谷川連峰:湯檜曽川本谷〜朝日岳2007.08.12-13

 
 九州や西中国山地の樹林帯に分け入る沢登も愉しいが、終了点が森林限界を越える沢登りは格別の味わいがある。昨年は、中アでその愉しさを少しだけ味わう・・・・抜けた源流に立つ開放感は忘れがたく今年も行きたいねえ!・・・・ということで動機はいたって単純、行き先選定も単純、つまり初級〜中級、一泊二日、ナメやら登れる滝やらゴルジュやらいろいろ詰まり、終了点は開けた草原(稜線)!・・・・
 
 多くの候補地がありましたが、少し先のことを考えて、『谷川連峰:湯檜曽川本谷』に行くことにする。ここはやたら有名なようで、『岳人』でも沢登の本でもウェブサイトでもお勧めである。お盆の期間だから混雑するかもしれないが・・・逆に関東圏からは近すぎて空いているかもしれないね・・乞うご期待!



参加者
 新、岡村S、久保、以上3名

コースタイム

08.12
 土合駐車場(07:30)〜武能沢(09:10)〜湯檜曽川本谷(09:15)〜取付(09:20/09:40)〜ウナギ淵(10:15)〜十字峡(10:50/11:10)〜抱返りの滝(11:20)〜3条の滝(12:05)〜七ツ小屋沢出合(12:10/12:20)〜10m垂直の滝(12:40/13/10)〜2段の滝(13:30/14:00)〜大滝(14:30/15:00)〜ビバークサイト(15:15)

08.13
 ビバークサイト(06:35)〜二俣(07:10)〜終了点(08:45/09:00)〜朝日岳(09:45/10:10)〜笠ヶ岳(11:20)〜土合駐車場(15:00)






 上越の山は、富士山や北アよりは少し遠い。11日、15:00北九州出発。山陽〜名神〜中央と走り岡谷で高速をでて山越えして佐久にはいる。再び上信越〜関越と乗り継いで水上ICで高速を出る。
 標示に従ってR291をたどれば登山口の土合に達する。途中、ちょっとしたトラブルや仮眠をとったのが、休まず走れば12時間位?(走行距離は、1150km前後)

 踏切を渡ると土合橋、その手前、右手にあがる車道にはいると駐車場でマップでは50台となっているが倍はゆうに停められそうだ。

【写真右】:新道入口の道標

 支度をして出発。土合橋を渡りすぐ右の車道に入る。しばらく行くと車道は終了、登山道になる。この登山道、湯桧曽川右岸につけられた新道で、蓬峠に通じている。取付までは少々退屈だがこの新道を行かねばならない。
 
 道中は爽やかな樹林帯、谷川岳東面の岸壁が望める一ノ倉沢出合や幽ノ沢出合の通過、2時間足らずで武能沢に出る(標識有り)。沢伝いに下降すること僅かで開けた湯桧曽川の河原に出た・・・・大きく開けて明るい!
 少し遡れば両岸から岸壁が迫るゴルジュの入口である。少し入り込んだ岩棚で準備をする。


少々退屈なアプローチだが樹林帯は快適で、所々谷川岳東面の岸壁が望める
河原から少し遡ればゴルジュの入口。ここが取付である

 遡行スタート!すぐに魚止めの滝(6m)がある。水流の左手からあがるが早速残置シュリンゲを利用させてもらう。一泊2日のザックは結構重い!ここはゴルジュになっているので右岸の岩棚から樹林に入り巻くことにする。踏み跡明瞭。巻いたところで河原に出る。上流は大きく開け明るく開放的な河原である。しばらく河原歩きをすれば釜のあるナメ滝、越えると河床はすべすべしたナメ床で澄んだ水が滑るように流れる。天候に恵まれた爽やかな河原歩きは最高である。
 深い釜のある滝は右の岩棚から巻いて越え進めば谷はほぼ直角に右に折れる。
 
 右に折れると次はまるで造られた水路のような静かな淵で両岸は垂直に切りたちまっすぐ延びている。泳ぐのはやめて左岸の岩棚をトラバースすることにする。慎重にたどれば淵は終わるので河床に下りる。進めばまた短い淵、左岸の岩棚を伝い適当なところでを詰めると正面にはガレ谷、本谷は、今度は左におれるが、その出合に豪快なひょんぐりの滝が落ちている。この辺り、明るい日差しに白く輝く岩が眩しい・・・・・この三叉路で少し休憩する。


魚止めの滝を越える。ゴルジュ帯は左岩棚から巻いて明るい河原に出る
爽やかなナメ滝を越えると滑るように流れるナメ床。続く釜は右の岩棚から巻く
谷は右に折れ、うなぎ淵に出る。左棚をトラバースし谷に下りる
次の淵も右岩棚から巻いて谷にもどると正面にガレ谷・・・・本谷は今度は左に折れる


【写真左】:ひょんぐりの滝前で記念撮影

 豪快な水流を落とすひょんぐりの滝は左岩から越えると、これまた囂々と流れるナメ滝が続く(3段30m)。これぞ自然の贈り物、出来るだけしぶきを浴びながら涼しさを満喫!嬉々として遡れば このナメ滝の奥に、抱返りの沢の大滝が濃い緑の樹林を切り開くように広がる岸壁の中心を本谷めがけて懸け下っている。

 この滝の出合が十字峡だ!
 3段目のナメ滝を越えると、抱返りの沢手前の右手から大倉沢がこれまた滝で出合う。
 本谷はほぼ直角に左に折れるのでここは丁度四差路の交差点である。大倉沢を渡り、斜滝を左に渡り交差点の真ん中に出る。

 しばし広大なスケールに見とれる・・・・こんな所は素通りできない。

【写真右】:鋼鉄のような岸壁に懸かるシャワー

 ザックをおろし抱返し沢の大滝を見上げる。蒼い天空をバックに鋼のように鈍く光る垂直の岸壁から白いシャワーが、十字峡の開かれた大空間に降り注ぐ・・・・ついつい長居したくなるような所である。
 
 滝下の眺めのいいところで先行していた3人パーティがやおら腰を上げ交差点を左折、ゴルジュ帯に進んでいった。時刻はまだ11時だが、ビバーク予定の大滝上部までまだまだ越えねばならない多くの滝がある・・・そんなりゆっくりは出来ないので、先行パーティからしばらく間をおいて腰を上げる。

3段の大ナメを越えると正面に抱返り沢、右手から大倉沢が出合う十字峡に出る
大倉沢を横切り斜滝を渡ると抱返しの滝の真下・・・・ここで十字峡のスケールを愉しむ!

 十字峡を左折すると明るく開けたゴルジュ帯である。難しいところはなく適当に行けば釜のある斜滝、左手から越え谷にもどれば淵が出てくる。ここから左手岩棚にあがりトラバース気味に進む。 先行した3名は釜をへつったりして愉しんでいるようである。簡単な岩棚から追い越してしまったのでこのまま先行する。
 
 やがて前方左手に2段20m抱返し滝が見えてくる。豊かな白い流れが印象的だ。釜を左から巻いて1段目をあがる。左手に進みルンゼにはいる。踏み跡が怪しくなるところまであがり右手ブッシュ帯にトラバースすれば滝上に出る。踏み跡が幾つもあるので適当にねらいを定めてトラバースした方がいい。

十字峡から明るく開けたゴルジュ帯を進む。淵は左岩棚をつたう
豊かなながれの2段20m抱返り滝は1段上がり左から巻く

 抱返し滝を過ぎると流れは穏やかになり、数mのナメ滝や美しい釜が続いて現れるようになる。ナメの河床を水は緩やかに流れ、適度に配置された釜とナメ滝がアクセントを添える。どこまでも蒼く明るい空と大きく広がる空間、爽やかに風に揺らぐ両岸の濃い緑・・・・癒やされますねえ、この渓相。

味わいながらのんびり遡行する”天国への道”のような旅は 抱返し滝上から半時間ほど続く・・・人間贅沢だからず〜っと癒やされるのもイヤになる?そろそろ変化がほしいなあ・・と思う頃、この癒しの道は3条10mの滝で一旦途切れる。


30分ほど続いた癒しの渓谷は3条10mの滝で一旦途切れる

 3条10mの滝は左手岩の間から越える。しばらくで七ツ小屋沢出合である。右から落ちる斜滝が本谷である。斜滝を登りルンゼ状斜滝を行けば・・・・30mほど前方に動く黒い物体発見!・・・クマ! こちらをちらりと見たがあわてる様子はなくゆっくりした速度で遡行、時々右岸の茂みに頭をつっこんだりしながら悠々と谷の奥に消えていった。
 すぐクマの後を追うわけには行かないのでしばらく休憩する。まあ、いきなり遭遇!でなくてヨカッタ。10分ほど休んで出発するが、立ち去ったかどうかは保証の限りでないので、仕方なく大声を出したり奇声を上げて行くが・・・・水流にかき消されてクマさんに届くかどうか?


深い釜を持つ3条10mの滝。左手ルンゼ状の岩から巻いて滝上に出る
クマさん発見!悠々と遡行しているクマさん、えさを探しながら上流へ消えていった

 クマさんと別れたあとも快適遡行が続く。やがて釜のある10m垂直の滝にでる。
 ガイドブックではルートは3通り紹介されていたが、最も易しそうに見える瀑水裏のトラバースはこの水量では100%ずぶ濡れになり寒そうなので残置ピンの見える右岸壁を登ることにする。岡村空荷で登り抜けたあとザックをあげる。後続はザックを背負って登る。滝上は綺麗なナメ床でさらさらと流れる水流が心地いい。


クマさんと別れたあとも快適遡行が続く 奥の滝が10m垂直の滝
空荷で壁を登り後続を迎えるが、岩が少しぬめっていている上脆そうでいやらしい

 ザイルをしまい遡行を続ける。しばらく斜滝が続くが快適に越えて行く。これまで白〜黒の無彩色系だった岩肌が赤っぽい茶褐色に変わると深い釜のある2段の滝が現れる。1段目は左手から回り込んで越える。2段目は水流右に残置されたピンが見えるが、岩屑を圧縮したような岸壁で何となく脆そうな感じである。ここは右手草付を巻くことにするが、脆そうな草付土壁でこちらも嫌らしそうだ。ここも空荷で15mほどのぼり小さなブッシュにビレイ、残りは後続しそのままトラバースして谷にもどる。

 谷は狭まりゴルジュ帯にはいるが、最奥に大滝の上部が見える。そろそろ今日のフィナーレが近くなってきた。腰までつかり小滝を超えるとゴルジュ帯、しばらく行くと大滝が全容を現す。

10m垂直の滝を越えるとしばらく快適な斜滝が続く
茶褐色の岩に懸かる2段の滝。1段目は左から越えるが、2段目は右草付から巻く
2段の滝を越えると褐色の岩のゴルジュ帯。その奥に本谷最大の40m大滝が現れる

 大滝の下部は、左の細い水流沿いの大まかな岩を登る。中段テラスから左にもう1段上がると大きくスプーンカットされたようなテラスに出る。水流添いには行けそうもない。左の岩がルートのようで残置されたシュリンゲとハーケンが見える。
 ここでアンザイレンし、残置シュリンゲを利用して被り気味の岩を越えるとあとは階段状である。ブッシュ帯まで登るとあとは落ち口までトラバースだが、草付の中に踏み跡がしっかりついており難なく落ち口に出る。これで今日のメインイベントは終了である。時刻は、15時、ネグラを探すにはほどよい時刻である。

シャワーを浴びて大滝を攀る。下部はフリーで上部はザイルを出す
ビレイヤーを確保して後続をビレイする。落ち口へトラバースすれば大滝は終了である


 大滝を越えると谷の傾斜は緩くなりしばらく行くと左に曲がり河原となる・・・・・・河原見つけるなり、ここで泊まろう!とすぐ結論が出る。水流からの高さはないが、夕立もないくらい天候も安定しているのでまあ大丈夫だろう。いざとなれば左岸を3mほどあがった所に鉄塔の巡視路と思われる広く立派な歩道があり避難可能である。

 見上げると送電線の真下にあたり、地形図から標高1280m位である。
 早速、左岸の冷たい枝沢にビールを漬ける。次に整地しツェルトを張る。今日は3人なので1張りとし入口側を広げて交互に横になれるようにする。濡れた衣服を脱いでのんびりしていたら後続の3人パーティが来られた。彼らはここを通過して更に上流に向かわれたが多分二俣でビバークだろう。

 一息ついて小宴会開催。意外とビールが冷えており満足!その他持ち上げた日本酒やら焼酎で一時を過ごす。日が落ちてきた頃から焚き火開始。大枝があるが手頃な小枝が少ない、が新聞紙を使って何とか起こす・・・・しばらく頑張れば立派なタキビになる。
 
 暗くなりそろそろ寝ようか、と言う頃2人組のパーティがやってきた。ここいいですか?・・・・どうぞどうぞ!・・ということでこの河原、5名でビバークすることになりました。


ビバークにはもってこいの河原。明るく開放的で左岸には避難用歩道有り

To be continued on谷川連峰:湯檜曽川本谷〜朝日岳
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