細尾沢(正沢川)〜木曽駒ヶ岳

 08/27: 今日は長い1日になる。4時起床、朝食は少し体を動かした後摂る事にしてツェルト撤収、出発の準備をする。04:40、少し明るくなったので出発する。15分ほどののぼりで駒ヶ岳山頂到着。御来光を拝しようとすでに数人の方がじっと待っておられる。我々は下山なのでそのまま通り過ぎる。すこし下ると、明日遡行予定の細尾沢上流部が右下に見える。カール状地形の潅木帯でのどかな感じである。山頂を目指す10数名の登山者とすれ違い、下降すれば玉ノ窪山荘である。人気はなくひっそりしている。今年の正月、風雪を避けて休憩した山荘の壁横を通過、福島Bコースにはいる。

玉の窪山荘から望む三の沢岳、熊沢岳、空木岳

細尾沢遡行〜木曽駒ヶ岳登行ルート概念図


 しばらくはお花畑の中の登山道をたどる。お花畑から次第にダケカンバやナナカマドの潅木帯にはいる。登山道は明瞭だが、通う登山者が少ないのか心なしか寂れた感じの登山道が続く。

 やがて8合目の水場に出る。ここは水量豊富で、いつでも清水が得られることになっているが、今日は渇水している。昨日、千畳敷で指導員がおっしゃっていたように8月にはいって本格的な雨は降っていないのだろう。

 この辺りから、牙岩〜麦草岳の裾野を巻くように登山道はつけられれているが、大岩帯やハシゴの登下降、トラバースが多く結構疲れる。歩きやすい樹林帯にはいると7合目で避難小屋がある。ここで福島Aコースを左に分岐、本格的な下降にはいる。

【写真左:7合目。福島Aコース分岐】

 ひたすら下れば4合目半の力水、一息入れて更に下れば幸の川右岸に出る。渡渉すれば次は林道である。しばらく下降すれば木曽駒高原スキー場に出る。到着は、08:50.  【写真右:人気のない木曽駒高原スキー場】


誰もいないオフのキー場で休憩。頂上から4時間強かかった。下山であれば本日はこれでオソマイ!だが今日はまだ道半ば。今からが本番である。気分を一新して09:05出発。

 キャンプ場横の茶臼山への登山道(林道)をしばらく伝うと、分岐があり左へ『茶臼山』の標識がある。ここから登山道となる。

 しばらくで又、標識があり直進は『沢登』、左が『茶臼山』、勿論、『沢登』ルートをとる。結構踏まれているが、次第に薄くなるので見落とさずに辿れば次第に沢音が大きくなり正沢川の河原に導かれる。09:45河原着。ここは標高およそ1500m前後。


シラカバの林が綺麗なキャンプ場横の林道 茶臼山コースにはいる 右沢登りコースへ

 ここで大休止し沢装備装着。10:10出発する。ここは二俣になっており、左が本流のはずだが、右が圧倒的に水量が多い・・・はてな?と思ったが左をとってしばらく遡れば本流が右に分岐しておりそちらのほうが水量は多い・・・・それで大きなインゼルになっていることがわかった。この辺りは川幅が広いのでインゼルもデカイ!上流には更に数ヶ所のインゼルがある。

 記録によると細尾沢出合いまでは、単純な河原歩きとのことであるが・・・どうして、どうして結構疲れる。大岩が多く、右に行ったり左に行ったり、あるいは乗り越したりするので見掛け以上に労力を使う。ちょくちょく休みながら飽き飽きするぐらい辿ってようやく玉の窪沢出合い(地形図標高:1730m)に達する。時刻は、11:40、取り付きから、1.5時間かかった。

 少しばかり川幅が狭くなり、標高もジリジリあがってきた。あと150m近く行けば細尾沢出合である。先が見えてきたので大休止・・・大きなテーブル岩上に横になって休むと気分は最高!・・・

 気温は低く風もあり登行には快適なコンディションのはずなのに・・・・・足があがんない! 足が棒になりそう!
 

【写真右:平たい岩に寝ころんで休憩するオジサン】


【入渓地点〜玉の窪沢出合】
玉の窪沢出合

【玉の窪沢出合〜細尾沢出合】

玉の窪沢出合〜細尾沢出合。少しは沢らしくなってきたが、お疲れ度も高まる
平たい岩で横になると最高!

 そよ風に吹かれて休んで居たいが、そうもいかぬ。腰をあげて本流に戻り右へ左へさまよえば、ようやく細尾沢出合い(地形図標高:1895m)に到着する。時刻は、12:40である。やれやれやっと入り口に着いた。今日はもう少しだ。
細尾沢も幅が広く、開けているので沢の奥まで見通しが利く。流木の塊をかわしてしばらくたどると10mほどのナメ滝、右岸沿いに越えるとゴーロ帯出ある。

 しばらぃいけば奥のほうに大きな直瀑の滝が見える。あれが大滝だな・・・・・やっと本日の目標をキャッチした。もう少しだ、元気出して滝下近くまで行く。2段40mというだけあってなかなかの迫力である。あとは高巻きで終わりだからゆっくり休憩する。

やっと細尾沢出合に到着 流木が多い スラブのナメ滝。左から越える

(写真上)しばらくゴーロを辿る
(写真下)奥に直瀑の大滝が見えてくる
2段40mの細尾大滝。地形図にも滝記号の記載がある

 記録では、おおよそ3通りで高巻いている。一つは、大滝の対面にあるルンゼを詰め、涸れ棚をトラバースして落口に至る、もう一つは滝の左にある急でガレたルンゼを詰め樹林帯に入り落口に至る、他の一つはこのルンゼより少し下流のブッシュの尾根を登り落口に至るルートをとっている。我々は、安全で時間的にも短くて済みそうな最後のルートをとることにする。

 13:40、腰をあげる。少し戻り右岸の急なブッシュに飛び込む。岩混じりの急な尾根のぼりだが、ブッシュがあるので比較的スムーズに登れる。適当な所からトラバースすれば、ルンゼの上部を通過、更に進めばひどい倒木帯にでる。これを乗り越せば視界が開け右下に落口!約30分間で巻くことが出来た。

大滝を巻けば本日は終了! 巻きルート:数段30mのガレ沢 右岸も切り立っており厳しそう!

高巻きルートからの落口 広いテーブル岩より大滝の落口を覗く

 落口の大きなテーブル岩で休憩。この岩の上でもビバーク可能だが、落口側に傾斜しており精神衛生上よろしくない。横のブッシュの中も張れないことはないが・・・少し上流を探すことにする。5分ほど遡れば、僅かな広さだが砂地が見つかる・・・14:30、本日の行動終了。今日はここでビバークすることにし、30分ほど作業して2人分造成、ツェルトを張る。

 今日は、昨日よりも疲れがひどい・・・・下降の4時間はまだしも、細尾沢出合いまでの河原歩きが堪えたようだ。しかし明日は快適な遡行になるはず!
気分いれかえてがんばりましょう!・・・・・残念ながら、今日はアルコールがない。昨日、500mLを3本ずつ飲んだので持参しなかったが、やはり持参すべきであった・・・後悔先に立たず!

 アルコールなければ、何とも手持ちぶたさだ。焚き火もおこす気もおこらず早めに就寝する。

落口から5分ほど遡った僅かな広さの砂地を本日のビバーク地とする

 【08/27のコースタイム】:
 幕営地04:40〜駒ヶ岳04:55〜7合目福島Aコース分岐06:50〜スキー場08:50/09:05〜正沢川取付09:45/10:10〜玉の窪沢出合11:40/11:50〜細尾沢出合12:40/12:50〜大滝13:20/13:40〜大滝落口14:10/14:20〜ビバーク地14:30


08/28:  細尾沢の真価は今日味わえる筈である。出発は、05:15。すぐ小滝や斜滝が続く。いずれも右や左から越えていくがトユ状滝を越えると一気に沢が大きく開け稜線が見えるようになる。広〜い沢には、水が溢れ出した様な滝が出てきた。少し飛沫を浴びて右から越える。

 続いて3段の幅広の滝、遠目には大きさを感じないが近づくと結構なスケール!水流の右端を越えると、次は比高のある豪快なナメ滝。これは、通称”四条の滝”というらしい? が、今日はは四条になっていない。これは右手白い岩のクラックを登る。少し滑りやすいのでザイルを出す。

 四条の滝を越えると、段状の滝があり、その奥に連瀑が見える。4連瀑?のようだが一つの滝のように見える。高さがかなりあり迫力満点!注意して水流右から越える。

しばらく斜滝、小滝が続くが、トユ状滝を越えると沢が大きく開ける

展望が開け稜線が目に入る。水が溢れ出したような滝は右から越える

広く開けた幅広の3段の滝。それぞれ結構スケールが大きい
シャワーは避け右手から越える
岩床は結構ヌルヌルしているので要注意
落口から下流を見る
大滝毎に高度があがっている

これは、通称”四条の滝”というらしい? が、今日は四条?になっていない
四条の滝を越え少し行けば、4連瀑?高さもありなかなかの迫力である

 連瀑を快適に越すと右岸より滝を落として支沢が出合う。本流は、引き続き3連瀑である。水際辺りを適当に越えていくと、又右岸よりガレで水流のある支沢がであい、続いて今度は左岸からガレ沢、こちらは水流はない。水量から見て本流を見誤ることはない。

 更に辿れば、小滝の連瀑、この辺りまで来ると水量もいくらか少なくなったようだ。正面のガレ山を越えると、またまた右岸より水流のある支沢が出合う。この出合いは少し河原があり、ビバークできそうだ。

 この河原を越えれば本流は、静かになる。小滝を適度に配しながら流れは次第に細くなっていく。流れが細くなれば沢そのものも細くなり、次第に両岸から花の咲き乱れるグリーンベルトが接近する。どうやらフィナーレが近くなってきた。

右岸より支沢が出合う。本流は連瀑帯 (写真上)右岸より支沢
(写真下)左岸よりガレ沢
ガレ沢を通過すれば本流は連瀑、これを越えると右岸より支谷。勿論、右俣を行く

源流を思わせる小滝が続く。細くなるに従い両岸から”花”接近!

 次第に滝も小規模となり、源流特有の小滝が続くようになると二俣に出る。左が本流と思われるが、ここは右俣をとる。枝沢である右に行けば、小滝が2,3ある。越えていけば、両サイドともに高山植物が手に届くまで迫る。

 いくらも行かないうちに水は枯れ、涸沢を行くことになるが、これもナナカマド、ダケカンバの潅木林に埋没してしまう。歩きづらい潅木林を避け草地に出ると其処はお花畑になっており、花を踏まないように慎重に歩を進めねばならない。少し右手に方向をきりながら行くと開けたガレ沢に出る。このガレ沢を目で追うとブッシュに覆われることなく駒ヶ岳北面の裾野まで伸び上がり、裾を巻くように右手の尾根に這い上がっている。

 このガレ沢がルートのようである。あとはこれを忠実に詰めれば、駒ヶ岳から玉の窪に至る登山道に最も近い地点に出られそうだ。
このような青い空、眩しいほどのナナカマド、ダケカンバ、ハイマツのグリーンそして華麗な高山植物に囲まれて沢登のフィナーレを迎えるとは・・・・・感謝!感激!の一言に尽きます。思い切って訪ねてよかったとしみじみ思いながら歩を進める。

ここは右の枝沢にはいる 右も左も花でいっぱい!青空に映えてなかなか綺麗です
潅木帯にはいるが歩きづらいので草地に出る・・・そこはお花畑、踏まぬように慎重に歩を進める
潅木帯から草地をとおり抜ければ涸沢に出る
ガスもかかっていないので目標地が目視確認できる

細尾沢上流部を俯瞰する
正面のピークは茶臼山(2652.7m)
木曽頂上山荘辺りに突き上げる尾根
ピークは、およそ2650〜2700m
正面岩壁の最奥が木曽駒ヶ岳山頂。岸壁に沿って右にカールするこのガレを詰めれば
頂上小屋に突き上げる尾根の肩に出る

 涸沢は次第に草付はなくなりガレのみになる。傾斜が少しずつ増し、駒ヶ岳北面のハイマツまじりの岩壁が近づく。見た目ほど浮いておらず慎重に行けば問題はない、涸沢は岩壁の裾野をまくように緩やかに右にカーブ、頂上木曽小屋辺りに突き上げる尾根に伸び上がっていく。斜度が増す辺りから空き缶、等のゴミが目立つようになった。はて、ここはゴミ捨て場?・・・じゃないよねえ。

 最後の頑張りでガレ場を登りきり尾根に出る。反対側に玉の窪が目にはいる・・・時刻は、8時40分、遡行終了です。お疲れ様でした。

尾根筋は風通しがよく寒いくらいである。手早く沢装備を解き、汗臭い服を着替える。すっきりして数分尾根を登れば、頂上木曽小屋直下の登山道に出た。


一登りで駒ヶ岳山頂である。二つある社殿にお参りして遡行の終了を感謝する・・・・と社殿の横の小さな小屋が売店になっているのに気がついた。なんとビールがあるではないか・・・・見た途端、急に喉の渇きをおぼえ、キリンではあったが、”乾杯”してしまう。

ガレ場の登行最終章。見た目よりは安定しているので問題なく尾根筋に達する
ゴミが少し気になりましたが・・・
将棊頭山〜馬の背〜駒ヶ岳の稜線 数分で頂上木曽小屋直下
の登山道に出る
二つの社殿のある木曽駒ヶ岳に、疲れきって還ってきたオジサン。お疲れ様でした!
本当のご褒美は、千畳敷でネ・・・

 ビール飲んでのんびり下山にかかる。中岳はまいて通過、八丁坂のくだりにかかる。きょうは月曜日だが、相変わらず多くの人が愉しんでいる。ホテル千畳敷に着けば実質的な山行は終了・・・・・そして、待望の生ビール!標高:2600mで飲む生ビールですから価値ある1杯・・・ではなく2杯!となりました。

『愉しい』沢登、2本継続の今回の試みはほぼ計画通りに終了です。
何よりも天候に恵まれたのが、本山行の最大のポイントだったと思います。


今日(月曜日)も多くの人で賑わう千畳敷・・・・
本山行最後の課題は、・・・モチロ〜ン、生ビール!

 【08/28のコースタイム】:
 ビバーク地05:15〜最終二俣07:15〜尾根(遡行終了)08:40/09:00〜駒ヶ岳山頂09:15/09:30〜ホテル千畳敷10:30


【Reported by Y.Kubo   Photo presented by K.Akazawa】



引き続き御覧ください!

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