伯耆大山:三ノ沢右俣尾根〜槍ヶ峰〜東尾根 2005.03.27

■先週末に引き続き今週も好天に恵まれる・・・・・ようやくツキがまわってきた。今回は、本年の1月30日中退した三ノ沢右俣尾根(仮称)に出かけることにする。

■26日(土)、16:30門司出発。参加者3名。米子までは先週と同じルートを辿り、大山を挟んで香取の反対側にある奥大山スキー場駐車場を目指す。23時過ぎ到着、今日の駐車場は空いているので用足しに便利なトイレの近くにテント設営する。明日は間違いなく快晴だ!・・・一口飲んで24時就寝。



奥大山スキー場駐車場から槍尾根〜主稜を望む⇒
【参加者】新、赤澤、久保、以上3名

【コースタイム】
奥大山スキー場駐車場(5:50)〜三ノ沢取付(6:45)〜右俣尾根取付(7:30-7:40)〜槍尾根鉄柱(9:40)〜槍ヶ峰(10:30-10:40)〜天狗ヶ峰(11:00-11:10)〜駒鳥小屋(13:30-13:40)〜駐車場(15:45)

すっかり除雪完了の環状道路 ヘヤピンカーブを曲がると烏ヶ山が望める

 26日は快晴!4時半起床、5時50分出発。環状道路のゲートは閉じているが、オープンに向けて除雪は完了している。雪がないので快調、ヘヤピンカーブを曲がる辺り烏ヶ山が望める。明瞭で、すぐ其処にあるように見える鳥越峠から烏ヶ山への稜線は、先々週の彷徨は一体なんだったのか、と思えるほど単純、平凡だが・・・・。
 鍵掛峠を曲がると、南壁がいきなりズームイン!思わず感嘆の声!今日は大気が澄んでいるせいか、幾筋もの岩稜とルンゼを埋める残雪のコントラストが際立つ。

朝日に映える鍵掛峠からの南壁

 この峠まで除雪は完了しているが、その先は残雪がうず高く積まれていたり、路上が凍結していたりして、結構歩きづらい。

 6時45分、三ノ沢取付着。背丈以上の雪壁を乗り越え沢にはいる。スキーとワカンのトレールが幾筋も残っている。多くのヤマ屋やスキーヤーが楽しんでいるようである。すっかり残雪期になっているので、時たま踏み抜くが、概ねくるぶしから脛までもぐる程度で、眼前の南壁を眺めつつのんびり進む。三ノ沢は一見フラットのようであるが、傾斜は結構あり車道から右俣尾根取付まではおよそ250mもある・・・決して急がないこと。南壁を愉しみながら歩くのがいい。

 進むほどに南壁のディーテイルがわかるようになる、とやがて最終堰堤近くに到着する。目標は右手の尾根である。取り付着は、7:30尾根末端で10分ほど小休止。

南壁がいっそうくっきり、鮮やかになってくる。視ていると登れない岩稜も登れそうな気がしてくる

 7:45、登行開始。すぐ急雪壁になるのでアイゼンをはく。ほぼ直登し尾根上に出る。さすがに前回より雪が少なく、ブッシュが出ているが苦になるほどではない。

 雪庇は、殆ど右手に出ている。大きく張り出した所は、クラックが入りそこから右手が雪庇であることを示している。3m近く張り出した箇所もある。クラックのない1,2月は慎重な登行が必要だろう。

 右はすっぱり切れ落ちているが、今日は右俣がよく見えるのであまり高度間は感じない。ガスで見え隠れした前回のほうが迫力があった・・・すべて明々白々というのも、良し悪しだ。小さいコブを乗越したり左雪壁を巻いたりしてじりじり高度を稼ぐ。


←最終堰堤。右手が目標の右俣尾根

右俣尾根取付。急傾斜の雪壁になるのでアイゼンをはく 下部は、少々ヤブがうるさい

北西方向(写真の尾根右手)からの季節風で雪庇が成長 屏風のような剣ヶ峰南壁

 やがて前回の中退地点を通過、緩いのぼりは1400m過ぎまで続く。潅木が多くなるとさらに視界が開け、左手には三ノ沢から一気に立ち上がる剣ヶ峰南壁がそそ入りたち、正面はドーム状にせりあがる雪壁の向こうに槍ヶ峰から大山主稜につながる槍尾根が一望のもとだ。槍尾根〜大山主稜の大展望台だと確信してこの尾根の登行を思い立ったが・・・・思ったとおりの、そして文字通りの大展望に感嘆!そして満足!

右俣尾根上部。正面を突き上げた所に槍尾根の鉄柱がある。左に槍尾根上の三角形の鋭鋒が槍ヶ峰

 尾根上部、ドームの登りにかかる。リッジはブッシュが出ているので右手の雪壁にルートをとる。10m程トラバースし直上するが、一部傾斜がきつい。下を除くと急傾斜の綺麗な雪面が流れるように下っている。上部は傾斜も少し緩む。一旦、リッジに戻り、ブッシュを縫うように進むが、最後は、右手にでて雪壁をいく。やがて鉄柱に辿りつく。

 時刻は、9:40、取り付きから丁度2時間かかった。ここは、キリン峠からのルートとのジャンクションになる。槍ヶ峰から下降する場合、尾根を素直に辿れば自然に右俣尾根に入り込む地形になっている。そういう点で鉄柱は、キリン峠の下降点を示す重要な道標である。

写真上・下:
急な雪壁の登行。ここが核心部?
写真上:キリン峠東面との分岐を示す鉄柱
写真下:鉄柱からの右俣尾根最上部

 鉄柱から槍ヶ峰を経て天狗ヶ峰までは、東壁と南壁を隔てるリッジを辿ることになる。右手東壁側に巨大な雪庇が発達しているので慎重な行動が必要だ。夏道はリッジ上を行ったり巻いたりしているが、積雪期のいまは概ねリッジ上にルートがとられる。槍ヶ峰までは、2-3のコブを越える。

 槍本峰へは、左斜上し天狗側のコルに出れば容易に達せられる。ここは槍尾根上の灯台みたいなもので、遠くは甲ヶ山から東方の烏ヶ山、そして主稜南壁と360度の展望をほしいままにできる。

槍ヶ峰を目指す! 小ピークの登下降、注意!

槍尾根自体も愉しめるルートです。巻かずにリッジ上を素直に登行する。 今回のメンバーは3名

 10分ほど小休止して天狗へ向けて出発。北峰を越え最後の急坂登り詰めたところが天狗ヶ峰である。到着は、11時。

 ここまではトレールなかったが、さすがに主稜は多くの登山者をむかえているようでしっかりしたトレールがある。

 天狗ヶ峰は、東壁、北壁、南壁を分かつ三角錐の頂点みたいなもので、さしづめ大山バリエーションルートの象徴的存在かな。



←槍ヶ峰

北峰を越えて天狗ヶ峰を目指す 写真上:雪庇の張り出した天狗ヶ峰
写真下:天狗ヶ峰直下、あと一登り

 10分ほど休憩の後、ユートピア方面のトレールを追う。昼近くになり雪が腐ってきた。アイゼンに付着防止板をつけていないので、すぐ高下駄になる。距離は僅かだが尾根が痩せて急激に下降するところは慎重に歩を運ぶ。1636m峰から右に折れ東尾根の下降に移る。昨年は、左の振子沢をシリセードで一直線に下降したが、今日は尾根の状況チェックの為、忠実に尾根筋をたどる。東面で日当たりがよいため、雪は腐るだけ腐っており非常に歩きづらい。

 腐った層は10cm程だが、その下には、上層とは全くなじんでいない堅雪の層があり、アイゼン無しではスリップしやすく、アイゼンを履けば履いたでダンゴになり、なんともいやらしい下降となる。はいたり外したりしながら、1400m辺りまで下る。


ユートピアへ向かって下降
左のピークは1636m峰。雪の稜線が東尾根

東尾根上部。冬季はいい雪稜になりそうだ 尾根から本沢〜駒鳥方面を俯瞰

 昨年はここまでシリセードで下降し、その後尾根筋に移動し下降を続けた。今回は、尾根筋はここまでとし、残りは沢に入ることとする。振子沢をみるとスキーヤーが颯爽とシュプールを描いている。快適な彼らに比べれば我々3人はモタモタしながら下降、おせじにも快適とは言いがたい・・・うらやましい!

 東壁本沢側へシリセード開始!だが普通の姿勢では腐った雪が邪魔し滑らない。ほとんど寝そべるように仰向けになって何とか滑り出した。しかし100m程で雪崩のデブリに乗り上げストップ、仕方ないので後は歩く。

本沢出合。左のピークが天狗ヶ峰 壁沢出合。正面の鋭鋒は槍ヶ峰

 
 両岸から小規模の雪崩が発生しデブリだらけであるが、沢の中心まで届いているのはわずかである。なるべく沢心を行き、時には尾根末端によりながら下降を続ける。

 本沢出合通過、見覚えのある壁沢出合通過、キリン沢を右に見送ればようやく振子沢出合である。時刻は、13時半近い。天狗から2時間もかかってしまった。それにしても疲れるのみで快適な下降ではなかった。

 ちょうど我々が着いたとき、快適なスキー下降組が降りてきた。『今日は雪が重いですねえ』と声かけられたが、こっちは本当に!重かった・・・いやいや、結構なアルバイトでしたよ。

 東尾根は、上部はブッシュも少なく痩せた雪稜になるので面白そうだ。しかしもっと雪の多いときがいい。

駒鳥小屋は屋根の一部を残し大半は雪に埋もれている。まだ積雪は2mはゆうにあるようだ。10分ほど休憩する。残すは鳥越峠までの最後の登りのみである。スキーヤー、ボーダーと我々、みんな一緒に行動開始。融けた春雪ですっかり重くなった靴を引きずりながら2週間前幕営した峠を越える。峠からは下るのみだ。方向を定め下降を続け、15時45分スキー場駐車場に到着した。


 およそ10時間の長い1日だったが、本年最後の雪山大山を堪能!今冬は5戦して2勝3敗だが、この2勝は未知のルートであっただけに満足の行くシーズンになったと思う。参加者の皆さん、お疲れ様でした。又、来シーズンふるって御参加ください。


(Reported by Y.Kubo & Photo presented by K.Akazawa, Y.Atarashi)