西中国山地:岩倉山〜恐羅漢山  2006.02.11-12

■西中国山地の恐羅漢山を中心とする山域は、伯耆大山以西では積雪の最も多いところである。大山は鋭い雪稜とナイフエッジの連続する主稜が特徴的で緊張した登行になるが、これに反して恐羅漢山周辺は、準平原状のおおらかな起伏の山並に、ブナやミズナラなどの原生林が広がる豊かな森林帯が特徴だ。

 雪の季節の今頃は、大地を白く染めた雪が、無機質のような樹林を浮かびあがらせるモノトーンの世界・・・新緑や紅葉の時期とはひと味違う登行が愉しめる・・・・・

 1月末は、大山で少し気合のはいる山行を愉しんだので、今回はがらりと趣を変え樹林帯のワンデルングを愉しむ山行とする。今回も吹雪かないことを祈ろう!



■コースタイム:
・02/11:下道川上(08:15)〜岩倉山山頂(12:10)〜鳥越の広場(12:35:幕営
・02/12:広場(06:35)〜鳥越の分れ(09:20)〜台所原(10:30)〜恐羅漢山(11:30)〜スキー場(12:30)〜二軒小屋駐車場(13:00)
■参加者:青木、西方、新谷C、岡村M、鉄井、川中、林、新谷T、速水、岡村S、赤澤、久保、以上12名

■出発前の情報では、恐羅漢山スキー場の積雪は2mほどであった。計画では、北面にあたる岩倉山から台所原を経て恐羅漢山に立つルート設定、多分雪はタップリ!のはずである。

参加者は12名、車2台に分乗、前夜発とする。美祢西IC〜長門〜萩〜益田を経てそのままR191を辿り美都へ向かう。道中はまったく雪はなく、美都に入っても僅かな痕跡程度、明日は標高450m位の下道川から藪尾根にダイレクトに取り付くのだが、ひょっとしたらヤブコギ!? 
 しばらくで道の駅”サンエイト美都”に到着。今夜はここの軒先の下で仮眠する。夜間は、思いの外車の往来が多く,、熟睡!というわけにはいかなかったようだ。


 2/11、6時起床、軽く食事して出発する。それにしても雪が少ないやはり取り付きはヤブか・・・R191は次第に高度を上げ、銅ヶ峠トンネルを越えるとやっと雪景色になる!・・・藪は漕がなくてすみそうだ。

 出合原から表匹見峡方面へ右折、しばらくで下道川上である。赤い屋根の民家から左折すると匹見川を渡る。直ぐの三叉路、左が亀井谷林道入口だが、軽トラックが駐車しているので、ここで下車、支度をする。車は、降雪を考慮して、先程の通りにもどり道路脇に駐車する。

 08:15、出発。林道にはワカンのトレールがありそれを辿る。しばらくで橋を渡り右岸へ、直ぐ左折して尾根の末端に回り込む。

 尾根はササが埋もれる程度の積雪で何とか行けそうだ。ここでワカン装着する。取り付きは急傾斜だが、直ぐに緩やかになる。

 この尾根は、岩倉山頂からほぼ西にまっすぐ延びている尾根で、距離がある分、傾斜は緩い。

 
【写真右:今回の参加者、12名】

正面が登行予定の尾根 亀井谷林道 尾根の取り付き急坂

 今回もラッセルは順繰り交代とする。12名もなると一回りするのに時間が掛かるので負担が少なく楽な登行が出来る。700mあたりで小休止していると上部から物音?・・・見上げれば、猟銃を持った猟師である。

 地元の方で・・・・昨日からイノシシを追っている。このあたりを縄張りとしているオスの成獣、だ。イノシシの足跡は、子供の長靴ほどの跡だが、クマの場合は、大人の長靴の跡ぐらいあるよ・・・・クマ!・・・クマはまだ動いていないわね・・・だいぶ上まで踏んどいたから・・・・ありがとう御座います・・・・気をつけて!
 この尾根、人に出合うことはまず無い!と思っていたが・・猟師とは想定外!であった。しかし、以後スキー場に出るまで誰にも、勿論、トレールにも出合うことは無かったからネ。


樹林帯のラッセルは、急がずのんびりペースで、順繰りで

 807mのポイントを越えるあたりから雪が深くなる。急がず進めば、周囲の尾根が一点に収束されるように近づく。どうやら頂稜が近づいてきた。大きな樹木の立ち並ぶ尾根に出たがそこは最高点ではなく彼方に緩い傾斜の雪原がのびている。

 それを辿るとブッシュのない雪原に出る。このあたり雪が無ければ藪と倒木地帯のようだ。何人か踏み外して腰まで潜る。

そろそろ頂稜が近い 落ち込んだ鉄井さんを救出する

 ガスが濃く正面は何も見えない雪原状の頂稜を行くと適度な間隔で大きな切り株が出ている。これが道しるべ?のようだ。やがて最高点とおぼしきところに出た。ブッシュに文字の消えた標識が掛かっている。やっと着きましたヨ・・・・お疲れさまでした。出発して4時間弱、尾根の取付から3時間ちょっとだから、200m/時・・・まあまあのペースでした。

 雪が舞い始めガスも濃くなってきたので、今日のお泊まりは鳥越の広場とする。天候が良ければ、峠を越えて1086mポイントあたりまでを考えていたが・・・・いつものことだが今日もゆっくりしましょう、と、皆さんに伝達。疲れた顔が、ほころび笑顔になる・・これもいつも通り。

さて、何処が山頂? 向こうの方が高そう・・・山頂は向こうのようだ
皆さん、到着です・・・お疲れ様でした。ここが山頂のようです

文字の消えた標識がひっそりと掛かる岩倉山山頂。あと30分ほどで幕営予定地ですから皆さん元気です

 しばらく休んで峠に向かう。120mの下降であるが、ガスが濃くなったので方向に注意が必要だ。切り株沿いに少し東進、コンパスを南東に振り緩やかな雪原を下降する。しばらくでまばらな低木林にはいる。少し左寄りに斜度の緩いところを伝えば正面に鳥越の広場が目に入る。

 広場は、峠から一ノ谷側に僅かである。この広場は、広く平らでしかも主稜の東側にあり北西の季節風は直接あたらずテン場に最適である。脇にあれた作業小屋?があるが、テントの方が遥かに快適だ。


 1時間もすれば3張り分整地完了、テント設営すればあとはいつもの通り・・・・まず乾杯!、そして水つくり・・飲みながらおしゃべり・・夕食・・またおしゃべりして就寝です。昨夜の分までしっかり寝てください。明日は、4時起床、6時出発です・・・・おやすみなさい。

低木帯にはいると少し左寄りに下降 目前が鳥越の広場
峠の一ノ谷側に広場があり、冬の季節風の通らない恰好のテン場


2/12、昨夜は夜半に降雪があった。湿り雪でザラザラと降雪の音がする。テントを揺すると音を立てて滑り落ちる・・・・どのくらい降っただろうか?幸い明け方には雪は止み天候は回復に向かっているようだ。朝起きて吹雪であれば中退!としていたが予定通り行動できそうなので恐羅漢山まで行くことする。
外に出て見ると積雪はたいしたことはなく10cm程度、今日は視界も良好、風は、耳に響くほどのことはなく縦走には十分な条件である。準備に少し手間取り出発は、6時半過ぎになった。

 林さんは昨日から風邪気味で熱もあり体調不十分、ここから亀井谷林道を伝って下山することになる。距離はあるし、積雪も深くワカン履いても膝下まで来る、が林道だから大丈夫!・・・気をつけて!


 今日の行程、標高906mの峠から、1086mまでのぼれば、あとは緩やかな起伏の山並みを行くと県境の尾根に出る。ここが鳥越の分かれ、ここから南進して台所原へ下降。台所原は、標高およそ1000m、恐羅漢山まで、350mの登りである。計画では、荷を台所原にデポ、空荷で往復し、亀井谷を下降する予定だが、積雪量、時刻、天候、等みて現地判断とする。遅くとも13時には恐羅漢山に立てるだろう。

 峠からブッシュつかんで強引に尾根筋にあがる。あとは昨日と同じほどの斜度である。右手から冷たい風、フードをしっかり被り、今日も順繰りのラッセルだ。この尾根は夏道があるが、この積雪ではここだと措定しがたい。夏道らしきところ、つまり歩きやすい所をつたえばそれがほぼ夏道に重なる。これもトレール無き雪原を行く愉しみの一つです。

さあ、頑張ってまいりましょう! ほんのりオレンジ色に染まる東の空
冷たい空気が張りつめて実にさわやかである

 赤松の多い所を越えれば起伏は緩やかになる。峠近くはさほどでなかったが、次第に雪は深くなり、昨夜の風のせいだろう、樹木への雪の付着量が一気に多くなる。これほどにデコレーションされるともはや”自然のアート”ではなく人為的でさえある。

 メルヘンの世界は続き、やがて島根、広島の県境尾根が近づく。最後の急坂を越えれば鳥越の分かれだ。夏なら小さな標識があるが、この積雪では雪の中だろう。尾根といっても、緩やかな起伏なので広々としている。ガスがかかると解りづらい所だ。真新しいテープが2ヶ所ほどある。最近、訪れた登山者があるようだ。

 ここで小休止、腹ごしらえをする。時刻は、9:20、峠から3時間弱、概ね予定通りである。あと3時間たらずで恐羅漢山にたてそうだ。


次第に雪が深くなり、樹木への雪の付着量も一気に増え、メルヘンの世界に入り込む

鳥越の分かれで小休止
皆さん、余裕で元気いっぱいです
ここから南進する
広々としているので方角に注意!

 本日の後半戦にはいる。ここから方向は南、緩やかな起伏だが、尾根筋をはずさず進む。少し下り緩やかに右カーブ、そして少しだけ登れば中ノ川山である。左前方にぼんやりと恐羅漢山の稜線が視界に入る。ルートは一旦下り、又、登る。あとは急な下り坂、ふかふか雪の下りは愉しい・・・・すいすいと足が先に出る。一旦、平坦になるが、又、急坂になる。

 右手亀井谷側の方が急だから、右手の谷との境界をにらみながら忠実に尾根筋下れば夏と同じ台所原へ出る。緑の眩しい5月、そして紅葉の11月に訪ねたが、今日の台所原は、緩い起伏の雪原に眠ったように立ち尽くすブナ林が、墨絵を観るようで印象的である。時刻は、10:30。小休止、残り350mである。


 さてさて、下山ルートをどう取るか?計画では、恐羅漢山往復して亀井谷下降だったが、雪の量が多くトラバースして谷へ下降するのに手間取りそうだ。
 一方、これぐらい雪があれば空荷でも荷を持っても余り時間的には大差なさそうだ、そうすれば登って戻るくらいなら、金はかかるがスキー場へ降りて車回収した方が早そうだ・・・・しかも一時は晴れ間も見えた天候は、曇りに変わり風が強くなってきた・・・恐羅漢山を踏めば今回の目的はほぼ達せられる・・・・・というわけで、このまま荷を持ちスキー場へ出ることになる。勿論、皆さん大喜びの決定になりました・・・なんせこのほうが楽!ですからネ。

 台所原からみると恐羅漢山山頂は、ほぼ南東の方向、2m近い積雪で夏道のかけらも見あたらないのでコンパス振って一路南東に進む。さすがにここは登路となる斜面は北西面にあたり登るほどに積雪は増し、台所原までは、雪のデコレーションを愉しんだが、もはやデフォルメ!・・・
 
 厳冬期の多雪地域ならではの造形に歓迎されながらラッセルは順調に進み、ルート変更で元気が出たのか僅か1時間!で、しかもピッタリ山頂の標識に突き上げた・・・お疲れ様で〜す。今回の目的地に到着です。

恐羅漢山へ!次第に雪が深くなり、湿り雪に足が重くなる
すっかりデフォルメされたオブジェ・・・・樹林は眠りの世界!
稜線が近づく・・・無彩色に赤、青のカラーが鮮やかに映える・・・夢の世界のようだ

 標識はかろうじて頭だけ出している。多分、2m近い積雪である。小雪がちらつき視界が良くないが、下方にスキー場がかすんで見える。

 しばらく登頂気分を味わい、下山にかかる。砥石郷方面にはトレールが残っておりそれを辿る。しばらく行くがトレールは牛小屋高原方面に行きそうなので途中から右折、右へトラバース気味に下降し国設スキー場の上部に出る。

 スキー場と左手樹林帯の境界に沿って下降、2回コースを急いで横断、リフト乗り場に出る。ここでワカンを脱ぎ、車道を30分弱でスキー場入口の駐車場に到着。時刻は、13:00、意外と早く下山できた。本日の歩きはこれにて終了となる。

恐羅漢山(1346m)山頂。かろうじて顔を出していた標識

 案内所でタクシー(三段峡交通 TEL(0826)28-2011 )を呼んでもらい出合原まで車を回収に行く。13:30、出発、出合原14:10、恐羅漢に戻ったのが15時前で意外と早く回収できた。林さんは、11時過ぎに車に到着したとのこと、林道歩きも思ったより時間がかかったようだ。

 帰りは、往路を戻り美都温泉:湯元館(道の駅:サンエイト美都から車で3分)で汗を流し帰北の途につく。

 今回も、ほぼ計画通りの愉しい山行になった。今年はこれで3回目・・・こんなに愉しんでいいのか!・・・・と思うが天候がいいのだからしようがない。
 参加者の皆さん、お疲れ様でした。次回の雪山も参加してね、よろしく!


こぢんまりした道の駅、”サンエイト美都” 美都温泉:湯元館 湯煙は露天風呂


【Reported by Y.Kubo Photo presented by S.Okamura, T.Shintani & K.Akazawa】