剱立山:丸山中央山稜〜富士ノ折立〜源次郎尾根〜剱岳 

【 山行期間:2006.05.03-06 】

■昨年は、『八ツ峰〜剱岳』で雪稜を十分愉しんだ。今年はどうする?・・・残雪季はじめて訪れる立山東面で手頃で愉しめそうな尾根!・・・・ということで立山連峰:富士ノ折立(2999m)に突き上げる『丸山中央山稜』を目標とする。更に、剱沢にまわり源次郎尾根から剱岳のピークを踏むプレミアム付山行!

 丸山中央山稜は、黒部ダム下の黒部川に架かる橋を渡って右手より取り付くのが普通のようだが、残雪の内蔵助平に立ってみたいという希望もありルートを内蔵助谷経由とすることにした。昨年の秋、ハシゴ谷乗越から俯瞰した内蔵助平は広大であった。残雪期はどんな景色が目に飛び込んでくるのか・・・後立山連峰を背景にする中央山稜の登行は雄大な眺望が・・・・・そして、源次郎尾根は高度感にあふれる雪稜が期待できる。

 勿論、天候次第!・・・悪ければ源治郎尾根をパスせざるを得ないが・・・・しかし、連休前半はぐずついたものの、後半の5/3〜5/6は快晴の毎日!おかげで計画通り完登、幸運!の一言に尽きます。謝々!


■参加者:新、岡村S、赤澤、高木、久保、以上5名

■コースタイム
 
05./03:黒部ダム(08:00)〜内蔵助谷出合(09:05/09:15)〜内蔵助平(10:45)〜御前谷乗越取付(11:00/11:25大休止)
       〜内蔵助峰(14:15/14:30)〜テント場(14:50)

 
05/04:テント場(05:10)〜富士ノ折立(10:40/10:50)〜剱御前小屋(13:20/13:30)〜剱沢テント場(13:50)
 
05/05:テント場(05:00)〜源次郎尾根取付(05:40)〜一峰(07:45)〜二峰(08:30)〜剱岳(10:15/10/30)〜テント場(12:30)
 
05/06:テント場(05:30)〜剱御前小屋(06:00)〜室堂ターミナル(07:45)

丸山中央山稜〜源治郎尾根〜剱岳
登行ルート概念図
満車の扇沢駐車場
静寂の黒部、未だ冬眠中です

05./0220:00北九州出発、少し遅いが休まなければ早朝登山口に到着できる。GWの後半戦でしかも連休初日、混雑が予想されるので無駄なく走り続け、06:30扇沢到着。間一髪で無料の駐車場を確保する。

05./03天候は情報通り快晴!このままたのむよ、5日まででいいからネ! 07:30扇沢発関電トロリーバスで黒部ダムへ向かう。07:46ダム着。ダム堰堤へ行く人々と分かれ案内標識に従いトンネルをくぐれば、そこはもう黒部川下降点である。急傾斜の雪壁の底が黒部川である。早朝でカリカリ、アイゼンを履いた方が気を遣わず楽だ。08:00出発、ダム堰堤の高さに相当する180m位下降すれば黒部川のほとりに出る。今の時期は黒部も静かで、冬眠中!スノーブリッジを伝いのどかな流れを渡り左岸に出る。まずは一休み、そして日焼け対策!今日は快晴で焼けそうだ。

”春の小川”のような穏やかな流れの黒部川 デブリの覆われた内蔵助谷出合

 左岸をのんびり下る。無雪期は、細かい登下降があるが、残雪期の今は、はるかに歩きやすく水際に沿って行くだけだ。しばらくは広い谷で、”静かななる小川”のほとりの散歩道である。陽光を浴びると険しき黒部に居る、とは思われないが、谷が狭まると水の流れは雪塊のなかに姿を消し、一面がガチガチのデブリのヤマに覆われる・・・やはり黒部か。


 デブリのヤマをいくつか越えると内蔵助谷出合だ。09:05着。内蔵助谷は、見る限り残雪に覆われ所々デブリがある。ここから平坦になる内蔵助平まで標高差およそ500mの登りである。小休止して気分を変える。

 3人の先行者は、ザックをおろし登攀準備のようだ。一息入れてスローペースで登行開始。急がず行きましょう!


←内蔵助谷登行開始、決して急がず!

 ほどほどの傾斜、登り易い所を選んで歩を進める。3人の先行者は右手の雪面に取り付いた。南尾根のようである。次第に行く手左手には丸山東壁が大きくなる。東壁は、丸山東峰(2023m)のピークから急峻に内蔵助谷に落ち込んでいる高度差500mの花崗岩の岸壁である。岸壁を左正面に眺められるあたりで休憩・・・そんなに大きく見えないなあ、・・・・と、突然、空を切り裂くような破裂音!第2ルンゼ上部から岩ナダレである。すぐさまザック担ぎ駆け足で右手に移動したが・・・さすがに距離があり届かない。凍結が融解したためか?5月の岩のルンゼは怖い、怖い!

 さて、行きますか。このあたりからデブリの連続、スローで行くが、女性の多いパーティに追いついてしまう。どちらまで?と聞くと、内蔵助平ステイ!、と、??、ハハッ!宴会ですよ、という・・・・・う〜ん、そうか、内蔵助平ベースで彼方此方遊ぶのも面白そうだ。

 谷上部に近くなると流れが顔を出している。そろそろ平坦になる。登るほどに正面の真砂尾根がすこしづつだが確実に伸び上がってくる。
 10:45、フラットな内蔵助平に到着!ここは標高1700m、・・・おお、広い!ヒロイ!実に広大な雪原である。正面に真砂尾根、右に目を移せばハシゴ谷乗越に至る、左手には内蔵助峰、その彼方に中央山稜の終了点の富士ノ折立が望める。

次第に丸山東壁が頭上にのしかかる 中央のルンゼで岩ナダレ発生!

顔を出した水流。もう少しで平坦になる お疲れ様です。本日の行程、50%消化!

正面は真砂尾根。彼方の左ピークが富士ノ折立、右は真砂岳、その間が、内蔵助カール

 休まず、丸山の裾を巻くようにして方向を南にチェンジする。正面に御前谷乗越(丸山乗越?)を望む雪原に出る。強い日差しを正面から受けるが、白い砂漠のオアシスのような途中の木立のあるところで大休止とする。

 今日の残りの行程は、内蔵助峰を越えたコルまでだ。そのコル(内蔵助乗越)は平坦地で幕営適地とのウェブサイトの情報、あと600m近く登るのみだ、が睡眠不足の体には今からが正念場である。めずらしく25分も休憩してやおら腰を上げる。

とりあえず正面のコル(御前谷乗越)が目標! 白い砂漠のオアシスで大休止

 消滅寸前のワカンのトレースを辿る、が時々膝までズボリ!不意に足払いされたようで苛立ち、そしてツカレマス!
雪原は次第に傾斜を増し、雪壁になる。勿論、傾斜増す毎に速度はのろくなる。正面のコルにあがるつもりだったがトレースは右斜上していくのでそれに従うといつの間にかコル(御前谷乗越)より上部に出ていた・・・・・・やっと尾根(中央山稜)に出た!休憩!

 喉を潤し、振り返れば!・・・・正面にはすくーっと立ちはだかる赤沢岳、スバリ岳そして針ノ木岳の鋭鋒、右手下方には氷に覆われた黒部湖が視界に入る。思った通りこの尾根は後立山を展望する恰好の位置にある・・・・丸山中央山稜は、振り返ればいつも後立山!の山旅、ですね。

 内蔵助峰までまだ300m近くある。もうひと頑張り!広い尾根が次第に狭まり雪のリッジになるとようやく内蔵助峰(2279m)のピークに出る。14:15、到着。

内蔵助平を俯瞰する。
右手は黒部別山、左手のコルがハシゴ谷乗越
上:もう少しで尾根!
下:尾根に出ると又、雪壁
黒部丸山を見下すようにそびえる赤沢岳〜爺ヶ岳 スバリ岳〜針ノ木岳
谷底は黒部湖
真砂尾根と峻険にして秀麗?な姿を見せる剱岳本峰〜八ツ峰

 ピークからの眺望はスバラシイ!の一言に尽きる。立山の主峰、雄山へすっきり伸び上がっているブッシュ皆無の雄山東尾根は、白銀のメタリックな造型のようだ。明日登行予定の中央山稜は、今日の幕営予定のコル(内蔵助乗越)から背筋を少しくねらせながら右左の岩稜を取りまとめて彼方のピーク(富士ノ折立)に収斂している・・・・かなり距離がありそうだ。ザイル出すかどうかによるが、5−6時間はかかるかな。

 後立山方面も、ぐ〜っと展望が開け遠く白馬三山から唐松岳が見渡せる・・・しばし愉しんで下降にかかる。コルまでは一投足の距離だ。コルには数人のスキーヤーがいる。シュプールは、立山稜線から御前谷経由でコル(内蔵助乗越)へ刻まれているようだが、さぞかし豪快な滑りだろうと想像される。うまい人がいっぱいいるもんだ。
我々がコルに到着する前に彼らは内蔵助平へサーッと消えてしまった。

 コルは平坦で、サイトの整地は僅かな時間で完了・・・・まずはビール!旨いね〜・・・我々のみのサイトで、いい景色見ながらのどを潤すのは格別です。
本日は、オツカレサマ、焼酎もウィスキーもありますので、十分愉しんでください。

3000mの稜線に突き上げる雄山東尾根 後立山連峰の盟主:鹿島槍ヶ岳
前景はいくつかのピークを連ねる南尾根
内蔵助平と黒部別山。遠くに後立山北部の峰々(白馬三山〜唐松岳〜五竜岳)
内蔵助峰(2279m)山頂
絶好のテントサイト
(内蔵助乗越)
明日登行する丸山中央稜を正面に見ながら
本日のテントサイトへ下降
テントサイト(内蔵助乗越)から望む鳴沢岳、赤沢岳、スバリ岳、針ノ木岳

 05./04、3時起床、4時過ぎには薄明るくなる。天候は、勿論情報通り快晴!今日は剱沢までの長丁場になる。登攀準備をし、結構冷え込んでおり風もあるのでジャケットも着込んで、05:10、出発。気温の低い朝は、雪面はしっかり締まりアイゼンが小気味よく効く。尾根は、広くなったり、細くなったりしながら比較的急角度でうねるように延びあがっていく。
同じ歩き方でのアイゼン登行は疲れるので、ジグザグに、あるいはガニ股になったり、時には出っ歯を効かせて登る。

 周囲は遮るものはなくすっきりした登行になるが・・・カリカリだからスリップに注意!障害物はないから、スパッツ、等に引っ掛けなければ大丈夫である。右に左にうねって進むとやがて岩塔に突き当たる。ここは左のブッシュまじりのルンゼを登る。また雪稜になる。

 丸みを帯びた雪稜は岩塔に吸収される。ここは、左に少し回り込むと易しい岩場に出る。ひと登りで内蔵助カール側から延びて来た支稜とのジャンクションである。


05/04、快晴の朝!出発準備。既に日が高い アイゼンのよく効く斜面に取り付く
気持ちのよいすっきりした雪稜の登行、少し登下降があるが傾斜は徐々にきつくなる
左端が幕営地。定枠に押し込められたように右に左にうねりながら高度を上げる丸山中央山稜
風のない岩陰のポケットで小休止 中央山稜の上部(岩塔を連ねた岩稜)
ルートはリッジから雪壁、そして岩塔に吸収される ブッシュまじりの岩塔の左側が登りやすい
続く丸みを帯びた尾根を辿れば又、岩塔に突き当たる ルンゼの簡単な岩登りでジャンクションに出る

 さしたる悪場もなく、内蔵助カール側の支稜が出合う小さなジャンクションに這い上がる。小粒ではあるが、空間に飛び出したジャンクションピークに立つと見張台に立っているようなもので、360°さえぎるものはない。正面には、内蔵助カール側に緩く傾斜した雪面が広がり、ルートは雪面から緩やかな尾根にうつり次第に高度をあげ最後は岩稜に収斂する。振り返れば鹿島槍ヶ岳の三角錐がひときわ目を引く。

 雪面を越えたあたりで小休止する。風が冷たい。吹きさらしの為、少し冷えるがもう少しだ、頑張っていきましょう。
盛り上がる尾根はジグザグで、越えるとまた斜面が続く・・・・右に左にウロウロしながら思い思いにアイゼンの食い込む感触を確かめながら山稜の核心部へ歩を進める。


中央山稜も最終ラウンドが近づく。
最奥のピークが富士ノ折立
支稜とのジャンクションピーク。鹿島槍が大きい!
後立山の諸峰:左最奥が白馬三山、続いて唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳
前景は、黒部別山と内蔵助平、中央が辿ってきた中央山稜

 尾根を忠実に辿れば、岩塔の連なる岩稜が近づく。ルートは、岩塔は右巻きで越えればよさそうである。

 岩稜帯にはいる。2級くらいの岩登りだが、氷雪混じりのミックス壁だからスリップに気をつけましょう。忠実に尾根を詰めれば、大きな岩塔に突き当たる。ルートを右にとることにする。急傾斜の氷雪壁のトラバースになるのでザイルをフィックスする。荷もそこそこ担いでいるので、念には念を入れ2−3歩ごとにステップを切って進むことにする。30mくらいのトラバースで小リッジに出る。残置ハーケン有り。少しリッジを登り、続く右のルンゼに1Pザイルを延ばす。快適な登行で尾根上に出る・・・・がまだ終了ではない。

 尾根を行けばどうやら最後と思われる岩稜に突き当たる。ここは岩稜中央のチムニーがルートである。15mほどの登りでピークへ!・・・そして15mほどのリッジを慎重に越すと丸山中央山稜の終了点、富士ノ折立(2999m)である。時刻は、10:40、幕営地の内蔵助乗越(2210m)から5時間半かかった。

 富士ノ折立は縦走路から少し外れたピークであるが、縦走路から数分の距離しかないので、登山者が多い。シャッター押してもらって剱沢へ向かう。
本日のメインイベントの登攀は終了したから、あとは?・・・・勿論、ビール、ビール!


岩塔の連なる岩稜が近づく。手前の小さな岩塔を右から巻く 氷雪のミックスした岩稜を忠実に辿る。
大きな岩塔まですすむ 右30mほどトラバース。安全のためザイルをフィックス
小リッジに出る。小休止でご機嫌のメンバー 更に右手のルンゼに1Pザイルを延ばす
最後のチムニーを登れば終了
富士ノ折立(2999m)、お疲れさんです。 チムニーを登り、リッジを越えると富士ノ折立のピークに出る

 10分ほど休憩した後、剱沢に向かう。縦走路に出ると多くの登山者が行き交う。右折すれば真砂岳〜別山方面である。急坂を下るとダラダラの登りになるが、正面は真砂岳で左に巻き道がある。お疲れなので、当然、巻き道にはいるが、これは実は雷鳥沢からの登下降路のようで、途中から左に下降路を見送れば巻き道は登りになり真砂岳の稜線に出る・・・素直に越えるのとまったく差はなし。

 気分的にもお疲れのようで、真砂岳と別山を通過しなければならないのに別山の存在をすっかり忘れてしまい・・・右手の真砂沢を剱沢と思い込んでしまった。沢を覗くと!・・なんと剱沢小屋もテン場も見えない!今季は大量の積雪だったからまだ全て埋もれているのか、テントもまったくなし?・・・こりゃ大変だ、何処で幕営しようか?・・・

 近くの登山者が、剱沢は別山の向こうですよ、別山越えれば小屋もテン場も見えます!、と・・・・そうか、なにを寝ぼけていたのか、まだ別山があるんじゃないの・・・。

 真砂岳とのコルから別山までは僅か150mくらいなのに・・・これがきつい!

 やっと別山に到着、少し別山乗越方面に行けば・・・右手に剱沢、小屋もテントも見えました!ダラダラ下降して剱御前小屋前に出る・・・と、そこはスキーヤーがいっぱい!ボーダーもそこそこいる、が我々みたいなヘルメット被った登山者はいないではないか。某社のテレビコマーシャルではないが、登攀終了でついたところがスキー場!みたい。変わる〜変わる〜時代は変わる、ですねえ。

 それはそれとしてもっとも大事な飲料水:ビールを10缶購入・・・これでようやく平常心に戻り剱沢へ向かう。

 20分ほどの下降で、ブロックの積まれたテント場到着。丁度、1張り分の空家があったので、拡張して本日のサイトとする。今回は、スコップは持参したもののスノーソーをもってこなかった・・・スノーソーがなければサイト整地に時間がかかる。やはり持参すべきだ。ともあれ1時間もすればテント設営完了。
埋もれていた剱沢小屋は、除雪の真っ最中、宿泊は受け付けていないが、売店はオープン!・・もう少し飲みたい、と思うかもしれないので追加のビールを購入・・・かくして、5人はシアワセな午後のひと時を過ごしたのであります。(続く)

富士ノ折立から縦走路へ
真砂岳は巻いたつもりだったが・・・ 急坂を下り真砂〜別山〜剱御前小屋方面へ向かう
別山登りから立山連峰を振り返る 剱御前小屋遠望。遠景は大日岳方面
剱沢テント場に到着 テント設営完了。まずは乾杯!

To be continued on

"(続編)剱立山:丸山中央山稜〜富士ノ折立〜源次郎尾根〜剱岳