29日5時半過ぎには静岡ICを出る。コンビニで買出ししているとポツリ!でも小雨程度でおさまりそうだ。これ以上雨足が強くならないことを祈りつつ、R27〜R189〜R60をたどる。冬季の登山口、畑薙第1ダムまでは1200m近い標高の富士見峠を越えねばならない・・・・
 
 願いが通じたのか、標高があがるにつれ小雨から小雪に変わる、しかし願いが効き過ぎたのか・・・次第に路面は白くなり峠にあがる頃はスリップし始める。危険なのでチェーンを装着する。以降、時速25km以下の低速でダムまで上がり沼ノ平ゲートの広場に駐車する。時刻はすでに8:50になっている。雪はやみそうにない。

 雨に降られるよりましだ・・・少し薄着にし、ヤッケを着込んで9:50出発する。ゲート手前にある静岡県警常駐の南アルプス登山指導センターに登山届を出す。

 センターの話では・・・・聖岳東尾根は無雪期も登られている。特に聖からの下降ルートとして使われている。登りは問題ないが下降中にルートを外しやすく、現在行方不明者1名・・・とのことだ。登りは多少取り違えても頂点を目指すので稜線にでるが、下降は、末広がりになりルートを見失いやすい。

 東尾根は取付までが丸1日かかる。
 単調な林道歩きのチェックポイントは、畑薙大吊橋、赤い畑薙橋、赤石地下水力発電所、中ノ宿吊橋、赤石ダムだ。中ノ宿吊橋〜赤石ダムはかなりな距離があるのでもう1ヶ所ポイントがほしい。

 沼平ゲートから聖沢登山口まで15km程度、ダムの登りを除けば概ね平坦だが・・・・極めて緩い傾斜の登下りが数ヶ所ある。入山のときはいいが疲れきった下山中のこの登りはボディブローのようにきいてくる・・・歩いた人しかワカリマセン。


 出発して4時間半過ぎた14:30やっと聖沢登山口に着く。あと一登りである。急坂の樹林帯をジグザグ切って上がりトラバースすれば今日の幕営地:出会所小屋跡である。到着は15:30であった。途中、トラバースに移るところで歩道が崩壊しており、少し下方を巻いた。

 歩道を少し行けば小沢で水が得られる。数張りは可能。我々到着後しばらくして4人パーティが到着。どうやら同じ東尾根らしい。夜は、一杯飲んで早めに就寝、夜は星が出ており明日は予報どおり好天になりそうだ。

沼平登山指導センター 畑薙大吊橋 大吊橋近くの休憩舎

赤い畑薙橋 赤石地下水力発電所 中ノ宿吊橋

赤石ダム 聖沢登山口 出会所小屋跡前に幕営

12/30 
 快晴に近い晴天!4人パーティが先行、ザックはコンパクトにまとまり足取り軽そうだ。我々も、テント撤収し6:50出発する。幕営した広場のすぐ横に踏み跡がある。下部は多少藪っぽいが、ルートは明瞭だ。出会所小屋跡が標高1375mくらいだから今日の目的地:白蓬ノ頭までは、標高差1250mである。200m/ピッチでゆっくり登る。1700mを過ぎると、急坂が多くなり、泥壁や木の根が滑り歩きづらい。足を踏ん張ったり腕力使っての木登りが多くなり疲れるので足枷にはなるがアイゼンを履く。

 樹林帯は、要所にテープがある。ルートもジグザグに取られており無雪期も相当歩かれているようだ。淡々と上り詰めるとやがて2250mあたりからルートは左におれ傾斜はゆるくなる。どうやら東尾根稜線に出たようだ。ここからはペンキ印がやたら多くなり、トレールがなくとも迷うことはないだろう。雪は時折膝下までくるが、ここ2,3日の降雪分で締りがないためステップが踏めず非常に歩きづらい。白蓬ノ頭までは標高差のわりには距離がある。だらだら歩きに少々うんざりする頃、最後の急坂を越え白蓬ノ頭に出た。

まばゆい青空の下、樹林帯を淡々と登る。白蓬ノ頭まで7時間20分を要した

白蓬ノ頭は、広く平坦でブッシュに囲まれている。風当たりも弱そうなのでここに幕営する。横の丘に登れば富士山が眼前の望める。重厚な赤石岳も赤石沢を隔てて鎮座している。東尾根上部も望まれるが・・・遠いなあ!トレールなければ相当かかりそうだ。

 夕方の予報では、明日は全国的に寒くなり平野部でも積雪!とのこと。特に、東京地方 は、気温1度、朝から終日降雪になるらしい。低気圧が太平洋岸を北上、通過するようだ。平野部でも朝から雪なら山はもっと早くから大荒れになりそうだ。無理すまい!・・・早々と明日の停滞を決める、が・・・この判断でよかったかどうか?

 予報通り、夜半から風が轟々と舞い降雪が続く。しかし轟音はすれどもテントは、揺るがず!設営した場所がいい・・・斜面を這い上がる風は、なかなか鈍頂に手をつけることは出来ないのです。

東尾根上部を望む 中盛丸山〜大沢岳〜百間平の稜線

最近好き?になった富士山 堂々とした赤石岳。右奥のスカイラインが東尾根

12/31
 思ったほど風もつよくないし大荒れといった様子もない・・・早まったかな?・・少し判断が慎重すぎたかもしれない、とシュラフにもぐりこんだままウトウトしながら考える。

しかし10時過ぎると俄然うるさくなってきた。積雪も相当量あるようだ。悪天を喜ぶのもおかしな話だが・・・今日の停滞の判断はよし!としよう。停滞日だから起きてもすることがない。昼過ぎまでシュラフで過ごす。

 1時過ぎてから起床、夕方まで飲み食いで過ごす。用足しに1回外に出る。積雪は深い所でピッケル1本分くらいである。出たついでにテントの周りを除雪する。さすがに気温は低く、長居無用だ。

 今日は大晦日である。ラジオを入れると年末特集:今年の総集編が多いが、なかでも市町村合併に関する『子供ニュース』(NHKテレビ)は妙に解りやすく説得性があった。玉虫色では理解してもらえないから、明確に単純化して解説していたためだろうが・・・どこかの議員さんに聞かせてやりたいねえ・・・

そんなこんなで我々は、ほとんど何もせず大晦日を過したのであります。


01/01(元旦)
 快晴!新年にふさわしいすばらしい御来光!東の空、雲海の上辺が輝き始め、やがて雲海からあふれ出たオレンジ色の陽光はあたりを柔らかく暖かく包む。

 明けましておめでとうございます!
昨年に続き今年も山頂で初日を拝することが出来た。今年もいい年になりますように!

テント撤収、7:15出発。4人パーティのトレールはない。彼らは、昨日そのまま聖を越えたようである。樹林帯は、樹木に塗られたペンキ印を追う。潅木帯に入ると、テープもペンキも雪が付着しわかりにくい。幸い視界良好だから適当に見当をつけて行くが、次第に尾根は細くなりルートファインディングするまでもない。尾根筋に沿って進むがが、軽い雪のためステップがきまらず、おまけにハイ松の踏み抜きが多く辛いラッセルとなる。しかし今のところ風は弱くガスもかかっていないのでコンディションとしては上々だ。

 東聖岳に上がると尾根の向こうにピラミッド状の奥聖岳が見える。そこの登りが本尾根の核心部のようだ。ハイ松を踏み抜かぬように慎重に歩を進める。奥聖岳が眼前に迫る。さすがに威圧感がある。ルートは左ショルダーに続く岩稜しかない。取り付きから少し左トラバース、そこからミックス壁を稜上に直登、あとは忠実に稜上をたどるとショルダーに出る。雪壁を登りきると奥聖岳のピークだ。

やがて森林限界を越える 東聖岳の登り 東聖岳の登り

ハイ松を踏み抜かぬよう歩を進める

東聖岳を越えると奥聖岳のピラミダルなピークが望める

いつも富士山を背にした登行が続く東尾根


 12:30着。奥聖岳に這い上がるといきなり生身を凍てつかせるような極寒の烈風に襲われる。一気に体感温度が下がるのがわかる。ぐずぐずしていたら凍傷になる。4人そろったところで記念撮影し、前聖岳に向かう。右頬をたたく烈風で鼻ももげてしまいそうだ。出来るだけ右手で頬を覆って雪混じりの烈風に翻弄されながら進む。偽ピークを越え本邦最南の3000m峰:前聖岳に着いたのは、13:30、なんと1時間もかかった。夏だったら20-25分ほどの距離しかないのに!。寒い!、とにかく寒い!写真とってすぐ聖平に向けて下山にかかる。


冬将軍の吹き出しに翻弄されながらも、前聖岳山頂へラストスパート!・・・・

奥聖岳山頂 前聖岳に向かう 標高:3013mの前聖岳山頂。

 聖岳南斜面の砂礫部分の雪は飛ばされ、ジグザクにつけられた夏道の部分が白く残っており下降ルートは明瞭である。下るほどに風も弱くなりほっとする。しばらくで右側がガレた尾根筋を通過、小聖岳を越え樹林帯に入る。このあたりから雪が舞いはじめる。トレールはしっかりしているが時々もぐる。西沢渡への分岐のある薊畑を通過、16:15、聖平到着。

 今日の行動時間は、9時間近い。かなりハードになったのでを冬季小屋があいていればゆっくりしたい・・・左折ししばらくで営業小屋がある。すぐ下にあるのが冬季小屋だ。入ると入り口側があいているので利用させていただくことにする。小屋には入れてほっとする。それにしても今日の風と冷気は酷かった。奥聖岳〜前聖岳の1時間の間に2名が右頬から鼻にかけて軽い凍傷を負ってしまった。フードが少し浅すぎたためと思われる。ちょっとしたことで生身が傷つく!気をつけなくては・・・


聖平に向かって下降 またまた雪が舞う 聖平到着

01/02
 今日は聖沢ルートで下山する。快晴無風のすばらしい天気である。昨日が今日の快晴だったら・・・・こればかりは仕方ありません。
少し遅めの7:35冬季小屋出発。できるかぎり沼平ゲートまで行くつもりだから、今日が本山行最長の行動時間になりそうだ。

ルートは、所々、雪で埋もれているもののトレールははっきりしているが、膝下程度のふかふか雪で足許が定まらず歩きにくい。樹林帯はまだしも、枝沢沿いや渡渉箇所では踏み抜いたりしそうだ。見かけは一面の雪原だが冷え込みが続いたわけではないので、結氷していないところが多く踏み抜くとアウト!です。樹林帯も雪の付着の為かテープは見当たらない、トレールも試行錯誤したのか何ヶ所も分岐がある。ラッセル、大変だっただろうなあ・・・おかげさまで助かります。ありがとうございます。

 トレールを忠実にたどり、鉄製の橋を2回渡り聖沢右岸に出る。少し上りトラバースすれば岩頭展望台である。眺望のよいここは標高2200mもあり、小屋から50mしか下降していない!ここから尾根を巻くようにしていくと乗越に出る。距離としては聖沢登山口までの半分近くまで来たが、まだ標高は2000mだ・・・・実質的には下っていないんだから縦走と変わらない!・・・・考えれば疲れるので機械的に歩くだけだ。ここから急降下、聖沢吊橋に出る。ここで左岸に渡る。ここは出会所小屋跡と変わらない標高だ。細かい登下降を淡々とこなしていけば出会所小屋跡に出る。一下りで登山口だ。時刻は、14:30、7時間近くかかった。


絶好の日和だが・・残念ながら下山 樹林帯はもぐる箇所多々! 沢筋のトラバースも多い

聖沢の巻道で横引き箇所が多い 聖沢吊橋で左岸へ 沢水で給水

 問題は、ここからだ。5日目で疲労の色が濃い。休憩含みで6時間もあれば行くべし!
急がず、というか急げず、テクテク歩く。車道は、積雪20cm程で車の轍がある。所々雪崩のデブリがある。31日の降雪によるものだろう。
歩け!歩け!・・・・中ノ宿あたりで暗くなり、キャップランプを出す。ひたすら足許を見て歩け!歩け!・・・畑薙橋から大吊橋までがやたら長く感じる。休憩舎で最後の給水、最終ピッチを歩く。このピッチ、そろそろ?かな、と思ったカーブを曲がったら!・・・指導センターのライトが飛び込んできた・・・・・やっと車道歩きが終わった。時刻は、20:20、行動時間は休憩含み12時間45分!ミナサン、オツカレサマデシタ。コレカラコンナニナガクアルクコトノナイヨウニシマショウね!

追記:
 沼平〜静岡間は、積雪と凍結のため3時間以上かかりました。静岡着は0時過ぎ。銭湯はすでに閉まっていたため交番で24時間サウナ(ヘルシーサウナ高松TEL:054-237-5537)を紹介してもらい、2時過ぎに何とかお風呂にありつけました。3時過ぎに遅い夕食、2時間程度の仮眠後、帰北の途につきました。渋滞なしで北九州着は、1/3、16:30でした。

聖沢登山口 中ノ宿あたりで大休止。寒い! この車道歩きが最も過酷でした

■行程:雪山の行程は、天候、積雪量、トレールの有無、メンバーの体調・体力・技術、等々で大きく変わります。参考程度にしかなりません。アシカラズ。

●12/29 沼平ゲート(9:50)〜聖沢登山口(14:30)〜出合所小屋跡(15:30)★行動時間:5時間40分
●12/30 小屋跡(6:50)〜白蓬の頭(14:10)★行動時間:7時間20分
●12/31 停滞
●01/01 白蓬の頭(7:15)〜奥聖岳(12:30)〜前聖岳(13:30)〜聖平(16:15)〜冬季小屋(16:25)★行動時間:9時間10分
●01/02 冬季小屋(7:35)〜聖沢登山口(14:30)〜沼平ゲート(20:20)★行動時間:12時間45分


■参加者:原田、岡村S、赤澤、久保、以上4名




嵐の仲間の記録:『南ア北部甲斐駒ケ岳』もあわせて御覧ください!

正月の戸台〜北沢峠〜仙水峠〜甲斐駒ケ岳
南アルプス 甲斐駒ケ岳