西中国山地:河津峡(錦川水系)〜寂地山 2006.08.20

■居座りつづけた台風10号がやっと日本海に抜けた20日、総勢15名で沢登に出かける。

 目的地は、河津峡(西中国山地)。
 『錦川水系の最も深い源流点がある河津峡。滑床、ゴルジュ、滝、緑濃い樹林との調和がすばらしい。西中国山地で屈指の沢』(”西中国山地の沢”)とくれば是非訪ねてみたくなる。

 台風一過の晴天を期待して中国道を走るが・・・・台風にまとわりついていた雲が切れていないのか、曇天ベースで小雨模様!

 六日市ICで高速を降り、宇佐郷へ向う。深谷大橋の手前から左折、河津に向う。深谷川ははるか下方であるが、次第に高度が上がり、長瀬峡あたりになると車道と同じレベルになる・・・・右手の深谷川を見れば、水煙をあげ大きく波打ちながら驚くほどの水量で流れ下っている・・・・期待か、ビビリ?かオーッ!と喚声。

 河津にはいると深谷川」にかかる橋を渡る。すぐ左手に3台駐車する。支度をしていると、地元の方が通りかかる・・・・おっしゃるには・・・・昨夜夜半から今朝にかけて、ひとしきり降った・・・川はあふれているから気をつけていきなされ・・・・有り難うございます!・・・
 手早く支度して07:45出発する。


西中国山地:河津峡遡行〜寂地山登行ルート概念図

■参加者:
 中原、西方、青木、赤澤、西、橋本、高木、三栗、原田、豊田、速水、林、新谷T、新谷C、久保、以15名

■コースタイム:
 河津駐車地点07:45〜入渓08:20〜林道終点の橋09:00〜F5(三段)11:20〜F6(河津の滝)11:40〜F6滝頭(昼食)12:00/12:15〜F7(二段飛び出しの滝)13:00〜遡行終了尾根に移る13:40〜台地14:10〜寂地山14:25/14:45〜右谷山15:40〜藪ヶ峠16:15〜朽ちた神社17:20〜河津駐車地点17:25


河津集落近くに駐車する
雨があがって
間もない林道を行く
『河津の滝』 右:8/20撮影、左:資料の写真(”西中国山地の沢”より)
撮影ポイントが少し違うが、今日の水量は、けた違いに多い!

 深谷川左岸の林道を進む。所々、林道上にも水流がある・・・相当量降ったようだ。しばらく進むと右手に頭上高く夫婦岩が望まれる。比高ガかなりある立派な岩壁である。更に進むと次第に林道が荒れてきた。もはや舗装の川側の側壁しか残っていないところまできた。なかなか入渓目標の橋が現れないので、ここらあたりではいることにする。

 水流にはいる。膝上を越すとかなり水圧を受け流される可能性があるので、適時、ザイル出して進むことにする。この辺、滝は無いが、滑床が続いておりなかなか綺麗なところである。遡行しやすいところを行くので右に左に渡渉するが、案の定2−3人が足許が定まらず持っていかれそうになる・・・その度に大笑い!

 しばらく水遊びを愉しむとようやく目標の橋が現れた。


 橋を越えると少し小滝が現れ沢登らしくなってくる。橋から僅かで右にアシガ谷を分ける。水量は半々といったところか。ここからが本番、腹ごしらえの為分岐で小休止する。本流は左である。水量は、半分近くになったが、沢の幅が狭くなるので流れの深さも強さも変わらない。


橋の辺りまでは、滑床の綺麗な沢です。見た目よりは流れが速く身の軽い人は足許がふ〜わり
時にはお手つないで 林道終点の橋
一般的にはこの辺りで入渓
ロープで確保するが、
足許からさらわれそう!

 
 このくらい水量があれば、大岩のゴーロ帯は連瀑帯と化し、本来の小滝や斜滝の区別がつかなくなる。遡行図に記載されている、F5三段(10m)、F6河津の滝(15m)までは”通常時の滝”と”今日だけの滝”の判別がつかないで遊んでしまいそうである。

 増水時の特徴:水量が多いためどうしてもヘツリが多くなる、従い渡渉も多くなる、又、ジャンプで岩に飛び移ることも多くなる、腰まで浸かることが多くなる、シャワークライミングが多く全身ずぶ濡れになる・・・等々、考えてみたら沢登の”おいしいところ”がすべて詰まる遡行になる!・・・・・?

 そのようなわけで、F5、F6までは、心ゆくまで遊ばせてもらい、橋からおよそ2時間半ほどでF5に達する。

ゴルジュの奥にチョックストンの滝(F1?)。接近するが登れそうにないので右壁から巻く

いたるところが滝。、流れの中にスタンスを求めるのは不可能!出来るだけ水流際を行く

斜滝の通過:瀑流左端にそって登るが、岩が大きくハングしている為匍匐前進!・・・勿論、右も左も巻けますが・・

思い思いに愉しんでいきましょう・・・・遊びにきたんですから遊ばなきゃもったいない!

 F5、F6と思われるゴルジュに近づく。見る限りでは滝数は4、最奥の高くぬきんでている滝が多分F6:河津の滝15mと思われる。
F5:1段目をフリーで抜けると、水流が渦巻く釜の向こうに2段目の斜滝。釜の深さがわからないので念のためザイルを出し左からヘツリ斜滝へ。3段目は傾斜が少し強いが右手から登れそうだ。ここで15mザイルに30mを連結、左岸にジャンプ、ヘツリ気味に3段目をあがると・・・・本沢の盟主、”河津の滝”登場。さすがに直瀑の15mは見上げるほど高く、好き放題に大量の水を落としている。左岸のブッシュにザイルをフィックス、後続を迎える。
全員そろったところで高巻きにかかる。右手の草付きの岩壁にあがりザイルフィックス、腕力のいるところはお助けシュリンゲを下げる。小さく巻いてすぐ滝頭にで、ここでランチタイムの大休止。

F5一段目は、左手をシャワーまじえて登る 2段目は斜滝だが、瀑流の釜を避け左からヘツル
オ〜イ!30mを継ぎ足してくれ 念のためザイルをフィックスし、腰まで使って釜を巻く
2段目から一旦、左岸へジャンプして渡渉 瀑流の横をヘツリ、3段目にあがりこむ
瀑流の白に草木の緑が際立つ
直瀑のF6:河津の滝15m。これくらい水量があると迫力満点! 右の草付きから小さく巻いて滝頭へ、
そしてランチタイム

15分ほど休憩の後、後半戦スタート。相変わらず小滝やゴーロ滝が続き、相変わらず右往左往するが、登れる小滝?はできるだけ直登して遡行を続ける。ゴルジュを抜けて、気分的にも周りを見る余裕が出てきたのか、あらためて水の流れと岩、そして樹木の調和のすばらしさに目が行く。やがて、水路から放流するように水流が飛び出している滝が現れる。これは文字通りの、F7二段飛び出しの滝だろう。

樹林に日が射すと、樹林の緑と水流の白さが際立つ
小滝、斜滝、ゴーロの滝と多種多彩 大岩を左から越えるとすぐゴルジュ。F7が見える

 水路から放流するように水を吐き出すF7は、取り付くすべは無い。水量が少ない場合、取り付けるのかもしれないが・・・・あっさり右から小さく巻くことにする。壁を少し登り滝頭を越えたところからブッシュにすがって戻る。

 続く斜滝を越えると、釜のある直瀑。いけそうも無いので左の壁を登る。少し足場が悪いのでザイルを出す。そのまま巻き適当なところから戻る。巻き道から見ると先程巻いた直瀑の上流には、小滝と斜滝があり、全部で5ヶ?のようだ。1つ目を右から巻いてそのまま2つ目、3つ目も巻いて沢に戻れば上部の2つを直登することになる。
F7を終了したところで小休止。いよいよ遡行の最終ラウンドにはいる。


F7二段飛び出しの滝、文字通り飛び出している 2段目を登ると、奥に釜のある二条の滝。左壁から巻く
左壁から巻きにはいる 右岸の巻き道から見ると上流に更に小滝と斜滝がある

 F7を越えるとめぼしい滝こそ無いものの小滝や落差の小さい斜滝が続く。多分、水量の少ない時は、ただの岩盤だったり、岩のゴーロなんだろうが今日は、それらが全て滝と化しているようだ。セッセ、セッセと越えていく。

 左手の尾根向こうには、つむぎ峡があり、2004年遡行したときは額々山経由で下山した。今日は、尾根歩きを継続する意味で額々山に登り寂地山経由で下山しようと思い、上部二俣は左を取った。しかし思ったより時間がかかりそうなので額々山経由は止めて直接寂地山に向うことにする。

 二俣通過後の分岐は、右手に進み適当なところから沢を離れ尾根に上がる。標高は、1100mを越えているのでのこり200m弱である。藪は薄くたいした労力は要らない。しばらくで植林帯にはいり急坂を越えると平坦地になる。先程の沢は左手下方に延びておりそのまま詰めると額々山と寂地山のコルに出そうだ。

 平坦地で小休止。沢を外れるとさすがに暑い・・・・水分を補給してラストの登行にかかる。平坦地から緩いのぼりに変わると自然林にはいり、踏み跡に出る。左手が額々山、右手登り方向が寂地山である。数分ののぼりで傾斜が無くなり、立派な登山道に出る。右手にとれば僅かでブナに囲まれた寂地山山頂である。時刻は、14時25分、河津の集落から6時間40分かかった。15人だからまあまあのペースでしょう。皆さん、お疲れ様〜。


小滝や斜滝が続く・・・・・水量の多い今日はいたるところが滝と化している
次第に細くなる水流・・・・源頭らしくなってきた 適当なところで沢から尾根に上がる
平坦地に出る。小休止
沢筋を外れると暑い!暑い!
額々山〜寂地山の踏跡に出る 冠山〜寂地山縦走路に出る
・・・寂地山頂目前!

 山頂で小休止、沢装備を解き靴を履き替える。腹ごしらえをし、記念撮影後すぐ出発する。既に14時半をまわっており、ウロウロしたら暗くなってしまう。藪ヶ峠までは整備された登山道であるが、ネットの情報では峠から河津への道は判然としていないようで、テープを追うことになりそうである。

 寂地山から右谷山まではノンストップで行くが、ミノコシ峠から右谷の登りは結構きつい!
右谷山頂で一服する。少しガスがかかり雲行きもよくなさそうだ。先を急ごう!登山道は実によく整備されており、道標も要所要所に設置されている。いずれも浦石峡〜寂地ベースだから藪ヶ峠までは問題なさそうである。尾根筋は結構開けており風の通りもいい。

 藪ヶ峠着は、16:15。寂地山頂から1.5時間、割といいペースで来たようだ。藪ヶ峠は十字路であるが、木目の滝(浦石峡方面)と寂地方面のみが開かれた登山道で、直進する小五郎山/容谷山方面は踏み跡は明瞭だが草で覆われている。右手、河津方面はブッシュや草が多いものの明らかに識別できる古道がトラバース気味に下っている。

 小休止の後、古道を辿る。はじめは尾根をトラバースして回りこんでいく。時折、ジグザグに下り、又、トラバース・・・・何回か繰り返すうちに植林帯にはいるとジグザグのくだりになる。先程から、人の通った真新しい形跡がある・・・・一体今ごろこんなところを誰が歩いたのか?と思っておいたら、植林帯のくだりで前方に数名のヘルメット発見・・・・どうやら沢登の帰りのようだ。

 
 追いついて聞くと、広島の方々のようで、テープを見失った、とのこと。あたりを探すと右手奥にテープがあり、それを追うがそのうちにわからなくなり適当に下る。沢が近づいたあたりで左にトラバースしていくと古道に出る。あとはそれを外さぬように辿れば、ひょっこり朽ちかけた神社の横に出る。
何とか明るいうちに帰れた。神社前から林道を辿ると5分ほどで駐車地点に出る。

 皆さん、お疲れ様でした。水量が多くて沢も大変だったが、下山も実に長〜いルートでした。このルートは多少体力が必要ですネエ。


お疲れ様でした。みんな笑顔で!(寂地山山頂) ミノコシ峠通過、右谷山へ向う

右谷山山頂。小休止 藪ヶ峠。左は浦石峡、右が河津 ブッシュの生い茂る古道を行く

朽ちかかる神社。過疎の為、
サポート出来ない、とのこと
林道に出る。お疲れ様です! 9時間40分後、
駐車地点に帰還

今日は、それなりに愉しませてもらいましたが、降雨の直後や梅雨時期を避けた、新緑や紅葉の頃訪れるならば、
滑床、ゴルジュ、滝、そして色鮮やかな樹林との調和を堪能出来そうな予感いっぱいの沢登でした。

【Reported by Y.Kubo  Photo presented by K.Akazawa & S.Hashimoto】