アラスカ:デナリ(マッキンリー)遠征 No.3


★MC(Medical Camp:4330m)〜HC(High Camp:5250m):【6.19〜6.23】

活動報告

6.19 昨日疲れきったので今日は朝寝坊。10:00に起床する。天気は快晴、乾いた微風が吹きすばらしい休養日になりそうだ。遠くアンカレッジ方面まで晴れわたり,アラスカ山脈南西端や、アンカレッジ東方に位置するチュガッチ山脈?、ランゲル山地?の山々も望める。

標高は4300mを越えているが今のところ全員快調!非常に気分がよく昨日までの疲れも一気に吹っ飛びそうな爽快さである!日があたる所では気温4℃、湿度21%である。

すぐ近くに幕営していた日本人2名の情報では、6/14-6/18頃のMC、HC滞在組は悪天の為登頂のチャンスを逸したとのこと。6/17は大雪で大変な目にあったらしい。

1人は一旦C3に下降、出直すとのこと、もう1人はタイムアウトで下山するらしい。我々は悪天の後、MCにきたのでタイミングとしてはいいかもしれない。


荒木さんが持参されている血中溶存酸素濃度計で高度順応状況をチェックする。全員、80-85で概ね良好。計測器は、一寸高価だが高所は気合だけでは登れないので客観的なバロメーターで健康管理(高度順応状況チェック)したほうがいいとおもう。


       MCベースキャンプにひるがえる『嵐』隊旗
           (原田の手によるオリジナルです)⇒

レンジャーが常駐しているMCでは毎日天気情報が出される。予報はしばしば外れるらしいが・・・・それでも傾向はつかめ筈だ。それによると20〜21日(月)は晴れ、22日(火)は曇、23日(水)〜24日(木)は荒れ模様で積雪と70mph(32m/s)の強風とのこと、25日(金)は次第に弱くなり晴。
 何時、HCにあがるか判断が難しくなってきた、がいずれにしても明日は、4900-5100m位まで荷上げする予定。


午後から、来るべき?強風に備えてブロックの強化し明日の荷上げに備えて荷物を整理する。HCでの滞在は極力短くすることにして、食料は行動食とスープ類、火器はガス、アタック用として4人用ダンロップを荷上げする事にする。

岡野さん来訪。MSR囲んでなにやら井戸端会議風 ハンターとフォーレイカーを飽きるほど眺めて過ごすMC

6.20 快晴!今日は荷揚げの日だ。アンザイレンして8:15出発。まずウェストバットレスの側壁となる雪壁を登る。初めは傾斜は緩いが次第に強くなる。稜上のショルダーは標高4940mだから標高差はおよそ600mである。2/3位のところに大きな氷塊があり大テラスがある。途中1回休憩してここまで上がる。ここまでは単なる急な雪壁で難しい所はない。

テラスから稜線に向かって左にトラバース気味に上がるとフィックスがある。右が登行専用、左が下降専用である。ユマールをセットし、登行開始。ここから傾斜は増し強い所では35°に達する。およそ200mのユマーリングでショルダーにあがる。


ショルダーにあがると対面に黒い岩峰を連ねたマッキンリーの主稜線が飛び込んでくる。エベレストにイエローバンドがあるように、マッキンリーにはブラックバンドがあると聞いたがこれか・・・・・標高5000m以上にあるようだ。

ここから岩と雪のリッジ゙を進む。右下にMCが望める。俯瞰すれば雪の台地は広大で、MCなんて吹けば飛ぶような小さな痘痕に過ぎない。リッジはさほど痩せてはいないが左右は切れ落ちている、又、雪壁が部分的に氷化しており慎重なアイゼンワークが必要だ。5000mを越えるとさすがにきつくなる。

ショルダーから1.5時間ほど行ったフィックスのある顕著な岩塔手前で本日は終了とする。丁度、5100mくらいである。少し谷側にキャッシュする。

高度順応の為、1時間ほど休憩。じっとしていると結構冷えるので羽毛服を着る。ボーッとしていると1時間は瞬く間に過ぎてしまう。
15:30、MCへ帰還開始、17:15MC着で本日は終了。今日は5000mを越えた。体調まずまずだ。あと標高差:1000m、何とか行けそうだ!

MC(メディカルキャンプ)からサミットまでのルート(空撮)

雪壁の登行。雪原のシワシワはMC 氷のテラスを越えると200m近いフィックスをユマーリング

毎日見ても見飽きる事のないカヒルトナ氷河。すぐそこのようだが標高差は、3000m近い

     岩と雪のミックスしたリッジを行く。カリカリだからアイゼンワーク注意 フィックスのある岩塔。左斜面にキャッシュ

6.21 天候は晴。今のところ予報通り。予報通りであれば、25日(金)にHC移動、26日(土)アタックになるが・・・・どう展開するか? 
昨日仕事したので今日は嬉しい休養日!遅く起きてブランチとする。

松本さんたちのグループは昨日到着。今日は荷上げとのこと。岡野さんは昨日荷上げしていたようだ。

天気良好良好なので、テントサイト横に溜まり場を作り、お茶しながらよもやま話で過す。難しい話は無しでダラダラ過すのも楽しいものである。こういう時間が取れるのは遠征のいいとこだと思う。通常の冬山だったら毎日歩きっぱなしで休養日なんてないからネエ。・・・・松本さん、岡野さんもちょくちょく顔を出す。

午後になって大谷(ディレクター)さんを含む日本・アラスカ合同の大蔵隊(植村直己冬季単独登頂20周年+気象観測機器設置15周年記念事業)12名到着。観測器材の取替と登頂が目的とのこと。
2002年4月号、『山と渓谷』に掲載された『新連載 世界の名峰を登るーマッキンリー』は大蔵さん執筆によるもので、マッキンリー登山の要点を簡潔にまとめ、しかも必要情報が全て網羅されたもので、著者紹介蘭にマッキンリー登頂12回とある。
飲んでばかりじゃいけないので、強風に備えてそのマッキンリー熟知の大蔵隊が積んだブロックと同じ方面のブロックを強化する・・・・何事も学ぶことが重要です。

6.22 朝方、かなり冷え込む。5:00起床し天候チェック。アンカレッジ方面は雲海の下、バットレス頂稜はうす雲、フォーレーカーには雲無し。予報じゃ曇りだが、どちらかというと今日1日持ちそうな天候だ。8:00になったらもう1回チェックすることにしてシュラフにはいる。8:00過ぎもう1回観測するが先程より好転・・・・どうも天候が予報よりずれそうだ。

しかし気圧は昨日からジリジリ低下を続けている。C3で吹雪になった時も前日から低下を続けて結果的には悪天になった。確たることは言えないが、天気の周期が大きくゆったり動いているような気がする。レンジャーの予報では、今日は晴→曇だが水曜日〜木曜日の『雪と風』の予報はそのままである・・・・・判断が難しいが、ずれたにしても今週のうちに1回は荒れそうだ。問題は荒天をMCで過すか?HCで過すか?・・・・残り日数を考えると早めにHCにあがったほうがいい、しかし居心地は、HCよりはMCの方が快適である。MCにいて荒天を過し一気にアタックすることも可能!ではないか・・・・結局、もう1日待つ、ということにする。

大蔵隊は、荷上げに出て行った。結果的に好天での停滞になったので昨日同様のんびり過す。松本さん、岡野さんも休養日!

みんなで(左から、岡村、高木、荒木、原田、岡野、久保、松本)で『お茶しましょう!』

6.23 予報では曇だったが晴!雲海の上にデナリがある。フォーレーカーに雲無し、ハンター頂上部には雲。デナリに来ていくらも経っていないが、ここ数日の実績では、朝晴れていたら1日もつ可能性大!

松本さんグループ、行動開始。岡野さん、8:30出発。その他も殆ど動くようだ。我々もHCにあがってチャンスを狙うことにする。準備し11:05出発、荷があるので急がない。それでも先日より早く14:30には5100mのキャッシュ地点に到着。荷を回収しHCへ向かう。少し風が出てくる。リッジ上の黒いピークを回り込むとHCである。

1800、HC着。丁度、大蔵隊が荷上げを終わりMCに帰還されるところだった。

荒木さんが先行されており、すでにテントサイト構築中。我々もすぐ作業開始するが、さすがに5250m!すぐ息が切れる、だるい!大蔵さんのアドバイスでブロックは二重に積むように、とのこと。前回の荒天時は相当数のテントが破壊されたと聞いていたので、頑張って設営場所からブロックを切り出し周囲に積み上げる。切り出した分レベルは下がり周囲は上がるので効率がよい。

2時間ほどで2張り分完成したが、岡野さんの分が少し足りない。さらに1時間頑張って拡張、テント3張り分構築する。21:00全て落成!お疲れ様です!


HC到着した頃から風が強くなり始める。やがて雪混じり・・・・21:00には口ひげがすっかり凍りついていた。どうやらレンジャーの予報通りになりそうだ。こうなったら出来るだけ早く荒天が通り過ぎてくれればいい・・・今日から4人用テント、荷物入れれば狭いので最小限テント内に持ち込む。水を作り、行動食と飲み物を摂る。今日は結構しんどい1日になった。さすがに5000mを越えるときつい!ちなみに気圧は、530hpaくらいだから平地の50%しかない。

夜半から風雪になり一晩中テントをたたく音が絶えなかった。


氷のテラスから左上するとフィックス キャッシュを回収、HCに向かう。稜線のコルはデナリパス。
黒い岩塔を回りこんだ右奥の台地がHC


HCに到着。標高は5250m、空気の稀薄さを実感する高度に達する

トップページに戻る
★C3(3350m)〜MC(Medical Camp:4330m):【6.15〜6.18】
★HC(High Camp)〜マッキンリー山頂〜MC〜C1:【6.24〜7.01】