アラスカ:デナリ(マッキンリー)遠征 No.4

★HC(High Camp:5250m)〜マッキンリー山頂〜HC〜MC〜LP:【6.24〜7.01】

活動報告

6.24 朝から風が強いし雪も舞っているし、視界もよくない。とてもアタックできる条件にないので停滞とする。ガスカートリッジの大2ヶしか荷上げしていない。2-3日続く可能性あるので少し燃料を節約せねばならない。食料も主食のα米はMCにおいてきたのでこちらも少し心細い・・・・・ガスたいてのんびりしたいが、そうもいかない。仕方ないから1日シュラフ暮らしとする。
あと1日晴だったらアタックできる。いよいよ大詰めだ。

HCにきて頭痛が酷くなったようだ。倦怠感も有り3名が調子がよくない、とのこと。これまで薬は服用していないが、気分悪いようだったら飲んだ方がいい、ということで常用の1/6程度飲んだら覿面に効く!スーッと痛みがひいたとのこと。1/6程度で、多くとも2-3回服用だから副作用もあるまい・・・・で緊急対策として服用することにする。

14:00頃より風も弱まり所々青空が見える。今日1日で悪天、通り過ぎてくれればいいが・・・・・気圧は朝方より上昇傾向にある。明日の好天を祈願し早めに就寝。

6.25 昨夜は酷い風だった、が積雪はさほどでない。ガスがかかり視界はよくないものの風でガスが流れ時たま青空が見える。気圧も昨日から上昇傾向が続いている。このパターンでいくと晴れが期待できそうだ。

松本さんのガイドの話では、稜線は強風・・・・で、今日は停滞、明日アタック、とのこと。その他のパーティも動く気配はない。

10:00過ぎるとガスが取れ辺り一体がすっきりとしてきた。外にでてみる。他のパーティもぞろぞろHC台地の散歩を愉しんでいる。台地の端に行くと真下にMCが俯瞰できる。細かい粒のようだ。

遠くに目を移すと、そりをひいて辿ってきたカヒルトナ氷河が高度差:3000m下方に望める。午後になると風はあるもののすっかり快晴になる。

15:00、2名がデナリパスに向けてスタートしたが、途中で引き返してきた。今日はまだ新雪が不安定なのかもしれない。

メディカルチェック:MCでは、80-85だった酸素濃度は、HCで70-75。一寸低めだがまあまあの数値、だとのこと。岡野さんのラジオ予報では、明日アンカレッジは晴れ!とのこと。
いよいよ明日、アタックだ!頑張ろう。
二重のブロックに守られた我々のテントサイト

6.26 快晴の朝がきた。絶好のアタック日和だ。殆どのHC滞在組がサミットに向かう。我々は10:00出発。すでにデナリパスへのルートは、ズラリと一列縦隊!

デナリパスにでた途端凍傷になる人が多い、とのこと。どうせ汗かくほど早く歩けないんだから初めから羽毛服を着用する。デナリパスまでの標高差は、僅か300mだが非常に長く感じる。傾斜は強くないが、フィックスできるように数箇所支点が設置されている。荒木さんがスーッと追い抜いていった。


5547mのデナリパスに出る。少し風は強いが思ったほど冷たくない。ここから方向を南に転じて尾根筋の左斜面を登る。傾斜はさほどないもののすでに5500mを越えているので苦しい。一歩、又一歩・・・・

 途中で先行した岡野さんと一緒になる。又、タルキートナから我々と前後して入山したクライマーの大部分は、我々と前後して登行しており、挨拶を交わす・・・・しかしみんな追い越していく。早いしパワーがある!


 ←天候回復したHC。尾根ノコルはデナリパス
 


アタックの朝、デナリパスへ向かい一斉に出発 デナリパスから南に転じてリッジの左斜面を辿る

小高い丘を越えると眼前に平坦なだだっ広いフットボールフィールドと呼ばれる雪原が広がる。雪原は次第に傾斜を増しマッキンリー南峰に続く頂稜につながっている。我々の後から出発したパーティに追い越され最後になってしまった。少し前を松本さんのグループが先行している。

雪原の中央部にザックをデポ、小休止した後最後の登りにかかる・・・・・登頂した人が降りてくる。荒木さんは2番目に降りてくる。ざっとみて2時間は早い!荒木さんは今日中にMCに降りるとのことだが、我々はHC到着時刻次第ということにする。

苦しいのぼりが続く。正面の小丘を越せば山頂が視界に入る 広大なフットボールフィールド。
正面の雪壁を詰めると待望の山頂に続く頂稜だ

頂稜に出る。やせているがアイゼンがしっかり効くので危険は感じない。伯耆大山の稜線くらいだ。一歩が重い、がもう一息!・・・・・・・

19:00、無風快晴、標識も何も無い最高地点に立つ!・・・お疲れ様!・・・次々と山頂に立つメンバーと握手!


頂稜に出る。正面奥の山頂までもう一息だ! 頂稜から広大なフットボールフィールドを俯瞰する


山頂に至る雪稜。ナイフエッジだが注意さえすれば難しくない


後僅かで山頂!先行者が下山してくる・・・Congratulation! 19:00、全員、快晴・無風の山頂に立つ!

今、北アメリカ大陸の最高峰:6194mに立っている。LPから15日目と日数はかかったが、比較的すんなり立ってしまった。


さえぎるなにものもない360°の広大な風景、大きく蛇行してアラスカの原野に消え入る白い帯の氷河、山頂から派生する切れ落ちる雪稜、何もかも目を奪うが・・・・・・やっと半分終わった!安堵感に浸る・・・しばし心安らかな山頂を愉しむ。



20分程して岡野さんが登頂!御疲れ様でした。決して早くはないが、その落ち着いた確実な歩みには脱帽する。




←5名で登頂を祝する!


マッキンリー山頂からは、ハンターもフォーレイカーも全てが眼下に!


我々5人以外は、誰もいない山頂!もう登ってくるクライマーもいない。
僅かの時間だが、誰にも邪魔されない開放感に浸る。


19:40、下山にかかる・・・後、半分残っている。無事下山して初めて完了だ、LPまでは気が抜けない・・・安全第一!

フットボールフィールドでザック回収。今日はHC泊りとし、あすMC経由でC1まで下山することにしてのんびり下降する。

夏至を過ぎた今、暗くなることはないが21時を過ぎるとさすがに陽が少し傾く。残照の山が楽しめる時刻だ。見下ろす山岳に陰影がつくと急に立体感が増す。

HC着は、0:30。本日の行動時間は、14.5時間であった。荒木さんはテント撤収、予定通りMCに下山されていた。



←19:40、下山にかかる。気分が高揚しているから登りよりも注意が必要だ!

少し翳った陽に映える河川・湖沼 デナリパスから山頂に向かう途中に設置されている気象観測計

6.27 ント撤収する。昨日HC入りされていた大蔵隊に下山の挨拶をして08:15出発。MC着は、10:15。荒木さんの出迎えを受ける。お湯を沸かしていただき腹ごしらえする。大休止とし4日ぶりに白飯を食べる。美味い!MCの6人用テント撤収、そりへの積み込みやザックのパッキング、等で結構時間を食った為、MC出発は、14:00になる。そりを引いての下山もなかなか難しい!そりを前方に流して下るのだが単純な斜面は問題ないが、傾斜地はそりがずれて大変だ。

C3で残りを回収、そのままのんびり下山を続ける。スキー下山組がサーッと通り過ぎていく。荒木さんもスーッと氷河に消える。
C1着:21:30。簡単に整地して幕営。あたりに荒木さんの姿はないのでLPまでいかれたようだ。。

HCより撤収する。ザックは満杯! ミックスのリッジは慎重に!今日は風もなく快適!

そりを前方に流しながらの下降もなかなか難しい

6.28 ここまでくればLPは時間の問題。天候まずまずだから飛ばないことはないだろう。今日中にタルキートナに帰れれば十分だ。アンカレッジで買い物の時間も取れる・・・・・こんな胸算用!・・・・・C1を6:00出発する。2週間前と違ってクレパスが広がっているようだ。トレールは裂け目を大きく迂回するようにつけられており意外と距離がある。それでも下山だから気分は上々。やがて軽飛行機の発着が視界に入る。やっぱり飛んでいる・・・・思ったとおりだ。

最後ののぼりにかかる。およそ200mの登りだ。・・・・もう滑走路の横を歩いている。9:45、待望のLP着・・・・・我々の足で歩く山行はこれで終りである。お互い健闘をたたえあう。

LPで待機いているのは数パーティである。受付をすまし、デポ荷を掘り出す。係員から、Japanese Partyの出発は、11:30と告げられる。
ねらい通りである。折角のデポ荷だ、もって下りてもゴミだから全部たいらげましょ・・・・焼酎のんで、ベーコン食べて、なぜかしら甘い玉葱も、チーズも・・・全て飲んで食ってしまう!

周りの風景は2週間前とはだいぶ違い雪解けが進んでいる。近くのハンターやフランシスからひっきりなしに岩なだれや雪崩の轟音が響く。

しばらくすると、松本さんたちのグループが降りてきた。再会を喜んだが、どうも様子が変だ。
聞くと、下山中に死傷者3名を出す事故発生!とのこと。ウィンディコーナー辺りで大規模な落石があり」、丁度下山中のパーティを直撃したとのことである。我々が通過後の数時間後の事故である。不運!・・・・・
ガイドの話では、ウィンディコーナーでこのような規模の事故は初めてだ、とのことだ。

山では、人の思いとか能力とかとは無関係に、どこにいても、いつでもアクシデントとは隣り合わせにいることをあらためて実感する。

この事故の為後から到着したがわれわれが先発したい、とのこと・・・・・勿論、了解です。早く怪我された方のお見舞いに!・・・・・でもなぜか離陸しない?
今度は、入山の時と違いタルキートナの天候がよくない!という。逆もありか!・・・・・ああ、急に意欲が失せる。でももう少しだ、待ちましょう!

結局、11時以降は誰も離陸できず全員LPステイとなる。

C1設営・・・ねらい通りであれば後1夜限り、のはずでしたが LPへ下降を続ける・・・今日はビールが飲めるかな?

LP目前!頑張れ〜ッ ひっきりなしに岩ナダレが発生するフランシス

6.29 昨夜は、3:00頃から強風に加えて多量の降雨を見る。5:00過ぎには峠を越えたが、入山した時は曇っても雨なんて降らなかった。僅かの間に確実に季節は進んでいる。LP周辺の雪崩、岩なだれの轟音はしょっちゅうだし、MCから下山中も氷河の底から聞こえる水流音がうるさかった。クレパスが縦横に走り、口を開くのはまじかなんだろう。やはり6月中に下山できる行程出よかったと思う。

今朝のLPは視界まあまあだが飛び立ちそうな気配はない。多分、タルキートナがダメなんだろう・・・・・今夜の深夜便に乗れるのか?
午後になる。変化なし・・・・・14:30、手配師?の女性が、滑走路となる氷河を整備するようにウェイティングいている全員に呼びかける。全員で100人以上?、長さ:500-600mにわたりスノーシューズやスキーで凹凸を無くし踏み固める。どうやらトライするようだ!

15:30頃、確実マイペースの岡野さんが到着する。ゆっくり休み休み下山してきたとのこと。

予想通り、17:00、昨日から駐機していた1機が離陸。すると入れ替わりに1機がすぐ着陸してきた・・・・動き出した!これで松本さんグループはテイクオフ。
松本さんとはここでお別れ!ではなく我々もすぐ出発したのでタルキートナ空港でまた会う・・・・・ここでお別れになりました。アラスカの話題有り難う御座いました。


時間をおかずして・・・・・Japanese Team!  Areyou ready?・・・・・・・Yes, we are ready to go・・・・なんとすぐもう1機がランディング。やった!今夜の便に間に合う!.
岡野さんは順番が遅いので明日になりそうだ。岡野さんとはここでさよならになる。おかげで愉しい山行になりました。有り難う御座いました。


嵐隊4名、17:35、テイクオフ。見る間に白い帯の中にLPが遠ざかり小さな点になる。・・・・・3週間足らずであったが、満足の行く山行であった。マッキンリーよ、有り難う!
今日は大気が安定していてあまりゆれない。雪解けの進んだ山岳をすり抜けると久しぶりに緑の大地を見る。1000m足らずの高度だから樹林帯や湖沼、雪解け水の川、草原、蛇行する大河、がくっきり!無機色の世界から命あるこの世に帰ってきたようで眩しい!

18:10、タルキートナ飛行場に着陸。荒木さんの出迎えを受ける。・・・・・お疲れで〜す!

荒木さんは、タルキートナで大蔵隊を待つとのことで、ここでさよならになる。
入山から下山まで御一緒させてもらい極めて有意義な愉しい山行になった。貴重なアドバイスが我々にとって最初の高所登山をサポートしてくれた、と思う。
有り難う御座いました。心から感謝します。

あまり時間がない。TATのロッジでシャワー、レンジャーステーションにいったがすでに終了していたので下山の報告はTATに依頼。お土産購入。ビール飲みながら荷物を整理、20:00加藤さん手配のシャトルバスに乗り、アンカレッジに向かう。21:45、加藤さん宅に到着。預けてあった荷物を含めて再度パッキング、2ヶ口にまとめる。

作業終了後、町に出たが23時を過ぎておりレストランはクローズ。仕方ないので戻り、もう1度シャワーを浴び出発まで待機する

久しぶりのLP。もう歩かなくてもいいから自然にリラックス・・・・
これで思い通りにテイクオフすれば申し分なかったのですが・・・なかなか思い通りに行かない

タルキートナへ帰還する・・・・久しぶりの緑が眩しい TATのロッジでビールを飲みながら荷物整理

6.30 02::00、出発。アンカレッジ空港:2:30。チェックインする。フライトは、04:25。待合室からはじめて日本に帰国の電話をする。そして日本時間の21:25、アラスカを後にした。

7.01 仁川空港着:06:05。出発は、08:00。福岡空港着:09:20。
到着ロビーに仲間の出迎えを受ける。皆さん平日にもかかわらず有り難う御座いました。又、帰国便の電話はしたが、登頂したかどうかは話しておらず御心配をおかけしました。

【本報告は、Y.Kuboが代表してまとめました。参加者の気持ちを反映できていない部分も多々あるかと思いますが、御容赦ください。又、写真は、S.Okamura及びY.Takaki撮影によるものです。】

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★MC(Medical Camp:4330m)〜HC(High Camp:5250m):【6.19〜6.23】