伯耆大山:主稜(上宝珠越〜弥山)縦走  2007.03.04


■直前予報では、03/04は晴れ!先週は午前中が天候悪かっただけに、やっと青空のもと登攀が愉しめそうだ! 目標は、北壁:中ノ沢〜滝沢リッジである。前回、多量の積雪のため三鈷峰まで行けなかったメンバーもリベンジ! 総勢7名で出かけることになった。

 北九州発、16:30、丁度、ETCの通勤割引がフルに利用できる時間帯である・・・・新見IC経由で、気分良く大山に向かった・・・・

 しかし、残念ながら予報は半日ずれて明け方まで雨が残り、北壁はあきらめ転進せざるを得なくなった。三鈷峰組も引きずられて転進? だがこちらは三鈷峰よりおもしろい主稜縦走!・・・・従い、トータルで見れば、まあ満足出来る山行になりました・・・今年の雪の大山はこれでオシマイです。

【写真右:上宝珠越〜主稜への登行ルート】

■参加者:
 岡村M、新谷C、西方、新谷T(三鈷峰組)+原田、赤澤、久保(北壁組)、以上7名


■コースタイム:
 駐車場(04:10 & 05:00)〜元谷堰堤(06:10 & 06:00)〜上宝珠沢合流(06:55/07:05)〜天狗ヶ峰(08:45)〜剣ヶ峰(09:05/09:20)〜弥山(11:00/11:30)〜元谷(12:15)〜ランチタイム【大山そば】〜駐車場(13:20)






■新見ICを出て、全く雪のない国道を快調に飛ばし、すっかりシーズンオフの風情になっている桝水原スキー場の駐車場に入る。

 溝口ICを過ぎた辺りから、小雨?・・・・・おかしい、予報ではそろそろ晴れていいはずだが・・・まあ、そのうち晴れるだろう。テント設営し、お湿り程度に飲んで横になるが、外はお湿りどころではなく、小雨が降り出した。あれっ!そんな馬鹿な、と思うが確かに雨である。今は降っても朝までに止めばいい・・・・もっとゆずって元谷に入る頃止めばいい、と念願し就寝。

 3時起床、簡単に食事し、濡れたテント撤収・・・・雨は止んでいるが、湿っぽい。ひとまず大山寺橋たもとの駐車場に移動、出発の準備をするも、又、降り出した。気温も高く雪になる可能性などなさそうだ。ここにいても仕方ないので出かけることにする。北壁組3名、04:10頃出発、まだ真っ暗だ。三鈷峰組は、05:00頃の出発になったようだ。

【写真右:堰堤から北壁取付へ向かう:06:10】
【写真左:いまだ明けやらぬ5時出発】


 04:30、大神山神社着。雲が厚くなかなか明るくなりそうにない。20分ほど時間をつぶす。しばらくして元谷へ向け出発・・・・樹林帯は、トレースがわかりにくく、少し谷沿いに進み過ぎ下宝珠越の標識より元谷よりの林道に出た。05:30、大堰堤着・・・まだ真っ暗である。あと30分もすれば、薄明るくなるはずだ。またまた時間をつぶす。

 06:00近くなると、堰堤の端にランプの明かりと女性の話し声・・・・嵐の4人組登場、こちらと結構距離があるので気づいていないようだ・・・・・4人組は上宝珠沢に向かって歩き出した。我々も腰を上げる。

 元谷小屋左手の弥山沢左岸に沿って歩を進める。次第に明るくなり、上部がガスに包まれた北壁が顔を出す。見ると冬季ルートとなる尾根はブッシュが出ており、岸壁にも白いものはまったくない。沢筋には、落石がごろごろしている・・・あまりいい条件ではないなあ、と思いながらさらに進むと、ラクの音が聞こえてきた。

 大屏風岩のあたりからラクの音が絶えない。正面の中ノ沢は目視する限り、今は落石はなさそうだが・・・・まだ朝の6時半である。これから気温があがるとどうなるか?考えるまでもない。又、ガスに隠れた上部の状態も気になる・・・・・・結構なやましい判断を迫られるが、やはり危険は避けるべきだ、ということに落ち着いた。


【写真右:上宝珠沢へ向かう三鈷峰組】

 4人組には、下部から宝珠尾根を詰めると時間がかかるから元谷から直接上宝珠越にあがったがよい、とアドバイスしたもののこの落石では!・・・・・・気になるので、彼らに合流することにする。

 宝珠尾根側にトラバースしながらコールするが、返答はない? 大屏風岩近くに来て、やっとコールが返ってきた。さらに回り込むと、上宝珠沢下部に4人を発見・・・・向こう側も気がついたようで登行を停止、我々を待っているようだ。

 上宝珠沢は、かなり急で落石がいたるところに散乱している。06:55、合流、落石の危険大なので北壁は中止したことを伝える。そして、積雪期の大山主稜縦走未経験のメンバーもいるので今日は三鈷峰はやめ全員で縦走することにする。

小屏風岩、右側が中ノ沢 (左から)中ノ沢、滝沢リッジ、滝沢、弥山尾根(東尾根および西尾根)
(左から)墓場尾根、天狗沢、大屏風岩 4人と合流すべく後を追う 不審者?ではなく北壁組


 07:10、一列縦隊で登行開始。時たま落石が走るので上部に注意しながら右手ブッシュよりに進む。最後はブッシュ帯に入り上宝珠越に出る。小休止してアイゼン、ハーネス、等をつける。左手の三鈷峰には残雪はわずかで、ユートピア小屋がポツンと建つ稜線も褐色である。

【写真左:落石の多い上宝珠沢】

 宝珠尾根の直登は、ほどよい傾斜でアイゼンもステップも具合がよく快適である。急な箇所はジグザグを交えた一登りで稜線に出る。出たところは丁度東面の振子沢の源頭にあたるところで、昨年1月登った東尾根は、すぐ目の前である。尾根上は残雪わずかだが、所々氷結しており、漫然と足をおくだけではスリップする・・要注意!

地形図上の1636mのピークを巻いて少しあがったところで小休止。朝が早かったので少し腹ごしらえをする。
天狗ヶ峰まで要注意なのは2ヶ所、一つは1、2歩であるが尾根が左右に切れ落ちた所、もう一つは天狗ヶ峰ピーク手前の小さなコブの登り、ここは氷結していることが多い・・・・今日は、氷はなく引けば簡単に抜けるもろい岩むき出しであった。


 天狗ヶ峰到着。ここは三叉路で、左手の岩稜をつたえば槍尾根、右手は弥山への縦走路である。今日のように視界良好だったら槍尾根への下降路を探すまでもないが・・・・

【写真右:お久しぶりの ”原田氏と標柱” 】

 先週は、弥山方向からガスで視界が悪い中を来たためか槍尾根取付に確信が持てなかった。今日だったら、何も考えず淡々と進むことが出来る。

 行き来する方向、天候、そして積雪やトレースの有無によりずいぶん印象が変わるものだと改めて思う・・・・当然と言えばそうだが、積雪期でトレースがなく視界がない時の下降の取り付きが最も判断に迷うのではなかろうか。・・・

天狗ヶ峰から剣ヶ峰までは、南壁に張り出した雪庇に注意が必要だが、尾根筋は割りと広く問題なくいける。天狗ヶ峰を過ぎるとすぐ先週三ノ沢から這い上がった地点を通過する。覗くと最後が急壁になっているが、全体としては写真で見るほど傾斜は強くない。
 しばらく雪稜を楽しむとコンクリート製標柱が出てしまった剣ヶ峰に到着する。時刻はまだ9時5分である。先週の標柱は頭をのぞかせただけだったから、1週間で1m近くの融雪である。

左枝沢上部崩壊地からのラクが多い 上宝珠越から直上する リッジの左を巻くようにして詰める
昨年トレースした東尾根。手前は振子沢 なつかしの矢筈ヶ山が望まれる
1636mのピークは右から巻く なかなかガスが取れない天狗ヶ峰へ向かう
天狗ヶ峰へもう一息(写真左)。天狗ヶ峰は通過、北壁側が登路(写真右)
南壁上部には残雪はなくラクが絶えない 剣ヶ峰の標柱で記念撮影

 
 山頂で記念撮影。小休止していたら稜線にかかっていたガスがうっすら取れてきた。時折、日が射すが、又ガスに隠れる・・・青空が見える可能性があるのでしばらく待機するが、取れそうで取れない・・・待ってもしようがないので弥山に向け出発する。

 ここからが主稜縦走の核心部、気合を入れて通過しなければならないところだ。先週は残雪があったので、楽に通過できたが、今日は一部もろい岩稜がむき出しである。ここは積雪期より無雪期のほうが神経使うルートである。

【写真左:核心部付近より望む弥山方面】

 初めての会員もいるので、ザイルを出す。原田トップで行き適当なところでフィックス、カラビナケーブルで通過させる。例のナイフエッジは、まったく雪はなく泥壁で、南壁側に踏み跡がある。ここを通過し狭いリッジに戻りバランスよく登れば小さなコブに出る。ここは数人集結可能で、まったく雪なし。
逆方向から数人のパーティが来るようなのでこのコブで離合する。

 ナイフエッジよりこのコブから先のほうがいやらしい。痩せたガレを数m下降、小さなコルに出る(数mのフィックスがある)。続いて岩屑を積み重ねたような小さなコブがある。一部は靴幅程の狭いリッジ上を行くのだが、動くたびに南壁側がガラガラ音を立てて崩れる。コブの頭まではいいが、登れば下らねばならない、ここが一番気を使う。(コブの頭にピンがあり、ビレイが取れる)コブを下り少し痩せたリッジを通過すれば安全地帯である。

弥山へ向かう。しばらくは緩い雪稜だが、鋭くなったところでザイルをフィックス
ナイフエッジ:
リッジ上から南壁側に回り込みリッジに戻る
数m下降し、次のコブを越える・・・
越えた向こうの下りが緊張する
コブの頭。ここからの下りの1,2歩が緊張する コブを越えると安全地帯


 全員がコブを通過、次の広いピークで小休止する。みると行く手の縦走路には20名近い方々が一列横隊になり、北壁に向かって、コールされ、花束を手向けられていた・・・・慰霊登山のようである。
 時刻は、まだ10時過ぎたばかり・・・急ぐことはない、ゆっくり休むことにする。しばらくして皆さんは、弥山のほうに戻られた。
 我々も腰をあげ弥山に向かう。天候は先ほどよりさらに回復し明るくなってきた。

 気持ちよく弥山到着!・・・・・と、いきなり呼び止められた!・・・・振り向くとなんとU山岳会の方々で、昨年末不慮の事故でなくなられたMさんの慰霊登山で昨日から入山されているとのことだ・・・・。

 先ほどの方々がU山岳会の皆さんとは!・・・久しぶりにお会いし、挨拶を交わし・・・お悔やみを述べる。Mさんは、雪の大山には毎年10回以上も通われていたし・・・好きな山だったんだろう、と思う。しかも、ほとんどの山行がバリエーションだったし・・・・

 奥様も来られておりはじめてお会いし御挨拶する。
 嵐も大山については、Mさんの報告から多くの情報をいただいた・・・マッキンリーについて情報交換をしたとき、”みんなで頂上に立ってはじめて、みんなで山行した価値がある!”、とおっしゃってた。いつも仲間のことを大事にされていたように思う・・・・

 今日、中ノ沢に取り付いておれば下山は多分東壁の様子を見よう、ということになるだろうから天狗ヶ峰のほうに向かい、皆さんには会えなかったかもしれない・・・・きっとMさんが引きあわせてくれたのだろう・・・・感謝!


南壁:三ノ沢 & 二ノ沢(上)
二ノ沢 &一ノ沢(下)
核心部。なぜかここだけ北壁側、南壁側ともに残雪がない!
縦走路から望む弥山。最奥が標柱のあるピーク


 今後ともよろしくお願いします!・・・・U山岳会の皆さん、Mさんの分まで山を愉しんでください。
皆さんにご挨拶し、嵐のメンバーのもとに戻る。大休止して久しぶり?じゃなく1週間ぶりの大山を愉しむ。

大山はいつ来ても登山者が絶えない。今日も多くの人が愉しんでいる。

 我々も十分おしゃべりし、11:30、下山にかかる。6合目までは腐れ雪の夏道を下る。

 6合目からは、快速シリセードで行者谷まで一直線!・・・かなりブッシュが出ているが、うまいこと右に左にかわしながら滑るといくらも時間はかからない。


元谷はもう春!日差しが柔らかい。ブナの赤芽が春を告げている・・・・新緑と残雪の元谷を想いながら大山寺に下る。

今回は、中ノ沢はあきらめざるを得なかったが、初めての主稜縦走をはたせた参加者もあり、又、U山岳会の方々と少しの時間ながら交流できたことは思いがけないプレゼント!・・・今回も満足のゆく山行になった、と思う。・雪の大山、また来年ね・・・バイバイ!

残雪の稜線を行く登山者 別山、三鈷峰ともに残雪なし


春めく元谷、柔らかい日差しを浴びて下山・・・・皆さん、お疲れ様でした


Reported by Y. Kubo   Photo presented by T. Shintani & K. Akazawa