伯耆大山:鏡ヶ成〜烏ヶ山

 2008.02.23-24 


 しばらく春を想わせる暖かい日が続いたが、週末は全国的に強い冬型気圧配置になり、荒れ模様!との予報になった。とりわけ日本海側は軒並み雪マーク!ほんの2日ずれてくれれば雪山が愉しめるのに・・・・・と念願しても東に去る低気圧は待ってくれない。急速に等圧線は縦縞模様になる。そんな天気情報だった、が・・・・出かけることにする。大山の主稜線は、とてもいけないと判断、標高も低く、日本海側から見れば大山に隠れた位置にある烏ヶ山に目標を替える。

 豪雪?で冬型の荒れ模様、そのような条件のなかで烏ヶ山のピークを踏むには日帰りでは無理がありそうだ。従い、ベースを鏡ヶ成から150mほどあげ稜線に近い位置に移し、2日目アタックすることにする。

 23日早朝北九州発、ETC通勤割引を利用しながら順調なドライブで蒜山ICを出る。R482を江府方向に向かい、下蚊屋から大山広域農道に入り鏡ヶ成に向かう。途中、目指す烏ヶ山の全容が望めるところに出る。標高差は、500m程度しかないのに伯耆大山の東端を担う”独立峰”のような烏ヶ山が威圧するように高く鋭い。

 天候の崩れがずれているのか、今のところ見通しがいい・・・・・ひょっとしたら!と思う淡い期待は駐車場に入ってはかなくも裏切られた。ドアを開けると風が出て小雪が舞う!やはり予報通りのようだ・・・・・花吹雪のような雪の中で支度をし、11:40、出発。

コースタイム
 02/23:駐車場(11:40)〜新小屋峠付近(12:20)〜標高:1100m付近幕営地(13:30)
 02/24:幕営地(07:30)〜稜線(08:00)〜南峰(09:45)〜烏ヶ山(10:15/10:20)〜幕営地(11:55/12/45)〜駐車場(14:15)

参加者
 江島、三栗、栗原、新谷T、伊津見、高木、赤澤、久保、以上8名



 駐車場を出て左折、倉吉方面への分岐がある交差点へ向かう。道路の左右の雪壁が高い・・・・高いところは3mはありそうだ。ウェブサイトのスキー場情報では、鏡ヶ成スキー場で、3m!・・・・割と正確な情報である。除雪された道をたどれば交差点。本来は交差点だから四差路のはずだが、倉吉方面は全く除雪されておらずいきなり雪壁となっている。
 
 雪壁を乗り越えたところでワカンを履く。この車道も積雪3mくらいはありそうだ。雪が多くなってきたが、ここは烏ヶ山主稜の東面にあたるので風は強くない。ワカンをはくとおおむね膝下まで潜る程度で比較的歩きやすい。もう少し深いかと予想していたが、これくらいであれば今日の登行は楽勝のようだ。
 緩やかに延びる車道を行く。いくつかのカーブを縫っていけば夏の新小屋峠あたりに出る。勿論、この雪だから夏道の面影なぞ全く無いが・・・・まあこの辺りでしょう、という程度。ここから左樹林帯へはいる。

雪壁に囲まれた車道を交差点へ向かう・・・・倉吉方面は除雪されていないので雪壁に取り付く
雪壁を越えたらすぐワカンを履く・・・・・・深くても膝下ぐらいまで、比較的楽な登行となる
尾根の体をなさない雪原をいくが、ルートをはずさないためカーラ谷沿いに行く

 
 今日は、標高:1100〜1150mの適当なところにベース設営するだけである。新小屋峠付近から延びている尾根は、1230.5mの三角点近くの稜線に突上げるのであるが、下部は緩傾斜で稜線直下辺りが急傾斜となっている。下部は、幕営適地が適当にありそうだ。尾根といってもほぼ雪原状でどこ歩いてもいいが、あまり彷徨するわけには行かないので左の浅いカーラ谷につかず離れず、の感じでルートを延ばす。ワカン歩行が快適、順繰りでトップを交代する。
 
 途中、2ヶ所ほど適地?をやり過ごし、3ヶ所目の台地に出る。ここを逃せばあとはジワリと登りが続いているようだ・・・・・時間は、まだ1時半だが、今日はここで幕営!
 早速、整地、5人用と、4人用(女性用)2張設営。今日は、夕方までかなり時間があるが、アルコールも適当に荷揚しているので何とか暇つぶせるでしょう。

 雪は、絶え間なく降り続け、夕方小用に出る頃はトレースは全く無くなっていた。このまま降り続けば明日が心配になってくる。風も幾分強くなってきた。幕営している所はさほどないが、遠くで轟々と台風のような音が吼える・・・・・まるで北風に翻弄される稜線の咆哮のようだ!

いらっしゃいませ!中は暖かいですよ・・・・外は、深々、しんしん、シンシンと雪が降る!・・・一杯飲んだら、気持ちよくなってきたわ


 朝起きたら小雪である。昨日からの新雪は20cm位である。相変わらず稜線は轟々と咆えている。

 必要最小限の個人装備に、赤布の竿、テープ、ザイルを加え、7時半出発。新雪があるものの、今日は荷が軽いのでラッセルは大して苦にならない。幕営地から少し傾斜が増し、尾根らしくなってきたが最後の急登になると尾根筋は消え壁状になる。下山時、視界がなければ迷いそうなところだ。いくつかテープを巻く。

 急登のラッセルを頑張れば強風の吹き荒れる稜線に出る。出たところ正面のブッシュにいくつかの赤布があり、我々も通常のルートを辿ってきたようだ。念のため下山時のポイントにテープを巻く。休憩せずに左折する。ここから少し緩やかなくだりに入る。左手には、雪庇が出ており注意が必要だ。右からの風が強い!右手を頬あたりにかざしながら進めば小さなコルに出る。ここはカーラ谷の源頭になる。
 
 コルの左側は少し風が避けられるので小休止、ついでにワカンからアイゼンにチェンジする。雪まじりの強風下で手作業するのはいやだし、傾斜も強くなるからアイゼンが無難だろう。ワカン、ストックはここにデポすることにする。

小雪降る中、出発です・・・・さて、どこまで行けることやら?
最後の急登を頑張れば、強風吹きさらしの稜線に出る。左折し烏ヶ山に向かう
・・・・左側に大きく張り出した雪庇に注意!


 コルから少し登れば傾斜が増す。ひと登りで標高1300mの台地状のピークに出る。ここから傾斜は落ち次第に尾根が狭くなってくる。右手はブッシュがあるが左側はブッシュが無くなり、綺麗な雪稜になってくる。烏谷からの吹上が強烈であるが、フードを深く被りひたすら歩を進める。

 尾根は次第に痩せてくるが、風雪のため視界が悪く左手の稜線の位置が定かでない。右手のブッシュが雪塊になるあたりは吹きさらしの雪稜だ。下山を考え数本、赤布竿をさす。

 尾根はやがて急雪壁の下に出る。これを越えると多分、南峰だろう。北壁からの吹き上げは収まる気配を見せないので、ここからアンザイレンすることにする。前は急な雪壁だし、南峰に出ると痩せた雪稜だ。北壁側は勿論、左の南側も急角度で切れ落ちている。スリップしたり風に飛ばされたりしたら手の打ちようが無い。

コルからひと登りで標高1300mの台地上のピークに出る。風は登るほどに強烈になる
強烈な烏谷からの吹き上げ!ブッシュの尾根は次第に狭くなり雪稜になっていく
急な雪壁の取り付きに出る。南峰の北壁がぼんやりと見える。ここからアンザイレンする


 ステップをしっかり刻んで急雪壁を越えるとそこはもう南峰の一角である。左側は切れているはずだから、北壁のブッシュとの距離を見ながらトラバース気味に進むと、突然、ガスが薄くなる、というか強風がいくらか収まり、前方右手にいきなり烏ヶ山の鋭峰が姿を現した!

 夏道の岩場辺りはびっしり雪が付き、急な雪のリッジになっている・・・・・あのリッジが、今日の核心部のようだ。アンザイレンのまま南峰を通過、コルに下る。

急な雪壁を登る。風が無けりゃ普通の急坂ですが、今日の風は別物です
雪壁を越えると傾斜緩み南峰の一角みたいなもの・・・北壁側をトラバース気味に進む
ガスが取れ鋭峰:烏ヶ山が目前に現れる。振り返れば、やせた雪稜に雪煙が舞う!
南峰を踏む。正面には烏ヶ山(本峰)が立ちはだかる

 コルから少し上がった所のブッシュでビレイ、烏ヶ山本峰に取り付く。
 
 出だしはブッシュに雪塊がびっしり付ついている。踏み抜きが心配なので慎重にあがるが、どうやら大丈夫である。露岩は左から巻きリッジに出る。左手ブッシュでランニングビレイをとる。正面が登りやすそうだが、多分ブッシュで踏み抜きの可能性もあるので、右手のすっきりしたリッジラインにルートを取る。

 傾斜があり、切れた北壁に体がはみ出すので高度感良好!少しでピークに続く短い稜の端に出るが、ここはナイフエッジになっている。注意深く5mほど行けば夏の山頂岩のあたりで少し広い。ピッケルでザイルをフィックス、OK!のコールを送る。

 10時15分、8名全員烏ヶ山のピークを踏む・・・・・・皆さん、この寒い、というか強風下だから厳寒!の中お疲れ様でした!ピークが踏めてよかったですねえ。

南峰とのコルから慎重にザイルを延ばしピークに出る
烏ヶ山(1448m)のピークを踏む!・・・・・皆さん、お疲れ様!


 南峰に出て、本峰のピークを踏むまでは、幸いなるかな風が幾分弱くなっていた。これがいつもとに戻るかわからないので、すぐ下山にかかる。ザイルはフィックスされているので安心だが、下りは慎重に!最後のリッジは後ろ向きで下降、休まず南峰を登り返し、まだ残っているトレースを辿る。
 
 南峰を越えた急な雪壁を下降した頃から烏谷から強烈な吹き出し再現!所々、トレースも消えている・・・・・速く下山したい一心で、どんどん下降すればワカン、ストックをデポしたコルに到着。やれやれここまでくれば安心です。ワカンを回収、少し飲み物飲んで下山を続ける。
 
 下降ポイントまでは、すでにトレースは無かった。視界がまあまああるので助かる。下降ポイントに出る。ここで右折、所々、トレースがあるし、往路のときつけたテープもあるので問題なく下降続け、12時前には幕営地に着いた。

下山・・・・視界が結構あり、問題なく帰幕する


 テント撤収、パッキングしなおして下山にかかる。すでに昨日のトレースは無いので適当に下るが、少し行った所から右手カーラ谷にはいる。もともとこのあたりは等高線が込んでいないので、距離の割には標高が下がらない。谷はよく潜り、ラッセルトレーニングになるが、それも1時間足らずで除雪された車道に出る。

 相変わらず小雪が舞う車道をたどり、出発地の交差点を過ぎて駐車場に戻れば・・・・・・ああ、なんと我々の車2台は、すっかり雪に埋もれていました。
 
 除雪に多少時間を要しましたが、無事、鏡ヶ成を脱出、帰途につきました。参加者の皆さん、ほんとにお疲れ様でした!


テント撤収し下山にかかる
下山ルート:途中から右手のカーラ谷に降りるが、結構曲がりくねってダラダラしておりj間がかかる
除雪された車道に出る。左へ500m足らずで交差点(出発点)である
駐車場に戻ると、我々の車2台はすっかり雪に埋もれていました



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