初冬の富士山:吉田・河口湖口〜剣ヶ峰   2005.11.26-27

■富士山は、国内最高峰である。多くの登山者が、それぞれの思いを込めてチャレンジする。日本一の山に登りたい・・・すごく自然な動機!と思う。冬山トレーニングのために登る・・・寒冷で強風、堅雪の斜面、等、冬山の要素十分・・・山の会なら正月前の慣例のトレーニングプログラムでしょう。
 自分は、高所?に耐え得るだろうか?・・・よく解ります。平地に人工的に造られる低圧室、低酸素室をのぞけば、国内では高所登山のトレーニングの場はここしかない。・・・皆さん、様々な思いをもって富士に登る・・・・・さて今回の参加者の皆さんの思いは如何に・・・・・。

■参加者:岡村M、鉄井、瀬川、橋本、赤澤、久保、以上6名

■コースタイム:
11/26 富士スバルライン5合目駐車場H:2300(11:00)〜東洋館H:2900(13:30)   ●歩行時間:2.5時間
11/27 東洋館(06:40)〜久須志神社/富士浅間神社奥宮H:3700(10:15-10:35)〜剣ヶ峰H:3776(11:30-11:40)
     〜東洋館(13:20-13:50)〜5合目駐車場(15:20)  ●歩行時間:8時間40分


11/26 2003年11月は、吉田・河口湖口、2004年は、御殿場口及び富士宮口より登行したので、今回は未登行の須走口に向かう。御殿場ICで高速から出て河口湖方面に向かう。東富士五湖道路須走ICに入らず左折して富士あざみラインにはいる。

 天候は快晴、自衛隊演習地を左右にふりわけ直線に伸びる道路を駆け上がれば正面にくっきりと色鮮やかな富士がじわりじわりと大きくなる。(右写真)

 一昨年の11月より雪が少なそうだ。やがて勾配がまし九十九折になる。すっかり落葉した晩秋の樹間を縫うようにのびるカーブをいくつか抜けていくと・・・・なんとゲート!・・・そして、通せんぼ!しかも今日、11/26から通行止め!落石や雪崩の危険があるからとのこと。

 どう見ても積雪は7合目以上でしかも僅かだし、落石の危険もなさそう・・・どうやら今の条件に関係なく11/26から閉鎖するようだ。多分富士宮口も同じだろう。仕方ないので富士スバルライン経由で入山することにする。


 Uターンして東富士五湖道路に入り、富士吉田ICを出てスバルラインへ入る。電光掲示板によると開門は9時を予定、とのこと。丁度9時過ぎたところ、少し回り道したが、いいタイミングだ・・・・と思いきやゲート近くなると長蛇の列!今日は絶好の日和、さすがは富士山!と思ったがなかなか進まない。どうもおかしいと思ったらゲートはまだ開いていないようで、路面凍結のため融結剤を撒いている、しばしお待ちください、とのこと。仕方がない、待ちましょう。そのうち開くだろうと思ったが・・・・期待を裏切らずおよそ45分程で開門となった。

 30分ほどで5合目駐車場に到着。やはり標高2300m、いきなり高度を上げたのでピーンと張りつめた冷たい空気は刺すように冷たい。観光の車が続々とつめかけるなか、手早く支度する。ちゃんとしたトイレもここが最後・・・すっきりして11:00、出発。6合目までは、下り気味の歩道をしばらく行き、佐藤小屋への分岐を左に見て、緩い坂を登れば植生不毛の地に出る。この辺からは、埃っぽく乾燥している。よく整備された砂礫・火山礫のジグザグ道をゆっくり登る・

今日は7〜8合目に泊まる予定。多分雪はないのでボッカを兼ねて各自水3リッターほど荷上げする。食料は少ないが一応冬山装備だからザックが重たい。

5合目駐車場が今回の起点(2300m) 整備された緩やかな砂礫のジグザグを200m程登る

まだ余裕! 2700mを過ぎると氷結した残雪が現れる。アイゼン登行トレに丁度いい

 7合目(H:2700)までは、火山礫と砂礫のジグザグ道であるが、ここを過ぎると岩盤上の登路になる。ここらあたりから残雪が出てくる。登路を埋めた残雪は部分的に氷結して登行に気を使う。折角だからアイゼンつけ登行トレーニングを兼ねる事にする。前回の宿泊地を通過、今回はもう少し先まで行くことにする。

 このあたりまで来ると5合目より相当気温が低く、しかも砂塵が舞うほど乾燥しているので底冷えがする。前後して結構多くの登山者があり、ビバーク地が少し心配になってきた。夜行の疲れもあるので今日は早めに幕営することにする。できるだけ雪の上を歩くようにして標高をあげる。

 やがて階段を上がり東洋館に出ると、砂礫地ではないが2張りには十分な広場がある。多少、凸凹で岩が多いが、エヤマットがあるから何とかなるだろう。同じ広場の快適そうな砂礫地には別パーティが設営中である。

 時刻は、まだ13:30、今日は2.5時間しか歩いていないが、頂稜まで残り800m程度、明日のスケジュールに支障きたすこともなさそうなので今日はここで泊まりとする。標高はおよそ2900mである。

 夕方から風が強くなる。夜半過ぎにかけてタイムセッティングされたように一定間隔で突風が吹き荒れる。グランドシートをめくらんばかりの強さだからうるさくてなかなか寝つけない・・・・ウトウトしたり起こされたりしながら時間が過ぎる。こういう夜は寝ていないようだが、実は結構寝ているものなのである・・・さしもの風も明け方には次第に落ち着いてきた・・・・・そして快晴の朝を迎える。

●天気情報では、11/26夜半から11/27明け方にかけて気圧の谷が通過したようです。

11/27 テント撤収し、不要な荷物はまとめてデポする。防寒をしっかりし、アイゼンはいて6:40出発。ここから8合5勺までは、100-150m間隔で小屋がある。ゆっくりした速度でひとつひとつ越していく。次第に堅雪の上を歩くほうが多くなる。氷結したところも少なくなく足下に注意して高度を上げる。

 八ヶ岳は小屋が多く、『小屋ヶ岳』といわれるらしいが、富士山も負けず小屋が多い。とりわけ吉田・河口湖口登山道は小屋が連続している。又、環境保護と危険防止のため鎖と鉄柱の人工物で登山道が制限されている。しかし、積雪でこれら小屋以外の人工物がすべて埋もれてしまえば、突起物のない広大な白い斜面が眼前に展開するのだが・・・・・今回は、残念ながら夏道を示す鎖と鉄柱を辿るしかない。

11/27、快晴の朝を迎える 朝日を浴びて、完全装備で出発!

小屋は標高を確認するいい目安でもある。8合目太子館:3040mを越え、次は白雲荘:3200m、ここで富士山を除いた最高峰、北岳3192mを越える。
更に気温は下がり、紺碧の空、そして眼下に展開する大眺望も愉しむ余裕はない。鼻水そそりながらフードを被ってひたすら歩くのみである。
8合目太子館(3040m)は直ぐ頭上に見える 雄大な眺望には目もくれず・・・
太子館の次は白雲荘!足下見つめて
ひたすら歩く。天空は紺碧の空なのに!
やがて、標高3200mの白雲荘。
ここで北岳:3192mを越える

 富士登山は、ひたすら歩く単純労働である。画像で振り返れば一目瞭然だ。変化に富んだルートならその通過に精神は集中するが、そうでない場合は、足下見て思索にふける?・・・・。

 時間の経過にリニアに高度が上がる。本8合目の小屋群を越えると頂稜まで小屋はない。9合目?の鳥居を過ぎれば頂稜は目前だ。


ようやく雪山らしくなってきた。正面は吉田大沢 本8合目:3360mの小屋が近づく
9合目?の鳥居はまだ遠い やっと9合目の鳥居をとらえる。あと200m足らずである

 2003年の同時期は積雪が多く夏道を示す鎖も鉄柱も雪に埋もれていた。9合目の鳥居を過ぎると頂稜まで見事な雪面で、アイゼンの歯が食い込む程度に堅く、部分的には氷結していた。滑落事故もあり慎重に歩を進めた記憶があるが、今日はジグザグの夏道通りで全く危険を感じない。

 同じ山、同じ時期だが、登行条件は毎回異なるのが普通だ。天候の条件が加われば更に変化が複雑になる・・・だから飽きもせず何回も足を運ぶんでしょうネ。


 10:15、鳥居をくぐると久須志神社の前に出る。前回は広場は分厚い氷に覆われていたが、今日は残雪僅かである。しかし気温は低く、刺すように冷たい。ベンチで小休止、温かい飲み物を取る。それにしても冷える!

頂稜直下。夏道通りに登行 頂上久須志神社の鳥居 一昨年は雪の下だったベンチ
それにしても冷える!

 時計回りでお鉢周りに出かける。今回は積雪僅かであるので、登路を示すロープ沿いに行く。『雲上散歩』道だが、今日は足下に雲はなくどの地点からでも広大な裾野が180度以上の広角度で一望に望める。標高:3700m余の円錐の頂点から広大な裾野を俯瞰する、これほどの障害物にない大空間を足下にできる所は、富士山をおいてない。

 適当によそ見しながら伊豆岳、成就岳を巻いて東安河原に出る。ここは広場状、ここから少し下降すれば、御殿場口登山道、一登りで浅間大社奥宮のある富士宮口登山道である。正面に最高峰剣ヶ峰が大きく見える。15分ほどで三角点のある剣ヶ峰到着。やっと着きました最高点、皆さん、お疲れ様です。


 一休みして下山にかかる。西安河原から直接火口縁横を通過、久須志岳への最後の登りをおえれば出発点の久須志神社に出る。

時計回りに御鉢巡りに出かける 伊豆岳成就岳のコルから剣ヶ峰 浅間大社奥宮から剣ヶ峰
剣ヶ峰にて記念撮影
最高峰:剣ヶ峰を仰ぐ 三角点の説明(国土地理院)
■二等三角点 「富士山」
 この標石は三角点といい、地球上の位置が正確に求められています。
 三角点は、地図作りやいろいろな測量の基準として利用され、大変重要な役割を果たしています。
 平成14年4月1日から、三角点の位置を表す基準が日本測地系から世界測地系に変更され、緯度・経度の値が変わりました。

 北緯 35度21分38.261秒 東経 138度43分338.515秒 標高 3775.63メートル 
 平成14年8月吉日 国土地理院

剣ヶ峰から西安河原へ下る。右端は白山岳 写真左端は、久須志神社周辺の小屋
正面は大日岳

 10:35、お鉢巡りに出発した久須志神社に戻る。12:15だから一周およそ1時間40分ほどかかった。富士昴ラインのゲート閉門は、18:00である。あまりゆっくり出来ない。休まず下山にかかる。下山は単調なジグザグ道だから早い。

 13:20、デポ地の東洋館着。荷を回収してジグザグ道を下る。5合目帰着は、15:20でした。

 帰りは、いつもの『溶岩温泉』で汗を流す。入浴後は勿論、『溶岩ステーキ』!・・・・・お願いしたところ、宿泊客の夕食の準備時間と重なり、18:00以降でないとサービスできないとのこと、残念でした。
 
 御殿場で夕食を取り、19:00頃高速へ・・・帰北は、明朝4時過ぎでした。皆さん、お疲れ様でした。
 

 【Reported by Y.Kubo & Photo presented by K.Akazawa】

参考記録
残雪季の富士山:富士宮口〜剣ヶ峰 2004.05.01-02

残雪季の富士山:御殿場口〜富士山 2004.05.15-16

初冬の富士山:河口湖口〜剣ヶ峰 2003.11.22-24