Aoraki/Mount Cook


(アオラキ/マウントクック)

■日 程 : 平成27年(2015年)12月27日 〜 31日
■参加者 : 溝尾幸一 ・ 岡村繁雄 ・ イワン(IVAN MOSHNIKOV MR)

■行 程 :
 27日 マウントクック村(ヘリコプター)⇒ プラテン小屋
 28日 プラテン小屋 → アンザックピーク 〔2528 m〕 → プラテン小屋
 29日 休息日 [マウントクック深夜発]
 30日 プラテン小屋 → マウントクックHigh peak 〔3754 m〕 → プラテン小屋   
 31日 プラテン小屋(ヘリコプター)⇒ マウントクック村


 今回の山行は、過去の色々な資料から、現地の天候も不安定で時と場合によっては、厳しい状況も多々見られるためガイド登山とした。北九州市八幡西区出身の高千穂ガイドより紹介を受けた、ロシア人ガイドのイワンさん (IVAN MOSHNIKOV MR) に依頼することとなった。

27日  クライストチャーチの空港でガイドのイワンさんと合流、翌日の27日レンタカーでマウントクック村に向かった。途中、プカキ湖の奥にマウントクックを見た時は、気持ちが高鳴りわくわくとしてきた。また湖沿いに走る車からだんだんと近くなるマウントクックを見ていると、ついカメラのシャッターを押してしまう。

テカポ湖畔の善き羊飼いの教会にて プカキ湖 羊の象
プカキ湖の奥にマウントクックを望む


プカキ湖とマウントクック(望遠)
イワンさんが運転するレンタカー マウントクック(村近郊より望む

車で走ると少しずつ近づいてくるこの眺望は、絶景であった。

マウントクック(望遠)


 ビジターセンター  各山小屋の収容人数を表すボード

 今回の全ての手配は高千穂ガイドが行ってくれたので、我々は何も考えることなく過ごせた。ビジターセンター(写真左:入り口の看板)でイワンさんが山小屋の確認とルートの情報を詳しく聞いてくれた。

 私は所々しか解らなかったが、ただ今年はブルーアイスは、ないとの確認するとこは聞き取ることができほっとした。ビジターセンターのカウンターの奥にある各山小屋の収容人数を表すボードがあることを教えてもらった。

 この写真〔12月31日撮影〕のボードでは、プラテウ小屋(Plateau Hut)は、上から6番目で、そろばん玉が左によってほぼ満員であることが分かる。

 たまたま天候に恵まれたが、昨年イワンさんが訪れた時は、天候不順で数日ヘリコプターが飛ばなかったとのことである。マウントクック村のビジターセンターで諸所の手続きを済ませ、空港に戻り11時30分ヘリコプターで、プラテウ小屋に出発。

〔ヘリコプター費用 上り:12/27  690 NZドル 下り:12/31  575 NZドル〕

Mt Cook Airport (出発直前)

ヘリコプターよりマウントクック村方向を望む

ヘリコプターよりプラテウ小屋を望む ヘリコプターよりのプラテウ小屋周辺

 プラテウ小屋は無人の小屋である。

 外に大きな雨水を溜めたタンクあり、生水は飲めないが、水は自由に使用出来る。食器、鍋等とそろっており、使用後は各自で備え付けの洗剤で洗って元の場所に戻しておく必要がある。プロパンガスが設置してあり、ガスコンロも自由に使用でき、夜は電灯も点灯する。
 寝床は、一畳ほどの厚いマットで仕切られ、持参のシュラフで寝ることとなる。トイレは外に設置してあるが強風で吹雪の時は、トイレにたどり着くまでロープを利用して行くこともあるとのことである。

 今回は、思ったより気温も高く、快適なプラテウ小屋であった。最初の夜は、聞くところによると私のいびきがひどく一人途中で他の部屋へ出て行ったらしく、こればっかりは、申し訳ないが不運と思いあきらめてもらうしかないかなと思った。


プラテウ小屋(Plateau Hut) キッチン
右がガンジョウな作りの出入り口 キッチンの後ろ側、テーブル

奥がトイレ(ロープが張ってある) 飲料水用貯水タンク
ベットルーム オーストリアのパーティとの昼食


28日 我々の技量の把握とトレーニングを兼ねて小屋から見てマウントクックの左に位置するアンザックピーク〔2528 m〕に登ることとなった。
本日も快晴で、温かい。

朝焼けのマウントクック

朝焼けのSilberhornとMt Tasman



アンザックピーク (Anzac Peaks) 〔2528 m〕

正面の雪壁の末端まで詰めてその後、岩稜を登り山頂に到達した。

前方アンザックピーク アンザックピークの登り

 ザイルを付けて雪渓を横切り一気にアンザックピークの雪壁を詰めて登った。アイゼンが良くきき、雪壁を末端まで登った所から岩稜をへて意外とすぐに山頂に出に出た。

 マウントクックを左手に見上げ、ほとんど風もなくなかなかの絶景であった。

前方がアンザックピークの山頂 アンザックピークの雪壁を下降

アンザックピークよりの帰り、前方マウントクックを望む

前方 プラテウ小屋

29日 本日は休息日で、昼間に一時間程度、登攀のザイルワーク等のレクチャーを受ける。
今日の夜中の出発に備え早めの夕食を取り、私は、16時には床に就いた。

ザイルワーク等のレクチャーを行うイワンさん プラテウ小屋とマウントクック

30日【マウントクックアタック】

 29日夜半11時起床、日本から持参のアルファー米とインスタントカレーを食べ体調を整え、12時30分真っ暗な中出発。
キャップランプを頼りに、デブリやクレパスの間を縫うようにして進んでいった。途中、イワンさんが持参したビバーク用テントを雪の中に埋めて、目印を付けてデホ。

デブリの間を通過 〔2時36分〕  クレパスを通過 〔3時35分〕

雪壁をリードするイワンさん 〔6時00分〕 【A地点】 写真:上
雪壁の取付き付近 〔5時20分〕 【@地点】

 周囲が明るくなり始めたころに雪壁に取付く。イワンさんがルートを誤りやや登りすぎたらしく、岸壁に詰まってしまい1ピッチクライミングダウン後、また黙々と登って行った。
風もなく雪壁の状況が良く、セカンドであることもあり楽に登ることが出来た。

この雪壁を左にトラバースし登りつめたらサミットロック手前のコルに出る 【B地点】

日が昇る前暗闇でのルートファイティングは難しく、たまたま今回は所々トレースが確認できる状況だったが、初見でのリードは状況によっては、難しいと感じた。また気温が下がり、場所によっては雪壁がブルーアイスとなるとさらにグレードが上がることが予想される。

Mt Tasman (3497m) を望む (望遠) 〔6時26分〕

後方 Mt Tasman〔イワンさん撮影〕

〔6時55分〕  プラテウ小屋方向を望む

サミットロックを見上げる 右下にベルトシュルンド 〔6時55分〕 【C地点】

日の出のころまでは雲もなかったが、しだいにガスが出てきて下界の風景を、見ることが出来なくなった。サミットロックの岩稜は、3級から4級− 程度で雪壁途中アイスバーンの箇所が所々あったが、そう問題なく通過することができた。

1ピッチ目 〔7時22分〕 【D地点】 〔7時45分〕

〔8時間14分〕 【E地点】 〔8時39分〕

岩場をリードするイワンさん 前方山頂  【F地点】 〔9時17分〕

マウントクック山頂にて 〔9時30分登頂〕



9時30分、登山開始から10時間で、マウントクック山頂にやっと到着。雲で何も見られなかったが無事登頂出来て良かった。

 写真を撮って早々に下山。
山頂から岩綾を数回の懸垂後、登ってきた雪壁をアイゼンのデッパをけり込み、数十メートル三人コンティニュアスで下降。遠征前、アイゼンを付けたボッカは行っていたが、デッパを使ってのトレーニングは行っていなかったため足首が疲れてしまった。

 高度を下げると、登りには暗くて気づかなかったがデブリがあちこちにあり、その中を通過し更に下降。
結局持ってきたバイルは、使わないままであった。

登った雪壁を下降〔イワンさん撮影〕

雪壁をクライミングダウンで下降

デブリの中を通過


リンダ氷河の上部〔先頭のイワンさん撮影〕


一瞬視界が開けリンダ氷河が視界に入ってきた

クレパスを飛び越える 崩れかけそうなクレパスの淵を通過

微妙なバランスでクレパスを渡る 〔A〕 足元のクレパスが崩れ浅いクレパスに落ちた

リンダ氷河全般にクレパスだらけで、その中を縫うように下降していった。

 気温が高くなり雪も腐り気味で、注意しないとすぐクレパスの淵が崩れ、写真Aの状況になるため細心の注意を払いクレパス帯を遡行した。
既存のトレースの跡をたどると、クレパスが広がり通過できなくなっており、引き返して抜け道を探しながらの遡行となった。

 そうするうちにミゾレが雨模様となりさらに雪が崩れやすくなりクレパス帯を通過するまで登りより緊張した。

ルート概要

プラテウ小屋16時15分到着

夜半12時30分プラテウ小屋を出発して、
下部でイワンさんがコーヒーを雪渓で沸かしふるまってくれ長めの休憩、
結局16時間45分の行程であった。

31日 昨日だけがやや天気が崩れたが、今日も快晴で年末こんなに天気が良いのは、かなり久しぶりらしい。

今日アタックしているパーティが、山頂直下のサミットロックを通過し雪稜を進む様子を、カメラの望遠で捉えることが出来た。
早いパーティは8時頃、遅いパーティは10時頃、山頂直下の雪稜を登るのが確認できた。後のパーティになればなるほど、下山時のクレパスの通過が大変になるだろう。

山頂直下の雪稜を進むパーティ (望遠)

プラテウ小屋よりアンザックピークを望む

クレパスの付近を遡行するパーティ(望遠)

 早朝、プラテウ小屋眼下に広がる雪原のクレパスを各5人の2組のツアーパーティがトレッキングツアーだろうかクレパスの中に下っていった。


【マウントクックの登頂の翌日の朝食】




 マルコゲに日焼けしてしまったが、毎日晴天で、氷点下20℃を予想していたのが嘘のようで、嬉しい誤算でラッキーであった。

ヘリコプターが早く迎えに来てくれるということとなり、プラテウ小屋前に11時30分到着。15分ほどで空港へ到着、あっという間のマウントクックの山行であった。

迎えのヘリコプター
ヘリコプターよりMt Cook Airportを望む イワンさんから送られてきた登頂証明書

 日本に戻って数日後、ロシア人ガイドのイワンさんよりメールで、マウントクック登頂証明書が送られてきた。ガイド登山を希望される場合は、高千穂ガイドに連絡すれば手配ができる。

 イワンさんは、昨年も英語がほとんど話せない日本人をガイドし、気温も低く積雪も多く状況が厳しい中、登頂できたとのことである。ニュージーランド滞在中すべての色々な面でお世話になり感謝している。

 お疲れ様でした。