南米アンデス:アコンカグア遠征 No.3

12/27●
Camp 2〜アコンカグア登頂( 6962m)〜Camp 2

 今日は待望のアタック日である。行動予定時間は、15時間。今は、ギリギリ21時までランプ無し行動可能である。従い、朝は少し明るくなって出発し、21時ギリギリに帰幕する計画である。念のためツェルトは持参、最悪の場合、インディペンデンシア小屋辺り(標高:6400m)でビバークすればいい。

 06:40、出発。昨夜は降雪がありうっすら雪化粧している。氷河を見上げると頂稜部はガスに覆われている・・・天候が好天に向かうことを祈ってスタートする。凍り付いた台地を登りポーランド氷河終端のペニテンテスを越えると右手斜面に斜上する踏み跡がある。

 ゆっくり丁寧に辿る。途中、2箇所ほど氷結した幅の狭い雪渓を渡る。しばらくいくとかなり広い雪渓に出る。なぜかしら雪渓の中央にキャッシュらしいものが見える。はて、なんでこんなところに?ひょっとしたら登路を示す標識?

 ここは氷結した上かなり急で段差もありアイゼンを履く。ルートは右斜上、歩きづらいがスリップすれば相当な距離落ちそうなので慎重にいく。雪渓を渡り、小リッジに出ると、広大な斜面が開ける。ジグザグにつけられたルートは雪のせいもあり明瞭だ。アイゼンははずし、ゆっくり登り始める。幾つかターンを繰り返すと、右手からの踏み跡と合する。この右手の踏み跡がノーマルルートのようだ。


 しばらく急坂を登ると、ひょっこり小さなコルに出た。見ると、一部屋根板のない小さな避難小屋がある。これがインディペンデンシア小屋だ。見ると小屋内にテント、この小屋、テント1張りで満杯になる程小さい。


ポーランド氷河がモルゲンロートに輝く、アタックの朝(12/27)

C2から望むモルゲンロートの染まる山々

アイスと化した雪渓。傾斜があり、段差もあって注意がいる
・・・右斜上してこれを越えると、ジグザク道になる

ジグザク道を詰めると
ノーマルルートと合する
インディペンデンシア小屋からのアコンカグア

 声をかけると、予想通り、Mr. Kimishima が笑顔を覗かせる。聞くと、昨日の夜は大変な荒れようで、この小屋がなければアウト!でした・・・ただ、小屋が小さいのでほかの登山者がエスケープしてきたらどうしょうか、と気をもんだんですが・・・・幸い、私一人でした・・・・今日はノーマルルートからの登山者がありましたが、すぐ上のトラバースの所で強風のため引き返したようです・・・・とのこと。ノーマルルートに合すれば、登山者が列をなしている、と思いこんでいただけに、ちょっと拍子抜け・・・でも人は少ない方がいい。

 Mr. Kimishima と記念撮影し、お互いの健闘を誓い合って別れる。少しの登りでリッジに出る。
ここから登路が一望できる。アコンカグア山頂から派生する岩稜の裾を回り込むように、ルートはつけられている。このトラバースは風の抜け道になり、ここで引き返す登山者も多いらしい。トラバースルートは次第に傾斜がきつくなり右斜上して、右の岩稜との間にクーロワールに入っていく。

 標高は6400m近い。すでにデナリ(6194 m)を越えており、今から未知の領域に入る。ペースを落としてトラバースに入る。風はそれほど強くない。しばらくで登路は堅雪になる。念のためだ、アイゼンを履く・・・・傾斜が増すと比例してきつくなる。じりじり歩を進め、カナリータ(Canaleta)と呼ばれる急傾斜のクーロワールにはいる。基本的にはガレだが、比較的大きな岩の重なったところや、ザレた岩を登るところもあり、気を遣う。しばらくで雪は消えるのでアイゼンははずす。見上げると何処までも続いているように思えるが、標高差は400m弱なのだから、止まらない限りいつかはサミットを踏める・・・・・そう念じてひたすら歩を進めるのみだ。


インディペンデンシア小屋で、ビバークしていたMr. Kimishimaと再会する
ここが山頂までの中間ぐらいか・・・・空気の薄くなる今からが本番、頑張ろう!

岩稜の裾を巻くようにトラバース斜上すれば、難関のカナリータへ導かれる

この辺りから歩みが鈍くなる カナリータは、岩稜の裾にルートをとる

 ルートを右手岩稜の裾に沿うようにとる。よく踏まれており比較的歩きやすい・・・・・高度が上がる、と次第に苦しくなる。数歩いっては立ち止まり、息を整えなければならない。1歩がこんな重たいのははじめて経験する・・・・亀のようにノロノロ進む・・・・・ふとクーロワール下部を振り返ると2人パーティが見える。我々との差は少しずつ縮まっているようだ。追いつかれるのは時間の問題か・・・・・時間はどんどん過ぎていく。上部に行くにしたが登路は又堅雪となる、
 2人パーティはアメリカ人で 我々より、1時間くらい遅れていたが、ついに追いつかれた。彼らは、速度はさほど早くないが、立ち止まる回数が少ない。

 さすがのクーロワールも終点が近づく。アコンカグア南峰への岩稜(グアナコ稜)と同じ高さまで来た。サミットは、すぐそこである。バンドをトラバース、リッジを少し登れば、そこが南米の最高峰:アコンカグアのサミット(6962 m)である!・・・・・ようやく着いた!やっと苦しい登りから解放される!

 格別な感動とかはない・・・とにかく目的地に到達したが、どうも今自分が7000m近い高所に立っているという実感に乏しい・・・。ただ単に歩を進めたら、サミットに着いてしまった・・・しかもその頂上は、平らで広い・・・・多分、サミットに立つのに緊張感を強いられないからかもしれない。
 ともあれサミットにたっていることは確かだ。アメリカパーティを含め、山頂は5名、しばし賑わう・・・・・お互いシャッターを押して、Congratulation!


カナリータもやがて終わり少し傾斜がゆるむとサミットは近い

山頂直下の登行。背後は、アコンカグア南壁と南峰(6930 m)
アメリカの2人パーティと嵐パーティの2名

アコンカグア山頂を示す十字架と南壁 お互いに、Congraatulation !



Fine View from the Summit of ACONCAGUA



 暗くなる前にC2へ帰りたいので、あんまりゆっくりは出来ない。17:30、下山開始。カナリータの上部は堅雪だったので山頂直下のバンドでアイゼンを履く・・・安全第一だ、こんな所で怪我とかできない。下り、といってもさほど楽ではない・・・・疲れ切った足腰をだましだまし下降する。

 トラバースを終わりインディペンデンシア小屋に戻ってきた。小屋にはテントが残っており、声をかけると、Mr. Kimishima は中にいる。頭痛がして体調不良、だとのこと。機会を見て山頂踏んだらノーマルルート経由で下山する、と・・・・じゃ、ここでお別れか・・・・気をつけて!

 すでに日は落ち、周囲の山々が残照に輝く。ジグザグを下降、雪渓に出る。氷結しているのでアイゼンを履く・・・・面倒だが、スリップの危険がある。雪渓を越してアイゼンを取り、ひたすらトレールを刻む・・・・相当暗くなってきたが、まだ大丈夫である・・・・そして、21:15、懐かしの我が家に帰り着いた。予定通り、およそ15時間のアタックは終了である。

【写真右:闇がそこまで迫る、21:15、やっと帰幕】

 残った水とデポしていた氷で湯を沸かし、飲み物を取る・・・・今日は、さすがに疲れた・・・・・皆さん、お疲れ様でした。早めに休みましょう!



下山は登る以上に気を遣う・・・堅雪の所は面倒くさがらずアイゼンをはく

そろそろ陽が傾き、影が伸びる・・・インディペンデンシアにも夕暮れが近づく

夕照に映えるやまなみ・・・明日は下山、これで見納めだ!

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