伯耆大山:阿弥陀川〜三鈷峰北稜 2005.03.20−03.21

■ほんの一週間で、大山の季節は一転した。難渋した先週(03.12-13)は、まるで厳冬期の積雪と風雪、今週は一気に季節が進み明るい陽光と残雪の春山・・・・ともあれ待望の週末好天に恵まれ、気分爽快!多分、今年の残されたワンチャンスと思い今冬の目標であった三鈷峰北稜に出かけることにする。メンバーは、3名。

■前回の偵察山行から判断、確実に完登するため山中一泊の予定だ。北稜は、初〜中級の登攀ルート、とランクされているので、一応ベースをおき軽装で登攀する計画とする。ベースを尾根取付にするか、稜線上の標高:1100-1200m辺りに置くかは現地判断とする。後者とすれば、必ず往路を下山しなければならないが・・・・。



【コースタイム】
3/20:ゲート(8:30)〜川床(9:05/9:10)〜北稜取付ベース(12:00)
3/21:取付ベース(6:00)〜ジャンダルム(8:00)〜山頂(10:00/10:30)〜中宝珠越(11:30/11:35)〜阿弥陀滝(12:05/12:10)〜取付ベース(13:00/13:40)〜川床(15:00)〜ゲート(15:30)

【参加者】
林、岡村S、久保、以上3名

 3/19、20:30小倉出発、美祢西〜長門〜萩〜9号線経由で、宿泊地の香取駐車場着が2:00過ぎとなった。乾いた舗装の上にテント設営。いつも御世話になるこの駐車場はトイレ完備で快適である。少し飲酒して3時には横になる。

 3/20、5時半過ぎ起床、テント撤収、装備をチェックして川床入り口の展望所駐車場へ移動。出発は、8:30。天候は良好、彼方にピラミダルな三鈷峰が望まれ、今回の予定ルートも一望できる。車道は、途中まで除雪が終わり無雪期と変わらない時間の30分ほどで川床に着く。融雪が進んだとはいえ登山道にはいるとまだ裕に1m以上はありそうだ。もぐりそうなのでワカンをはく。


まるで地層のように幾重にも重なる雪の層が春の訪れを告げているようだ

 
 北稜取付までは、ほぼ前回と同じルートを取るが、前回より融雪が進んで前回通過できたスノーブリッジが崩壊しているため、渡渉回数が多くなったようである。

 デブリが数ヶ所あるが、直接それを横切るのは3ヶ所だった?かな、多くは流路まで届かない規模の小さなものである。むしろ通過する時間帯にもよるが落石のほうが危険である。勿論、ヘルメット着用する。

 渡渉のたびに背丈以上の雪壁の登下降を何回となく繰り返し、12:00、見覚えのある取付(東谷出合)に到着した。

 明るく開けたこの辺りはすっかり春めいて、鳥のさえずりと沢音が心地よく響く。水もすぐ取れるし気分としてはここがベースに最適!ルートのコンディション次第では往路を下山しない場合がありえる・・・とか屁理屈をつけここにベースを置く事にする。早速、整地しテント設営、12:40、入居。(⇒ベース設営)


 宴会には少し早いので、明日のために稜線でるまでトレールをつける。50分後帰幕、ようやく焼酎にありついた。

 しばらく歓談していると、いつものメロディでコール?(この谷間で電話が通じる!) 22日来社予定のお客さんからのコールで、『福岡で震度6の地震発生、被害が出ている模様、そちらは被害はないか?22日の打合わせは大丈夫か?』等々・・・・3名とも仰天!あわてて自宅に電話するが、『現在、地震の為非常に込み合っておりしばらくは通じません・・』とのテープ。

 心配で、焼酎もあまり美味くないが、さりとて撤退するわけにもいかず・・・・結局、この日は通じず、3/21の早朝連絡がとれ、自宅や北九州地区は大きな被害が出ていないことが確認できた。


 3/21、4:30起床、快晴!朝食をとり必要最小限の装備にまとめ、6:00出発。昨日つけたとレールを辿る。稜線までは容易に達せられたが、下部は雪がなく、木登りと容易な岩登りのミックス。一汗かくと傾斜が落ち残雪豊富になる。

 早朝のいまは堅雪でキックステップでは少し辛いのでアイゼンをはく。登るにつれ左右の展望が開けてくる。左手東谷側には大きく雪庇が張り出ており、所々大穴があき井戸の底を覗き込むような感じだ。


出発。昨日つけたトレールを辿る 下部は木登りと容易な岩登り 堅雪にアイゼンをはく

モルゲンロートに映える北稜 東谷側には大きく雪庇が張り出す

 7時半頃、前回の中退地点通過する。ここから急な雪壁を越えれば、北稜のジャンダルムというべき岩峰に突き当たるようである。小気味よく効くアイゼンでのジグザグ登行20分ほどで肩に出る、と突然眼前の空間が大きく開け、急峻な沢を隔てて三鈷峰本体が屹然と立ち上がる・・・う〜ん、なかなかの迫力だ。

 目を右に移すとジャンダルムを構成している岩壁が連なる。ジャンダルム通過ルートは向こう側(右側)のようだ。尾根を詰めると岩峰、右手のブッシュを巻いてリッジ上に出る。ここは、阿弥陀滝近くから競りあがっている支稜とのジャンクションになっている。右手はボロボロの岩壁だ

朝の日差しに残雪がまぶしい 見上げる山頂。右手上部の岩壁がジャンダルム

 ここからアンザイレンする。1P目:リッジは狭く、残雪はない。丁度しっかりしたブッシュが有りそれをつかみ右から回り込んで向こう側に越える。続くブッシュを越えれば岩峰の基部につく。短いがここで一旦切る。
 2P目:岩峰の右を回り込み少しうるさいブッシュをこいで雪面をトラバースし、車道からも確認できる広い雪壁の左側のリッジに取り付く。50mでビレイ。

ジャンダルム。手前3峰はリッジ上を行く。
ここの通過が北稜のポイント
4峰は右からまき雪壁の左際を3Pでピークに出る

 3P目及び4P目:ブッシュのリッジと雪壁のコンタクトラインを2P(55m×2P)登り、ピークのブッシュでビレイ。この雪壁は、中央部にデブリガ残り、上部に行くほど傾斜が強くなっている。全てを眼下にできるこのピークは、三鈷峰北面の展望台である。気分が良いので小休止してお茶一杯。それにしても気温は適度に高く、風はない、しかも陽光タップリの快晴。休日にこのような好天に恵まれるのは、何年かに1度あるかなしか!先週の願いが通じたのでしょう、感謝、感謝!

1P目。ブッシュを2本跨ぐようにして越える 3P目の雪壁からの
2P目ビレイポイント
4P目の雪壁

 5P目:3mほどの岩屑の詰まったような小さな岩壁は、凍結しているので上のブッシュをつかんで強引に越える。ブッシュをこいでビレイ。

 6P目:さらにブッシュまじりの雪面を左上すれば、山頂直下の肩に出る。ここはさらに迫力のある展望が愉しめる。丁度、三鈷峰西壁を眼下に見下ろす位置になり、目を落とすと高度感満点!目を上げれば正面に別山から大屏風岩にいたる衝立のような北壁の大パノラマが展開する。今日は、春山にしては空気が澄んでおり実にクリアな映像が展開する。

6P目の登行、左の雪壁へ。
5P目のビレイポイントからの4P目のビレイポイント 6P目のビレイポイント。山頂目前

山頂直下の肩から望む北壁の大パノラマ

三鈷西壁と北壁大屏風岩 山頂目前!最後のピッチ、気を抜かずに!

 
 ここまでくると山頂は目前である。コンテで最後のピッチ(7P目)をつめればケルンの積まれた三鈷峰山頂だ。丁度10時である。取付から4時間かかった。(⇒ 三鈷峰山頂の今回のメンバー)


 山頂からの眺望は、言わずもがな・・・360度ぐるりと雪山大山をほしいままに出来る。登行ルートは雪融けが進み多少ブッシュの多いきらいはあったが、こんな好天だから、贅沢は言うまい・・・満足の行く登攀であったと思う。

 技術グレードは、初級?と思うが、末端からつめることを考慮すれば登り甲斐のあるルートだと思う。30分ほどのんびり大休止。

甲ヶ山(1338m)〜矢筈ヶ山(1358.6m)の稜線を望む。手前のピークは野田ヶ山(1344m)

爽快な気分の山頂。そろそろ下山の準備 北壁が眼前に迫る

 下山ルートは、宝珠尾根を下降、適当なところから剣谷に入り、阿弥陀滝を下降しベースに帰ることにする。10:30、下山開始。ここからはほぼ安全地帯だがユートピア分岐まで念のためコンテで行くことにする。日が上がり気温が高くなってきたので雪が腐ってきた。付着防止のプレートをつけていないアイゼンは、すぐに高下駄になる。ピッケルで払い落としながら、剣谷上部のトラバースに入る。ここは腐っていない。

 宝珠尾根まで気分よく下降、あとは忠実に尾根筋のトレールを追う。剣谷へは何処からでも下れるが、上部は三鈷西壁からの落石が怖いのでなるべく下部の中宝珠越もしくは下宝珠越から下降することにする。


剣谷上部をトラバースし宝珠尾根へ 宝珠尾根を下降する

 11:30、中宝珠越。下宝珠まではもう一つピークを越えねばならない。右手は緩い傾斜の沢が剣谷へ降りている。特に危険は感じないのでここから下降する。

【写真左:中宝珠越より剣谷へ下降】

 剣谷に入ると西壁の下部からの落石が多数散在している。出来るだけ落石の少ない宝珠尾根よりを下降する。しばらくで落石は少なくなる。青空も望めさわやかな気分の下降である。やがて左右から尾根が迫り、阿弥陀滝に出る。上からのぞくがどうも30mでは足りそうにない。少し戻り、宝珠山側の尾根に上がり少しトラバースする。

 みると向かい側にルンゼをはさんで急峻な尾根が降りている。あれが夏道のようだ。15mほどの懸垂下降でルンゼに降り立ち、雪のルンゼを横断、ブッシュ伝いに下降すれば阿弥陀滝の下方に出る。



剣谷より三鈷西壁 開放的な剣谷 懸垂下降後、ルンゼを下る

 水流沿いにいくことしばらくで無事帰幕。時刻は、13:00である。山頂より2時間半だから思ったより早かった。渇いたのどを沢水で潤し、ベース撤収、13:30帰途に着く。

【写真右:ベース到着。お疲れ様でした!】

 川床までは要注意である。日のあたるところはトレールは消えかかっていたが、おおむね昨日のトレールがありそれを辿る。

 15:00川床着、休まず車道をテクテク歩く。長時間行動で少しばかりきついが、中退ではないので心地いい疲労である。三鈷峰が望める所までくると何回となく振返り、今回の成果を確認、好天に感謝する。15:30、到着!皆さん、お疲れ様でした。



春の息吹き一杯の大山北面。また、遊びに来ます。バイバイ!

(Reported by Y.Kubo & Photo presented by S.Okamura)