2009年正月山行(No.1) 

南ア:赤石岳東尾根(大倉尾根) 2008.12.29-2009.01.02


 
最近、雪の訪れの早い年は暖かい正月が多かったような気がするが、今年はそうではない様だ・・・12月下旬から日本海側は降雪の日が続いている。

 お天気情報では年末年始も毎日降雪のマークである。今年の正月山行の目標は、昨年取止めた『奥穂高岳』であったが、こんなに積雪が続くのであれば、参加者3名では手がつかないだろうし、雪崩の危険度も相当高い!

 一方、典型的な冬型の気候なのだろう、静岡、山梨、飯田などは低温ながら連日好天の予報である・・・・・

 自らの実力やら天候を考慮して、最終的に27日南アへ転進を決める。その矢先の同日午後、北ア:抜戸岳で雪崩発生、偵察中の2人が巻き込まれたとの報道!小池新道入口付近にベース設営、500mくらい上部偵察中とのことだ。

 やはり予想できない箇所で発生する可能性がある、と認識しなければならない。やはりこのような天候続きでは我々の力では御しがたい、と納得する。

28日、26日から明神岳(東稜)を目指して入山していた溝尾パーティ(3名)、降雪と悪天続きのため中退、下山したとの連絡が入る。やはり冬山は気象が決めてだ。

 さて我々の具体的目標だが、南ア縦走といえば念願の赤石岳〜兎岳〜聖岳縦走!しかない。勿論、天候が後押ししての話だが、休暇は入・下山日入れて6日間あるので条件よければ可能、と判断して取り付いたが・・・・・しかし!そうです、しかし!と否定的な結果に終わることが多い昨今の”嵐”ですが、今年も・・・・・・意に反して、そのような結果に!残念でしたが、もう1回ぐらいチャレンジしたいですねえ。

参考報告
南アルプス南部:赤石岳〜荒川三山縦走 2002.12.28-2003.01.01
2005年正月合宿 南ア南部:聖岳東尾根 2004.12.29-2005.1.2


行程
期日 コースタイム 備考
 12/28  北九州〜静岡〜畑薙ダム下臨時駐車場  仮眠・休憩含み12時間
 12/29  畑薙ダム下臨時駐車場(07:15)〜畑薙ダム(07:40)〜沼平指導センター(08:00)〜赤石ダム(11:40)〜聖沢登山口(12:10)〜椹島冬期小屋(13:00)  行動時間:5時間45分 
 歩行距離:約19km
 12/30  椹島冬期小屋(06:45)〜赤石避難小屋(13:45)  行動時間:7時間 
 標高差:1400m
 12/31  避難小屋(06:45)〜富士見平(08:50)〜小赤石岳(15:10)〜赤石岳(16:10)〜頂上小屋(16:15)  行動時間:9時間30分 
 標高差:600m
 01/01  頂上小屋(07:30)〜小赤石岳(08:20)〜富士見平(11:25)〜赤石小屋(12:05)〜椹島冬期小屋(15:30)  行動時間:8時間
 標高差:2000m
 01/02  冬期小屋(07:10)〜赤石ダム(08:25)〜沼平(11:50)〜ダム(12:10)〜臨時駐車場(12:40)  行動時間:5時間30分 
 歩行距離:約19km

参加者

 新、岡村S。久保、以上3名


12/29

 畑薙ダム下の臨時駐車場で2時間ほど仮眠を取る。辺りが明るくなる頃起床、準備にかかる。天候は予報どおり快晴である。しかし、ダム行きの道路の路肩工事のためいつもより、およそ2.5kmほど余計歩かねばならない。仕方ありませんねえ、こういうときはあせらない!、急がない!ことが自分をラクにさせます。
歩き出してすぐに工事現場に出る。かなり破壊されたらしく谷下部から鋼鈑ボードで被い大径のボルトで固定してある。急峻な壁を削って造った道路だから定期的な崩壊するんでしょう。
 しばらくでダムに出る。少し冷たいが爽やかな風が吹く・・・・湖面の奥に茶臼岳から上河内岳の稜線が望める。雪が比較的少ない南アだが、2000m以上はやはり白銀の世界だ。舗装された道路を伝えば、通常の一般車両止めのゲートと登山指導センターがある沼平に着く。今日は誰もいないので、登山届けをポストに入れる。さて、ここが実質的なスタート地点で、ここまでは予期せぬ、そして不本意なオマケ!みたいなものだ。


畑薙ダム堰堤から望む茶臼岳〜上河内岳の白い稜線・・・・・寡雪とはいえやはり冬です
路肩崩壊の工事が無ければ沼平(写真右)までの車乗り入れ可能。登山届はここで提出する

 開きっぱなしのゲートを通過、以後休憩を含み平均時速:3km/h位の速度であるく。畑薙大吊橋、赤石発電所の少し上流、中ノ宿吊橋辺り、赤石ダムトンネル、聖沢登山口、赤石沢橋、プラス1,2ヶ所の休憩をこなしていけば待望の椹島入りである。林道歩きは、日当たりがよければ晩秋のポカポカ陽気で気分がいいが、日のあたらぬ箇所は路面凍結に注意が必要だ。転んで捻挫でもしたらどうしようもなくなるからね!

 『椹島ロッジ』の道標に従い、近道の急坂を下れば、多くの宿泊棟、売店などが立ち並ぶ椹島ロッジに出る。ひっそりとした広場には人影は見当たらず静寂そのものである。冬期小屋として開放された棟のドアを開けると中は真っ暗で誰もいない・・・・・が、室内は猟師のものと思われる装備や、鹿の頭部、あばら骨、などが散乱している。はて、彼らは今日帰ってきて泊まるのだろうか?・・・・

 持ち上げたビール、焼酎やらローストハムなどいただいていい気分になっった頃、吠える猟犬が帰ってきた。数人の猟師さんが戻ってこられる。簡単に食事を取り散乱した装備など手際よく片付け里に帰っていった。どうやら今日の宿泊は我々3人だけらしい。
一杯飲んで薪ストーブで暖をとりながら早めに就寝する。


畑薙大吊橋取付の休憩舎 日当たりのいい所は晩秋のポカポカ陽気
日のあたらぬ所は路面凍結に注意!
赤石ダム(写真:左)まで来ればもうひと息である
トンネルをくぐり堰堤上に出ればしばらくで聖沢登山口(写真:右)に出る
近道の急坂を下れば、ひっそりした宿泊棟、売店などが立ち並ぶ椹島ロッジに出る
これらのうち一棟が冬期小屋として開放されている・・・・・・幸せなことに薪ストーブ付き!




12/30

 今日の行程は、標高2500mの赤石小屋までである。椹島には雪は無く晩秋の装いのままである。うまく運べば、聖岳まで縦走!も可能なのでデポはせずすべて背負ってあがることにする。近道の急坂を登り林道に出れば、長い鉄製の階段があり、ここが
東尾根(大倉尾根)取付である。

 階段を登るとしばらくジグザグにつけられた坂道である。ジグザグだが幾分傾斜がきつい。標高1350m辺りで左手尾根筋に出た登山道は概ね尾根筋に沿ってのびている。取付あたりは残雪ゼロであったが、1500m辺りからちらほら残雪が目に付くようになる。

 登るほどに残雪は多くなり、そのうち登山道は雪道になる。やがて林道跡に出る。林道跡に従い左折、右に折り返して伝えばロープで遮断してあり、再び樹林帯へ入る。上部でもう1回林道に出るが、すぐ又樹林帯に入る。標高1900m位?で、もう本日のアルバイトである1400mアップの50%以上消化した勘定になるが・・・・・実はこれからの後半戦が結構時間がかかりきつくなるのである。なぜなら傾斜が落ちてからのダラダラの横引きの距離が長いのと、重い荷を担いで4時間を経過するとさすがに肩や腰の負荷がジワリときいてくるから。

 我慢と辛抱の登行、6時間で2500mの小さなピークに出る。ここに『小屋まで30分』の標識(勿論、無雪期時間)があり、前方には避難小屋の屋根も望める・・・・あと少し!のようだが、この少しが長い! 延々と1時間ほどトラバース気味に登っていくと見覚えのある赤石小屋前に出た・・・・・本日はここまで!お疲れ様です。


今日が本格的な登行となる。標高:1500m辺りから残雪が現れる
標高2200m辺りまでは調子よく行くが、次第にペースが鈍り、
小屋の見える小ピーク(写真右下)に出る頃はヘトヘト!
なかなか素敵な小屋です。床も綺麗に張り替えてありました。3人とも相当消耗しました・・・お疲れ様です!
赤石岳稜線を仰ぐ・・・・明日も好天が続きますように!


12/31

 昨夜は強風が舞い、降雪があったので、トレースが心配だったが・・・・・案の定、昨日あったトレースはほぼ消失、しかも処々に吹き溜まりができている。こんな状態だと時間がかかりそうだ。避難小屋をでてすぐ上部に建つ新しい赤石小屋まであがる。ルートである小屋の裏手のほうへ回るが、吹き溜まりで股下まで埋まる・・・・これでは先もラッセルだな!と思いワカンを履くことにする。

 新雪があり強風だった、とはいえ所々、トレースらしき?形跡があるのでそれをつなぎながらラッセルを続ける。ルートは、左手山腹をまくよう行くが、時々急な登りで尾根筋に向かい、又巻いてそして尾根筋に向かう。樹林帯の単調な登行だが、マップ上の距離よりはるかに長く感ずる時間を辛抱!しなければならなかった。

避難小屋から赤石小屋に上がるが雪が深いのでワカンを履く
小屋前でワカン装着、キレギレのトレースの形跡を追う


 しつこい樹林帯のラッセル!だが辛抱すれば時間が解決する・・・・・無雪期なら40分ほどしかかからないのになんと2時間近くもかかって標高:2700mの富士見平にでる!視界が樹林帯から解き放たれ一気に開ける!まさしくグルリと360度の展望がほしいままだ。長時間に及んだ樹林帯のラッセルがうっとうしかっただけに、フラットな雪原に飛び出した時は、快感!の一言につきる。

 ほとんどフラットな雪原を進めば左手に聖岳東尾根(2005年正月登行)が横たわるような形で聖岳ピークに延びあがっている。正面には赤石岳本峰から小赤石岳の緩やかな3000mの頂稜が展開する。赤石岳本峰の北面に落ちる3本のリッジが目を引く。資料では、中央リッジ以外の2本は、”さしたる困難は無い”とのことだが、昨今取り付くパーティはあるのだろうか?
 振り返れば、最近仲良くしている富士山が見守ってくれる。右手には荒川岳から悪沢岳の伸びやかな3000mの稜線が、この展望台を取り囲む。

 富士見平の標柱付近からこれからの登行路が観察できる。少し下るといくつかのピークが立ち並ぶラクだのコブを通過、一旦コルに下る。コルから尾根が伸び上がり赤石岳〜小赤石岳の稜線に突き上げている。ブッシュ一杯のコブとは違い、ブッシュの消え入る雪稜から白く輝く雪稜へ、最後は岩稜!・・・・先は長い!

富士見平に出ると左手には、聖岳東尾根〜聖岳、遠くに上河内岳が望める
正面には、北面に3本の際立つリッジを落とす赤石岳から、小赤石岳の緩やかな3000mの稜線が展開する
前方には、赤石山脈主峰:赤石岳(3120m)、背後に富士山を望む絶好の展望台
これから辿るラクダのコブと小赤石岳に伸び上がる雪稜〜岩稜


 夏道はコブの左手を巻くようにつけられているが、冬道は基本的に尾根どおしである。しかし実際にはコブは左手から巻くようにしてその頭に出、尾根どおしに下降、又左からまくようにして頭に出るが、ブッシュ登りもあり結構骨の折れる登行となる。登下降を何回か繰り返せば、やっとラクダのコルに出る。

 このラクダのコブの通過も、赤石小屋〜富士見平の通過と同じく気分的に疲れる所である・・・・勿論、尾根筋からの眺めはいいですが・・・・

ラクダのコブの通過。次第に本日の核心である雪稜が大きく近づいてくる

 ラクダのコブを丁寧に越えてくれば、ラクダのコルに出る。標高は2720m位だから森林限界でしょう、ここから次第にブッシュが白銀に埋没するように消え、輝く雪稜の登行にかわる。
 傾斜は強いが、登るほどに左右ともすっきりと開け快適登行となる。しかし、足は気持ちほどに動いてくれない。ラクダのコルからおよそ200mアップ、我慢の登行で2950mの小ピークに出る。

ラクダのコブ(写真右)を丁寧に越えてくればラクダのコル(写真左)
ここから次第にブッシュが消え綺麗な雪稜となるが・・・・決してラクになるわけではない!
コルから素晴らしい雪稜が展開する
背後にピラミダルな富士山をひかえた登行は快適!なハズなんですが・・・・実はかなりキツイ!

 2950mの小ピークに出る。ピークから少し下ったコルをはさんで急な岩稜が展開する。ここが東尾根の核心部である。さほど難しくは無いのだが、ザックが重いとちょっとしたことでバランスを崩しやすい。やはりザイル確保で登ったほうがよさそうだ。小ピークで登攀の準備、コルから取り付く。

 取り付きの大岩が少し要バランスである。左から回り込んであがるが、ザックの重みで体が振られそうになる。雪壁を進み階段状の岩を越えると小さなピナクル状の突起がある。ここでビレイ。約25m。次のピッチは、次の大岩を右手急な雪壁から乗り越し、更に階段状岩場をこえ雪壁を登れば上部の岩に達する。この間、約35m。掘り起こせばブッシュがありビレイできる。全体として快適だが、天候が悪く強風だったりガスったりしたら結構いやらしいかも・・・・ネ!

2950mの小ピークで登攀準備をする コルから登攀開始。取付の大岩が少し要バランス
大岩を越え階段状の岩へ取付
上部の小ピナクルでピッチを切る
1P目の登攀 1P目のビレーポイント

 2ピッチ、60mほどで核心部は終了、アンザイレンを解除する。標高は、3000mを越えた。3081mの小赤石岳まではわずかだが、これからも雪稜と岩稜が連続している。ザイルを解いたとて決して気を緩めることはできない。
 
 ふわりと積もった新雪は、いきなり踏み込むわけにはいかない・・・・そろりと踏み込んで足許の着地感?を確認して踏み出さねばならないし、逆に締まった雪が薄化粧している場合もある・・・・潜るつもりでジワリと踏み出すが、すぐ着地!階段があるつもりで踏み出したら床だった!という場合だってある。人をだますつもりは無かろうが、実に歩きにくい!
 
 うっすら新雪の所、新雪が吹き溜まりになっている所、トレースの窪みが新雪で覆われただけの所、等々・・・・・様々な形態を示すから雪稜、岩稜の登行では、輝く新雪にだまされないように!

 稜線までには、2ヶ所の痩せたリッジがある。左右鋭く切れており慎重さが要求される。ここを通過すれば最後は、急な岩稜となっている。重い足!なぜか非常に重い! その重い足を一歩一歩引き上げて、15:10 やっと小赤石岳のピークに出た。

リッジは次第に痩せる。ピナクル状の岩を回り込み(写真左)、雪壁を越えると岩稜に出る(写真右)
岩稜から雪稜へ!雪稜はもう一度次第に痩せる(写真左・中)
痩せたフワフワ雪のリッジを注意して越え急な雪壁に取り付く(写真右)
2ヶ所の痩せたリッジを慎重に通過、最後の岩稜を登れば小赤石岳(3081m)ピークに出る


 稜線に出ると右手、西〜北西の方向から射すような凍てつかせるような寒風が、中断すること無く強弱のリズムも無く一定の風速で吹き付ける。10m/s以上はありそうだ。小赤石岳から赤石岳までは、40分くらいの距離だが疲れきった重たい足では1時間くらいかかりそうだ。こんな冷気の吹きすさぶ中をウロウロしたくないが肝心の足が言うこときかないんだから仕方が無い・・・およそ1時間、たっぷり冷気を浴びて赤石岳山頂に立った。

 すぐに山頂直下にある避難小屋に駆け込む。小屋には誰もいない・・・・この時刻だから多分、今日は我々3人だろう。小屋は、直接の風を防いでくれるのでありがたいが、いわば冷凍庫のようなもので夜はギンギン冷える。

 小屋内にテント設営はあまりいいことではないが、冷凍庫にシュラフでは耐え難いのでテント設営させてもらう。限られた空間を作り出すテント内は、ガスで十分暖房効果があり快適である。

 うまく行けば百間洞あたりまで足を延ばせるかな?と思っていたがそんな皮算用、あっさり砕かれてしまった・・・・・このペースで突っ込んだ場合、うまく運んだとしても3日暗くなった頃畑薙ダム着!だろう・・・・・やはり時間切れ、となるので縦走中止を決める。

 明日の元旦は、椹島まで下山。2日ダム下駐車場、夕刻静岡、3日午前中北九州の行程を確認してシュラフにはいる。終夜、風は止まず吹いていたようだ。

右手、西〜北西から凍てる季節風が容赦なく吹き付けるなか赤石岳へ向かう
遥かなる大沢岳、中盛丸山、兎岳の稜線・・・・・・この時間に赤石岳辺りをうろついているようでは
縦走は時間切れで不可能!
赤石岳への登りより小赤石岳を望む
右手のスカイラインが東尾根で、コル上部の急傾斜部が核心部
凍て付く赤石岳山頂 山頂直下の避難小屋
3000mの稜線にあるこの小屋、室内は厳しい冷え込みに襲われる

01/01

 元旦!明けましておめでとう御座います。本年もよろしく!

 避難小屋を後にする。風は昨日と変わりなく、絶えず吹いている。山頂で記念撮影後、小赤石岳へ向かう。今日は昨日とは逆に向かって左から凍てつく氷のような風に射されながら進まねばならない。

 昨日は、夕方の西からの減衰していく斜光線に際立つ尾根を愉しんだが、今日は東からの増幅していく朝の斜光線に際立つ尾根を愉しむ。その巨大な三次元的スケールは3000mの頂稜でしか愉しめないと思う。そこを気ままに散歩している我々は、いくらかの肉体的苦痛と我慢が必要でも・・・・多分幸せなのだ、と思う。

 昨夜はよく寝たつもりだが、もう4日目だし疲労が蓄積しているのか、足取りは昨日とあまり変化無し。しかし今日は高い方から低いほうへの移動だから、昨日よりは10分早く小赤石岳に到着した。

振り返るとボリューム豊かな赤石岳が、元旦の日を浴びてその存在を顕にしている・・・・赤石岳が、南アルプス(赤石山脈)の盟主なんだと。

小赤石山頂で記念撮影して早速東尾根の下降に入る。

2009年元旦! 明けましておめでとう御座います! 穏やかな正月、2009年いい年になりますように!
北アルプスはガスがかかっているだけのように見えるが・・・・・ホントは毎日降雪!だなんて?
昨日午後とはうってかわり元旦の初日を受けて自己主張しているかのような大沢岳〜中盛丸山の山稜
圧倒的なボリュームの起伏を誇示する3000m峰の小赤石岳、荒川三山の山並
南アの盟主、赤石岳ともここでお別れである・・・・またくる日まで、バイ、バイ!
今日の仕事は、ここから2000mの下降だ!


 東尾根下降のハイライトは勿論、昨日ザイル出した岩稜だ。今日は懸垂下降で通過するつもりである。そこまでは、ノーザイルで慎重に下降する。正面に富士山の雄姿を見ながらの下降は愉しい。2ヶ所のリッジも慎重に通過、核心部に出る。大岩の下のハイマツを掘り出し、それを支点として30m下降、更にピナクル状の岩横のハイマツを支点として更に20m下降すればコルに出る。

 懸垂下降中に登ってくる単独の登山者に気がついた。ザイルの回収に少し手間取っている間、2950mのピークでじっと我々を観察していたが、シビレ切らしたのか登りはじめる。丁度、2ピッチ目の懸垂下降中にすれ違うことになった。山なれた方なのか、何事もなさそうな風で我々を避け、スイスイと登っていった。手間取った原因は、30m×2だったので回収の時、結び目が引っかかった為だ。ケースバイケースだが懸垂下降のある場合は1本がいいようだ。

 更に御夫婦と思われる2人連れと会う。これで本山行であった登山者は3人・・・・正月で好天だからもっと多くてもよさそうだが、やはり林道歩きがネックなのだろう。
 綺麗な雪稜を下り、ブッシュのラクダのコブを登り返して行く。急なコブの登りが実にきつい!
しばらくの我慢から解放されやっと平坦な富士見平に出た。ここからは樹林帯に入るので危険箇所は終わりである。赤石岳や荒川岳の雄大な展望もここで見納めである。

山並みの向こうにピラミダルな富士山を正面に見据えながら東尾根を下る・・・・コレ、痛快!
懸垂下降する我々をじっと観察する2950mのピークに立つ登山者 本山行中初めて会う登山者と核心部ですれ違う
今回のメンバーは、40代、50代、60代の代表?です
綺麗な雪稜を下り、ブッシュのラクダのコブを越えていくと富士見平
ここで危険箇所は終わり以降樹林帯に入る
富士見平から望む荒川三山。ここで見納めです

 富士見平を後にする。これから椹島までは樹林帯の下降である。特に危険箇所は無いので辛抱して下るだけだ。『小屋まで30分』の標識のあった小ピークまではトラバースだが結構下降している。登る時はここが最後のピッチになるので精神的にも疲れるはずだ。小ピークから急な下りだが、下降する尾根を取り違えないようにしなければならない。トレース無しでガスっていたら要注意!

 下るほどに雪が消えていく。所々にある落ち葉の吹き溜まりを漕いで下るようになると椹島は近い。山頂を出発して8時間後、15時半に再び椹島冬期小屋に戻ってきた。登りは2日間で16時間かかったから、約半分の時間で下山したことになる。

 17時過ぎた頃、単独の登山者が戸をあける。椹島と悪沢岳ピストンで、悪沢岳方面では誰にも会わなかった、とのことだ。外で小枝を集め、ストーブに火がはいるとホッとする。少し隙間風が通る小屋だが、やはり冬期はありがたい。

富士見平から樹林帯の下降・・・・・下るほどに雪が消え、落ち葉を漕ぐようになると椹島は近い
東尾根登山口の階段 もう一夜、この冬期小屋に厄介になる

01/02

 13時駐車場到着目標とし、7時過ぎ出発する。昨夜は、夕方から小雪になったが積雪はほとんどなかったようである。近道から林道に出る。今日は、45分歩き5分休憩を守って淡々と歩くことにする。サッカーもラグビーもハーフタイム45分だから欲張らずにまめにリズムを持って歩いたほうが結果的には楽?

 入山日から4日たっているが、路面の凍結箇所が増えており結構冷え込んだようだ。赤石ダム湖も白く氷結しており確実に寒くなってきているようだ。基本的に下りだが、途中の登りが数箇所ある。ギアを巧く切り替えながら淡々と下れば、やがて畑薙大吊橋に出る。ここで4人の登山者にあう。茶臼方面から下山中のようだ。すぐ先の休憩舎に自転車が4台デポされている。自転車!か・・・・閉鎖された林道の移動にはいいかもしれない。

 『お先にー!』と、自転車4台があっという間に我々を追い越して去っていく。自転車使うんだったらザック背負っての自転車乗りのトレーニングもいるねえ・・・など言いながら沼平をすぎ、今回のオマケ部分をあるき畑薙ダムに出る。吹く風がちょっぴり冷たい春風のようで心地いい!

 ほぼ予定通り、12時40分駐車場到着でした。

 皆さん、お疲れ様でした。エネルギーの50%位は、林道歩きに消費されたかもしれませんが・・・・・赤石岳は、なかなかいいヤマでした。もうこの林道歩くことは無いだろう!と思いますが、人は忘れっぽいですからまたぞろ出かけてくるかもしれません。

7時過ぎ出発。少し冷え込みが厳しくなってきたのか路面凍結箇所増加、ダム湖も氷結
記念すべき林道歩きを終え無事怪我もなく駐車場に到着。皆さん、お疲れ様でした!

    我々の登行スピードが遅すぎるとは思いませんが、もう少しスピードアップするためには軽量化が重要だと判断します。
        特に、食料!1日目は、贅沢したいのでビールやら肉やら運びますが、2日目以降は検討の余地があります。
        実際問題として、寒気のなかで行動食はほとんど口にしませんし、疲れきるとアルファ米にたいしても食欲をなくすのが現状です。

        雪山を愛する皆さん、知恵を絞って軽量化に努めましょう!


Reported by Y. Kubo
Photo presented by S.Okamura & Y. Atarashi