伯耆大山:剣谷〜北西稜〜三鈷峰 2007.02.11-12


■昨年3月に北西稜〜三鈷峰を狙ったが、雪がなくて転進した。今年は、全国的に暖冬!3月では前年の轍を踏む可能性ありと思い、早い時期に出かけることにした。先週は、別山右稜中退となったので、今週はなんとしても完登したい!

 北稜の経験から、時間がかかりそうなので前日下宝珠越あたりに幕営、早朝取りつくことにする。従い、2/11は、大山寺から下宝珠越までだから行動時間は僅か!・・・・久しぶりの山中テント泊、ささやかな宴を催せば話が弾む・・・・。


 大神山神社から林道に出て下宝珠越に向かう頃には小雪が舞っていたが、夕方には晴れ間がのぞき明日の好天が期待できそうな天候となる。天候の心配はなさそうだが・・・・北西稜については、過去の記録で1〜2行、初〜中級との表現のみで、トポが見つからず、行って見なければなんともいえない・・・・。

 取り付いた北西稜は、残念ながら雪が少なく、核心と思われるドーム状の岩峰は直登できず左のブッシュ帯から巻き上がりリッジに出ることになった・・が、このブッシュ帯は70°を越す急傾斜で、腕力登攀に四苦八苦!・・・相当な時間を費やす。


 さすがに上部のリッジは登る気にならず、左手谷に出て西壁からの先行パーティのトレースを拝借させてもらう。上部リッジは、概ねスムースに通過、下宝珠越を出て8時間後、三鈷峰に立つことができた。
 雪稜を期待していた上部リッジは、積雪が少なくブッシュが埋まる程度・・・残念だったものの、リッジ登行は高度感十分、グルリと眺望申し分なく、概ね満足!の山行となった。



■参加者:
 新、岡村S、伊津見、赤澤、久保、以上5名


■コースタイム:
 
【2/11】 大山寺(12:40)〜下宝珠越(14:00) 
 【2/12】 下宝珠越(06:20)〜剣谷(06:45)〜北西稜稜線(08:00)〜三鈷峰(14:20)〜ユートピア小屋(14:45)〜下宝珠越(16:00/16:30)〜大山寺(17:30)





■参考記録:伯耆大山:阿弥陀川〜三鈷峰北稜 2005.03.20-21 




小雪の舞う中下宝珠越へ向かう・・・整地してテント設営、15時には宴会開始!
残照に、ロゼワインのような薄紅色に染まるブナ林・・・・・咲き誇れる満開の桜のようだ


■2/12、05:00起床、軽く朝食を摂り薄明るくなる6時20に出発する。剣谷へ下る沢にはスキーのトレールがありそれに沿って下る。

写真左:ランプをつけて出発】

 いくらか潜るものの比較的スムースに下降する。谷に出合う少し前に右手尾根を巻いて出合いより上部に出る。

【写真右:北西稜へ取り付く】

 取り付く向かいの尾根の大岩を目指して谷を渡る。ここからは急登、膝くらいまで潜るがたいしたことはない。途中からステップが怪しくなったのでアイゼンをはく。

 しばらくのがんばりで北西稜の尾根筋に出る。比較的ブッシュは少なく楽な登行となる。

 ピークに出れば今日のルートが一望できる・・・残念ながらドーム状岩峰は積雪わずかで岩肌が見え隠れしている・・・どうやって登ればいいか?と思うが、まあ取り付きまでいて考えましょう。尾根は次第にやせてきて痩せるほどブッシュがうるさくなる。小さなコルを越えると、前回中退した岩稜に出る。


尾根筋にでると、ルートが一望できる・・・
残念ながらドーム状の岩峰は申し訳程度の積雪で、岩肌が見え隠れしている

 岩稜はうっすら白い。ここでアンザイレンする。岡村トップで越え、ザイルをフィックス、残りはカラビナケーブルで後続する。見た目よりはスタンスもしっかりしている。ここを越えるとブッシュ帯、しばらく行けば、3mほどの緩い岩稜。右手にスリップすればアウトだから面倒だが確保して通過する。少しブッシュ帯を行けば、ドーム状岩峰の取り付きである。下部はしっかりした雪稜、ステップ踏んで岩肌の見えるところまであがる。すぐ上までなら直上できぬことはなさそうだが・・・先ほど尾根から見た限りまだ岩場が20m以上はあり、越えた後がどうか不安である。久保、岡村で相談の結果、トラバースしてブッシュ帯を登るか、リッジまで延びている雪壁を探すことにする。だめな場合は、トラバースを続け谷に出て雪壁を登ることにする。

【写真左】:核心部と思しき岩峰。雪があれば快適な雪壁!のはずだったが・・・・
【写真右上】:もろい岩稜を行く  【写真右下】:上部からの岩稜


 岡村トップで、60mザイルを延ばす・・・ブッシュ帯はきわめて傾斜が強く下部が岩である。なかなか適当なところがなくトラバース続行・・・・しばらくでブッシュ帯を回り込んだところでルンゼらしきところがあったようでザイルが上方に延びる。しばらくするとブッシュに入ったようでブッシュがゆれるのが見える・・・格闘中か?・・・やや時間が経つがコールがない?・・・しばらくして、コール!・・・まだリッジに出ていない。あと少しだが動けそうにない。後続してくれ!・・とのことだ。

 40mザイルを腰に下げ、久保が後続する。ブッシュを回り込みルンゼに出ると数歩で岩璧になる・・ザイルはここで右手ブッシュに延びている。実はここからの数手が垂直のブッシュ登り、しかもそれほど太くないブッシュで少し垂れ気味!・・・・アブミでもあれば!と思うくらいだ・・・奮起して越えると岡村は際どいところでブッシュに乗ったままビレイしている。その下部を通り抜け、右手にザイルを延ばす。7−8mでリッジが迫る・・・やれやれ何とか抜けることができた、とホッとしてリッジに出ると、なんとナイフエッジで向こう側はすっぱり切れている!

 こりゃヤバイ!左に数mトラバースすれば小さな岩峰があり、人が立てる幅の岩稜に這い上がることができた。そこは先ほどのルンゼを詰めた所にあたる・・・・・太いブッシュにセルフビレイをとり、ビレー解除!
何とか突破できた・・・一安心する。上方を見るととても行く気にならないリッジが続いている。リッジ左手の谷筋には、いつの間に現れたのか、3人パーティが、雪壁登行中・・・どうやら西壁のルンゼをつめて上部のコルにでたのだろう、コルからリッジは登らず谷中央にトラバース、雪壁を直登するようである。多分、通常はリッジではなく雪壁がルートなのだろう、と思う。このピッチも、リッジに出ないで谷までトラバースすれば、すんなり通過できただろうが・・・雪質によっては雪崩の危険性も十分にある。


雪壁を20m程登る。ここから左トラバース・・・・正面の谷に3人の先行者
【写真左】:数m岩稜を越えるとブッシュ、しばらくでコル。見上げる上部のリッジは、とてもとても行く気起こらず!
【写真右】:ニコニコしていますが・・・・居る所は両サイドすっぱり切れ落ちたリッジ!


 後続も力振絞ってあがってくる。このレッジは3人以上は無理なので、2人あがったところで先行する。7−8mほどの岩稜を越えると猛烈なブッシュ、右からすがってまけば、幾分広い尾根になる。小ピークを越えるとコルに出た。右手の急峻なルンゼにトレースがある。覗くと上部はアイスである。上から覗くせいもあるが、見るからに難しそうだ・・・ランニングビレイ取れるんだろうか?

【写真右:苦労したブッシュ帯。中央のスカイラインが登行ルート】


 コルから左へトラバース、谷の真ん中に出る。遠望したよりは傾斜はきつくない。リズミカルに登るにはほどよい傾斜である。岡村の引いてきた60mザイルを腰に下げて登行開始。

【写真左:コルから谷(手前)へ入る】

 先行パーティのトレースも大部分残っており、グイグイ高度を稼ぐ。部分的に氷化したところがあるが、前歯がしっかり食い込み快適な登行になる。およそ100m位か?雪壁はブッシュの尾根に吸収される。

 不要とは思うが念のためザイルをフィックス、その旨後続に伝える。一登りで向こう側が切れ落ちたリッジに出る。ここは宝珠尾根から見たときスカイラインになるところである。従い、高度感抜群!



切れ落ちる西壁と剱谷 西壁、宝珠尾根と北壁(大屏風岩〜小屏風岩)
快適な雪壁の登行(写真左は、嵐パーティ:岡村、久保)


 雪壁を登りリッジに出たところで小休止。少し腹ごしらえをして次のピッチにかかる。右手は西壁で切れ落ちる壁になっている。正面に向かうと尾根はコブ状に盛り上がり、更に痩せたリッジが山頂まで続いているようだ。丁度、先行パーティが上方の尾根を詰めているところであった。

 コブは、岩場になっている。基部まであがりザイルを出す。久保トップで取り付く。アンサウンドな岩場なので無雪期だったら登る気はしないだろうが、冬季の今はしっかり凍て付き不安なく登れる。

 グレードは3級程度だが、慎重にあがる。右手ルンゼにトレースが見えるが、直上する。岩場が終わると、丁度積雪に埋没するくらいの低いブッシュ帯に出る。しばらく登り太めのブッシュにフィックスする。

 上部のリッジは、ブッシュ混じり。もう少し積雪があれば素晴らしい雪稜になるんだろうが・・・・ステップがきれいに決まるのでノーザイルでのんびり詰めることにする。1ピッチほど登れば北稜とのジャンクションに出る。狭いがフラットになっているので小休止、眼下の眺望を愉しむ。

 振り返れば、丁度、ラストを登行している新、岡村の2名が、痩せたリッジのスカイラインから飛び出して見える。手前が切れ落ちた壁であるので高度感のあるシーンになる・・・・この辺りが北西稜のハイライトかな。

北西稜は、小さなコブを起こして山頂へ連なる。(写真左:上方に先行パーティ)
岩場を越えるとブッシュの痩せたリッジとなる
西壁、宝珠尾根と北壁(大屏風岩から別山、八号尾根)のパノラマが展開する
もう少し積雪があれば、素晴らしい雪稜になりそうな、上部のリッジ
北西稜の全容が俯瞰できる。今日最も労を費やしたのが中央のピークの右壁
後続は、高度感満点のリッジ、先行は山頂に迫る・・・・
周囲グルリと見渡せる気分の良い登行を愉しむ


 ジャンクションからは少し傾斜が落ちる。リッジを忠実に詰めるとやがてケルンの積まれた三鈷峰に出た。時刻は、14:20である。下宝珠越のテン場から8時間を要した。予想以上に時間を要したのは、あの急峻なブッシュの壁!しかしあそこを突破せずトラバースして雪壁を登ったならば、少しふぬけな山行になったような気もする・・・・一途にリッジにルートを求めたのはあながち間違いではないだろう・・・・皆さん、お疲れ様でした。

 山頂で記念撮影をし、すぐ退散する。まだ下宝珠越まで歩かねばならない。宝珠尾根は下り一方ではなく中宝珠、下宝珠の登りがある。疲れているのであと2時間はかかりそうだ。

 トレースを追い、ユートピア小屋にあがる。上宝珠越へのトラバースルートは、ここから立派なトレースがある。急がずのんびり下降、上宝珠越へ出る。更に尾根を下降すれば、同じく下降中の2パーティにあう。そのうちの1パーティは福岡の山の会の方々であった。八号尾根〜主稜縦走とのこと・・・・

 ひたすら歩いて16:00、テン場到着。テント撤収、パッキングして16:30、下山にかかる。大山寺着は、17:30・・・・皆さん、11時間に亘る長時間労働、お疲れ様でした。

(山頂から)写真左:甲ヶ山〜矢筈ヶ山、手前は野田ヶ山、写真右:烏ヶ山
下山にかかる。上宝珠越へはユートピア小屋からトラバースする
上宝珠越へのトラバース 宝珠尾根全景・・下宝珠越までは遠い!
三鈷峰西壁 先行パーティの登攀ルート
(写真中央の岸壁右側のルンゼ?)

テント撤収して今日はオシマイ!・・・・愉しい2日間でした。又、来ます・・・・バイバイ!


【Reported by Y.Kubo  Photo presented by S.Okamura & K.Akazawa】

 SOUND by ♪ MACHI SOUND COLLECTION 


Hope for the best and prepare for the worst!
次回も期待を持ってチャレンジしましょう、でも何が起こるかわかりません・・・・準備万端!でね